第25話

人間救済解放軍なる組織は元々は魔法師を軍隊へ編入するために組織されたものだ。しかし、時が経ち魔法が現代科学を組み込んだがために魔法が一般的な兵器として役割を持ち優劣がはっきりするようになった。

そこで内部で左遷先となったのがその組織だということだ。


ーーーーーーーーーーー


その日は普通に登校した。

HRでは巻き込まれないように注意喚起が行われた。

当事者の1人なので何とも言えない。


「シオンさん。こんにちは。」


お昼過ぎにクラスメイトに話しかけられた。普段は、姉が怖いのか自分が怖いのかあまり話しかけてこない。なのでいまだに友達はいない。ぼっちです。


そしてこれ今初めて話かけられている。


「何かなウル?」


彼女は僕が最初に食べた女性だ。詰まるところ貴族子女だ。


「今回のことでお話があるのですが。少し時間を頂けませんか?」


そのことなら話す必要が出てくる。

貴族側も密偵を放って探っているだろうが対して情報は得られないだろう。


僕達はカフェテリアに移動して対面する形で座った。


「早速で悪いけど、あなた方魔女の一族は何をしようとしているの?」


これはごもっともな意見だ。これを追求するには一つの大きな理由がある。

“魔女からこの国を取り戻す”

これが今回の人間救済解放軍の大義名分だからだ。


「さぁ?僕には分からない。それが僕から言えることだよ。」


「やはり君に聞いたのが間違いだったわ。」


「そうでもないさ。僕から言えることは一つだよ。」


“人の腹の中は分からない”


「そう。それでは、何も得られないということね。」


頭を抱えていた。


「なら最大のヒントを与えるよ。今回の標的に僕は含まれていない。それが今回のヒントだと思うよ。」


「それはどういう?」


「実は、僕も今回のことは本当に分からないんだ。」


「はぁ?」


「姉さん達に聞いても何もことえてくれないし、何なら血族が全員総出になっている。だが、僕だけが何もなく普通に過ごしてくれということなんだ。」


「それは。」


「そう。だから僕は何も知らないし、分からない。」


「そうね。探るとしたらあなたのお姉様方ということね。」


立ち上がりやるべきことができたと言わんばかりに去って行った。


ーーーーーー


「お父様。どうやら魔女は何かしら裏で手引きしているようです。」


「そうか。なら私たちはことが起こることを考え防衛に入ろうか。」


「何か掴んでいるのですね!」


それには何も答えなかった。


「では、何か分かったら、連絡するように。」


それだけで連絡を絶った。


ーーーーーーーーー


その日は何もなく終わり普段通りの生活を送ろうとしていたが、思い出したことがありある場所に向かった。


「失礼します。」


学園の一角にある教師の部屋だ。


「良くきたね。」


「エリサさん。魔具を作りにきました。」


エリサさんは、エリア母様の妹に当たり魔具を作ることに関して右に出るものはいない。

僕は、今考えている魔具の作り方を説明した。


「なるほど。やってみるとしか言えないね。」


隣には精錬所があるにも関わらず、僕たちは練習所に向かった。


「では、やってみます。」


僕は、存在の有無を決定することが出来る。これは、この目をもってして出来ることだ。

そして、この間その存在を見たことによる魔法の行使。これによって僕は新たな方法を生み出した。


自分の手のひらを意識する。そこに魔力を集めそこに固定するイメージだ。

自分が求めるその姿・形をイメージする。

その構造、性能を明確にイメージする。


その時は気付かなかった。自分が普段以上に魔力を消費していることを。

それに気づいたエリサ様が僕の魔力切れになるのではないかと心配してエリカ様を呼んだみたいだ。


「もう少し、明確に。」


僕はさらに奥深く沈んでいく感覚に陥った。

何でもできるという全能感と体も魔力も全てが自分の思い描くように出来るように感じた。


気づいたときには僕の手には一つの銃があった。


「あれ?エリカ様にエリア母様まで、どうしたのですか?」


僕の周りには家族が揃っていた。


「あれ?これは。」


自分の周辺には結界が張られていた。

しかし、いつもよりこの結界が弱い気がする。ハッキリと目に見える。


「ここかな?」


感覚を信じるままに魔力と魔力の間を沿うように触れた。

瞬く間に結界は割れ消滅した


「すっ!すごいわ!」


「待ちなさい!」


1人の女性が駆け寄ろうとしたところエリカ様に制止させられていた。


「シオン。今手に持っているものは?」


「これですか?」


手にある銃を見せた。


「僕が、創造したものです。」


「その、言いにくいのだけど。それ、魔力密度が高くて近づけないわ。」


魔力が高いところだと、魔法を発動した場合連鎖反応によって制御できなくなる可能背がある。特に、無意識に使ってしまうものは影響を受ける。


「それよりもあなた見えているの?」


僕は、訳が分からないと言わんばかりに首を傾げた。


「目を開けていないのよ。あなた。それで、喋っている方向を的確に当ててきて相手も分かっているのよ。」


確かに魔力を知覚するのは魔法師として当然だが感覚的には音を聞くのに近い。ある程度の方向と距離ぐらいしか分からない。

それを今シオンは的確に当てていた。


「目を開ける。」


僕は意識して開けた。


その世界はカラフルで全てが分かる気がする。そんな世界だった。


「シオン。あなた、今何を見ているの?」


エリア母様の言葉が空しく僕らの間を駆け抜けた。











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