第26話

見る世界が変わる。それは生活にも影響を及ぼす。


「シオン。どうしたの?」


僕が見ている視線の間にルナ姉様が割り込んできた。


「いや。なんでもないよ。」


僕は、この間からおかしなものをみる。それは、時には人の形をしていたり、はたまた動物になっていたり、食べ物だったり、雲だったりといろいろ形を変えそこに存在している。


「そうだ。あれから、その魔具はの調子はどう?」


「頗る調子がいいよ。」


自分で作ったものだからなのか分からないが、効率がよく抵抗が0に近い。だからなのか魔法を使うのが難しい。前とは違い魔力を全力で流す必要がなく少量でいいのだが、その癖が治らない。


今回の件で魔女の一族は激震が走った。なぜなら喉から欲しかった創造の魔法が現実として成功した。これによって、魔女の一族は魔法だけではない戦力を手に入れることが出来る。


僕は普段通りの生活を行っていた。それどころか、治安維持を担っている貴族の部隊が人間救済解放軍の取り締まりを行っていた。


「どうやら、貴族は私たちの味方のようですね。」


イリーナ姉様は助かると言っていた。

度々、姉さんに向けての悪意がある人がいてその度に姉さんが対応していたので大変だった。

と言っても時間を割く以外にこれといった実害が無かった。


「今日はこの辺で。」


今日の授業は終わったようだ。これから、練習場で魔具の練習だ。未だに使いこなせないでいる。なので、こうして放課後に練習しているのだが問題がある。


「またか。」


「すみません。」


エリカ様に呆れられている。


この学園には、複数ある練習場なのだがある程度は魔法による補強が入っているため普通の魔法練習で練習場が破損することはあまりないのとたとえ破損していてもすぐに直せるレベルに抑えられる。


しかし、こうして思うと今回地上にある練習場でよかった。前回は地下であったため上の建物も更地にしてしまった。


「それにしても、本当にここまでよくやるわ。体に異常はなさそうね。」


「はい。ですが、このままではやはりこの魔具で魔法を使うこと自体が。」


このままだと、普通の魔法を使うことが出来なくなる。


「ならば、対策としては一つね。」


簡単な対策として一つある。自分自身の魔力に枷を付けることだ。

枷を付けることで自分が使用できる魔力を制限される。それにより本能的に一回で使う魔力を少なく出来るという方法で実のところ体に対する負担が大きいのであまりお勧め出来ない。


「ですね。ということは。」


こういうことに関してはエリス様にかかれば問題ない。本人曰く結界の延長らしい。


彼女の母親であるエリサ様に会いに行った。


「また、失敗したようね。」


冷静に分析して言われたその言葉が自分の胸に刺さる。


「やはり、効率が良すぎて操れないのです。」


「そうか。それで、私のところに。分かった。多分家にエリスは居るから、行こうか。」


エリカ様はやることが増えたらしい、(誰のせいなのかは謎)なので学園に残った。


「ただいま。」


その声と同じく奥から


「おかえり〜。ママ今日早かったね。」


ドアを開けるとソファに寝転がる美女がいた。


「お邪魔します。」


その言葉でその美女は起き上がり鳩が豆鉄砲を受けたみたいに固まり、急いでどこかに走って行った。


「気が緩んでいるから、こうなるのよ。」


僕は、それに対しては乾笑いしかできなかった。

エリサ様は、僕をソファーへ座るように促した。


先程までエリス様が寝転がっていたところだ。

そこに座るように言われた。そして、感覚が吸血鬼の能力で普通の人より鋭敏になっている。つまりは、そういうことだ。


「やはり、吸血鬼としての能力は鋭いね。匂いでそこまで分かってしまうなんて。」


この部屋には確かに彼女達2人の匂いで充満しているが、部屋の一角から異なる匂いがする。


「出ておいで。大丈夫、この方は味方だよ。」


僕は、その現れた姿に驚いた。

なぜなら、意味が分からなかったからだ。


「初めまして。」


「あぁ。」


僕は、生返事しかできなかった。


「彼女は、私が作った魔装さ。なぜか、魂が生まれたんだ。そんでもって今エリナに狙われている。」


「そういうことですか?」


「簡単なことだよ。あの、人間救済解放軍なる奴らがエリナを唆したんだ。そんで持ってエリナが実質トップに躍り出たんだ。」


何というか、このテロリズムに近いことが実は家族喧嘩とは恐れいったよ。


「それにしてもびっくりした。彼女を匂いでしか判断できなかったよ。」


僕の目にはそこには観葉植物や家具が並ぶだけの普通の景色だった。そこから発せられる匂いだけ異常なだけだった。


「エリスの結界もかなり腕前が上がったということだね。」


この効果はエリス様の魔法のようだ。


「はい。お待たせ。シオン。」


エリス様が後ろから抱きついてきた。


「待ってないですよ。座ったらどうですか?」


「冷たいな。」


少し膨れ顔で隣に座った。

僕は、心拍数が上がった心臓を抑えるためにエリサ様に淹れてもらった紅茶に口をつけた。


「まーちゃん。おいで〜。」


トテトテと音が鳴りそうな足音と共にエリス様の膝の上に乗った。

何というか小動物的な感じで可愛い。


「こうしてみると、やはり聖母とか言われるだけあるわね。」


確かにその見た目もさることながら慈悲深そうなその表情がさらにその表現を加速させる。


「では、本題に入ろうかしら。」


少しトーンを低くしたエリサ様の声が空気を引き締めた。


「エリス。あなたにシオンに魔力への枷を付けて欲しいの。」


「そういうことね。でもすぐにはできないわ。」


「それは、どういうことですか?」


「簡単なことよ。」


どうやらエリス様が行う枷というのは魔力の繋がりや流れというのを断つということらしい。そこで、掴まないといけないのはその人の魔力を感じなければならないしかし、シオンの魔力は感じるのが不可能に近い。なぜならシオンの魔力は自然との結びつきが強いからだ。それこそ魔力がないと言われても同じレベルだ。


「だからね。シオン。」


これは、口実を作られたのではと思うのは僕だけだろうか。

一つだけ分かるとしたら僕はこの後ベットから起き上がることは不可能だろう。


それが、彼女が愛の天使とまで言われる所以なのだろうか。










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