7, 蛇の印
そのとき、シャロンウィンの野性的な本能が、目の端に映る何かを捉えた。
シャロンウィンは足を止めて、その「何か」を見つめた。
それは、石の壁にできた、小さなひっかき傷のようなものだった。
しかし、彼女にはそれが、ただならぬ魔力を放ち、微かにうごめいていたように思えた。
シャロンウィンは指でその傷をなぞった。
――蛇だ!
シャロンウィンは気づいた。
そのひっかき傷は、よく見ると体をくねらせた蛇のような形をしていた。
シャロンウィンがそこから手を離すと、ちょうど蛇に嚙まれたときのように、指に鋭い痛みが走った。
シャロンウィンはそれからすぐに歩き出したが、石壁に刻まれた不吉な蛇の印は、彼女の脳裏に焼き付いてなかなか離れなかった。
入り組んだ数々の廊下と階段を通り、シャロンウィンはようやく部屋に着いた。
そこは、ドルウェット城の北西にある塔の二階で、南向きの窓から城の中庭が見わたせた。
シャロンウィンを部屋まで送り、ビスケットをいくつか持って来ると、侍女たちは行ってしまい、シャロンウィンは暇になった。
アルトリア王は、シャロンウィンが長旅で疲れていると思ったようだが、毎日広いフェルカの森を駆け回ってきたシャロンウィンにとってはむしろ、まだ動き足りないくらいだった。
シャロンウィンは少しの間、ベッドの上で跳ねたり、戸棚の中身を引っ張り出したりして遊んでいたが、だんだん外に出たくなってきた。
シャロンウィンは開け放たれた窓からひらりと外に出ると、外壁の出っ張りや凹みを上手く利用して中庭に降りた。
シャロンウィンは通りすがりの人々に声をかけてみたが、そのうちの大半はお辞儀をするだけで口を利いてはくれなかった。
そこで、シャロンウィンは近くにいた小鳥と追いかけっこをすることにした。
日が徐々に傾き始め、西の空が赤く染まる頃、追いかけっこで疲れたシャロンウィンは、白い花を咲かせたリンゴの木に登った。
木が枝分かれしているところに腰かけ、甘い香りを胸いっぱいに吸い込むと、少しだけ寂しさが和らいだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます