12, メルダイン
――バンッ!
突然、ブランデンは見えない壁に手首を縛り付けられたようになった。
そこから出ようともがいたが、ブランデンの手首を縛り付ける力はあまりにも強すぎた。
「離せっ! 私はお前に決闘を挑む!」
メルダインは片方の眉を上げて面白そうにブランデンを見た。
「やめて、ブランデン!」
ルヴェーヌ王妃は叫んだ。
メルダインを相手に、誰も勝ち得ないことを知っていたのだ。
その上、ブランデンはまだ17歳の誕生日を迎えたばかりという若さだった。
「決闘か。面白い。だけどね、坊や、もっと考えてから物を言った方がいいんじゃな
いかい?」
メルダインは、ブランデンをもてあそぶように彼の顎をつまんだ。
メルダインの長い爪がブランデンの顎に食い込んだ。
途端に、ただ爪が食い込んだだけとは思えない激痛が走った。
「ううっ……」
ブランデンは思わずうめき声を漏らした。
「息子に触らないで!」
ルヴェーヌ王妃は立ち上がり、メルダインとブランデンの間に立ちはだかった。
「わらわの邪魔をする者には容赦しないと言ったのを忘れたのかい?」
メルダインがぞっとするような笑みを浮かべた。
その瞬間、ルヴェーヌ王妃はみぞおちを殴られたように体を二つに折り、悶え苦しんだ。
「母上に手を出すな! お前の相手は私だ!」
ブランデンは縛めを解こうと暴れながら叫んだ。
「そうだったね。だが、あんたのお優しい母上がいる限り、1対1で戦うことは出来なさそうだ。
それならば、母上を始末してから、あんたに取りかかる必要があるんじゃないかい?」
メルダインはもう一度、魔法でルヴェーヌ王妃を殴った。
王妃は悲鳴を上げ、床にうずくまった。
「……ゴルバス……」
ルヴェーヌ王妃は助けを求めてゴルバス国王の方を向いたが、ゴルバス国王は妻や息子が苦しんでいても無関心だった。
ただ、虫けらでも見るような目つきで王妃を一瞥すると、すぐにメルダインのことをうっとりと見つめ始めた。
「やめろ!」
ブランデンは叫んだ。
「やめて欲しいかい、坊や?」
「ああ。母上を傷つけないでくれ。頼む」
「どうしようか?」
メルダインはわざらしく首に手を当てて考え込んだ。
それから、ブランデンが十分にじらされているのを確認して言った。
「やめて欲しいなら、もう二度と、わらわに決闘を挑もうだなんて思わないことだ
ね」
メルダインはゴルバス国王の手を取ると、何事もなかったかのように居間を出ていった。
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