22, 監視の目

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 コールボール城の北の塔のてっぺんに、銀の水盆があった。

 無数の模様が刻まれた石の台の上に載っており、そこは今、水で満たされた。

 水面に映る美女はワインのように赤い唇をすぼめて、水をふうっと吹いた。


 水面に広がる波紋が消えたとき、そこに映っていたのはもはやメルダインではなかった。

 メルダインは興味深げに水面に映る映像を眺めた。



 取り乱した様子で、ドルウェット城の階段を一人の少女が駆けている。

 純白のドレス、地面に届くほどの長い金髪、生き生きと輝く緑色の目。



――シャロンウィンだ


 なぜこの小娘がまだ生きている?


――さてはあいつめ、しくじりやがったな。暗殺者として名を挙げたくせに、小娘一人もまともに殺せないとは!


 メルダインの顔が怒りのあまり、どす黒くなった。

 メルダインは乱雑に水面を指で叩いた。


 水面が揺れ、別の映像に切り替わった。



「暗殺者は、なぜシャロンウィンを殺したかったんだ? それに、どうしてシャロンウィンのことを知っている? どうして待ち伏せできたんだ?」


「私が思いますに、奴は誰かに指示されてお嬢様の暗殺を試みたのでしょう。恐らく、お嬢様がお亡くなりになることで得をする誰かに」


「……メルダインか。これからしばらく、シャロンウィンをドルウェット城の外に出すことはできない。外は危険すぎる。何か、あの子の退屈を凌げるものが必要だな」


「私に良い考えがございます」



「なるほどねぇ。ドルウェット城の中にいれば安心だと思っているわけだ」


 メルダインは一人、せせら笑った。


 メルダインがいる限り、シャロンウィンにとって安全な場所などどこにもない。


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