58, 馬小屋で
お風呂に入り、心ゆくまで早めの夕食を食べ、朝までぐっすり眠ったシャロンウィンは、馬小屋にチェルニーの様子を見に行くことにした。
馬小屋にはジャールがいた。
「シャロン! 噂は聞いていたけど、本当に無事に帰って来たんだね」
ジャールは運んでいた道具を放り出してシャロンウィンのもとに駆け寄ってきた。
「ええ。約束したでしょ? 無事に戻って来るって」
「覚えてたんだね」
「当り前じゃない。この約束のおかげで私は帰ってくることができたのよ。ところで、チェルニーの様子はどう? 馬小屋で過ごすのは初めてだから、怖がってるかもしれないわ」
シャロンウィンの心配をよそに、ジャールは微笑んだ。
「怖がってる? まさか! むしろ、他の馬たちと僕は初めてユニコーンを見たもんだからすっかり恐縮してるよ」
チェルニーは馬小屋の中でも一番良い場所を与えられていた。
「おはよう、チェルニー」
チェルニーは「おはよう」と言うように鼻を鳴らした。
「すっかりくつろいでいるみたいね」
チェルニーがドルウェット城の馬小屋を満喫している様子なので、シャロンウィンは思わずくすくすと笑った。
だが、すぐにその笑いは止まった。というのも、シャロンウィンの敏い耳が何かの音を捉えたのだ。
「馬小屋の外に誰かいるわ」
「まさかギルベッカじゃないよね。もう逃げるのは御免だよ」
ジャールはうんざりして言った。
しかし、シャロンウィンは馬小屋の入口に現れた人物を見て安堵の表情を浮かべた。
「大丈夫。ペートルヒェンだわ」
ところが、ペートルヒェンの様子はちっとも「大丈夫」ではなかった。
ペートルヒェンは珍しく走ってきたのか息を切らし、いつもは温和な彼の顔には厳しい皺が寄っていた。
何か良くないことが起こって、彼がシャロンウィンに報告しに来たことは明白だったので、シャロンウィンも無駄な質問はしなかった。
「今すぐ行くわ」
シャロンウィンは短く言うと、ペートルヒェンの後から足早に歩き始めた。
ジャールは自分も行くべきかどうか迷っていたようだったが、ペートルヒェンに
「君も来て構わないよ」
と言われたので、黙ってついてきた。
「衝撃的な事件が起こりました。お嬢様は動揺なさるかもしれません」
ペートルヒェンは歩きながら言った。
ペートルヒェンの声から、彼もその「事件」にかなり動揺していることが分かった。
そして、アルトリア王に会って何が起こったのかを聞かされたとき、確かにシャロンウィンはひどく動揺した。
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