14, 真夜中の追跡

 数分後、コールボール城の裏口から、マントに身を包んだ二人組が出ていった。

 二人組はしばらくの間、誰にも気づかれずに城がある丘を下っていたが、もうすぐで丘の麓に出るというとき、城壁の上の見張り兵が彼らの動きに気づいた。


「不審人物確認!」


 見張り兵の声が静かな夜に響いた。

 マントの二人組は一瞬顔を見合わせると、同時に走り出した。


「奴らの後を追え!」


 兵士たちは小規模の騎馬隊を出動させ、二人組を追い始めた。


「止まれ!」


 騎馬隊はもはや二人のすぐ後ろに迫っていた。


 もう彼らは逃げることなど出来まい。


 先頭を走る騎馬隊の隊長は思った。

 二人の行く先は崖っぷちだった。


「止まるのだ!」


 隊長は繰り返した。

 ところが、二人組は止まらない。

 なおも騎馬隊たちは二人を追い詰めた。


 さあ、これでもう奴らはおしまいだ。


「大人しくしろ!」


 隊長は槍を彼らに向かって突き出した。


 ところが、槍の先に二人組はいなかった。

 二人組は突如として姿を消した。

 そして数秒の後、はるか下方でパシャーンという水の音がした。


「自殺……でしょうか?」


 隊長の隣の若い騎手が言った。


「恐らく」


 隊長は呟いた。

 この高い崖から落ちて生き残ることができるとは思えない。

 仮に生きていたとしても、凍り付きそうな冷たい水の中を、重い荷物を持って岸まで泳ぎつくことはできないだろう。

 隊長はこの時点で、あの二人組が泥棒だと決めつけていた。

 真夜中に城からコソコソ出ていく理由など、それくらいしか考えられないからだ。


「城に戻ろう」


 隊長は馬の向きを変えた。


 マントの二人組の正体も知らずに……。


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