15, 使命

「おはよう、シャロンウィン。早速だが、今日から君にやってもらいたいことがある」


 次の日の朝、アルトリア王は書斎に招いたシャロンウィンに言った。


「メルダインを倒す時期が来るまで、奴に滅ぼされた村々の復興を手伝ってはくれないだろうか?」


「村の復興を手伝う?」


「そう。本来ならば私がすべきことなのだが、私に与えられた時間は限られている。そこで君が、元は豊かで自然の恵みに溢れていた場所を蘇らせて欲しいのだ」


 シャロンウィンをメルダインと戦わせるのは心配だが、これなら大丈夫だろう。


「喜んで!」


 シャロンウィンはすぐに答えてくれた。


「友達と一緒に行ってもいい?」


 シャロンウィンは期待を込めた顔を向けたが、アルトリア王は顔をしかめた。

 これは楽しいお出かけではなく、大切な任務なのだ。

 だが、アルトリア王の顔を見てガッカリするシャロンウィンを見ていると、つい甘やかしたくなる。


「仕方がない。ただし、ペートルヒェンと私が指名した護衛も一緒に連れて行く……」


「ありがとう!」


 シャロンウィンはアルトリア王にギュッと抱きついてきた。

 シャロンウィンがあまりに愛らしくて、いつもは固く閉じられているアルトリア王の心はほろりと和んだ。


「分かった、分かった。さあ、早く支度をしてきなさい」


 完全に「楽しいお出かけ」気分で走っていくシャロンウィンの背中を見つめながら、アルトリア王は一人笑みを浮かべた。


 誰かに抱きつかれたのは何年ぶりだろう。

 誰も、わざわざ国王に抱きつこうだなんて考えない。

 シャロンウィンはまるで、あの子のようだ。


 そこで、アルトリア王は慌ててその考えを振り払った。


 誰もあの子の代わりにはなれない。


 例え、あのシャロンウィンであっても……

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