68, 雨
シャロンウィンは外の空気を吸いたくなって、窓から中庭に出た。
湿った大気の中を、シャロンウィンはどこへ行くともなしに歩いた。
次第に雨粒が二、三粒、顔にあたるようになり、それがあっという間に本降りになった。
「シャロン、そんな格好で歩いていたら風邪を引くよ。城に戻ったらどうだい?」
途中、外に出ていた馬たちを小屋に入れているジャールに会った。
だが、シャロンウィンは話したい気分ではなかった。
第一、自分に恋をしていると知ってしまった少年とどうやって今までのように話せばよいのだろう?
「ほっといて」
シャロンウィンは素っ気なくジャールの前を通り過ぎようとしたが、取り乱した様子のシャロンウィンを放っておけるジャールではなかった。
「ちょっと待てよ」
シャロンウィンはジャールの腕を振り払い、走った。
「来ないで」
走っているうちに、雨足はますます強くなり、大量の雨がほとんど滝のように降りかかってきた。
足が速かったからジャールに追いつかれることはないと思っていたのに、ジャールはいつの間にか、シャロンウィンのすぐ後ろまで追いついていた。
「来ないでって言ったじゃない!」
もう、叫ばなければ相手の声が聞こえないほどの大雨になっていた。
「放っておけるわけないだろう?」
ジャールは再び逃げ出そうとするシャロンウィンの腕を掴んだ。
「やめてよ! どうして私に構うの? あなたが裏切り者なの?」
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