第24話

魔法とは想像力の具現化と言ったのは、今や昔の魔法師の言葉だった。

しかしながら、少なからず今でもそれを信じるに値する魔法は存在する。


「シオン。ここよ。」


「おはようございます。エリカ様。」


僕は、いつもと違う場所に来ている。

ここは、魔法総合研究所。エリア母様が最近建てたところで魔法を対象とした研究を日々行なっている。


「こっちよ。」


中は白を基調とした研究所で綺麗に整っている。


「ここよ。」


僕は、そこで見たものはただ何かしらの授業を受けている数名の女子だった。


「これは?」


「彼女達は魔法が暴発してしまう子供達だ。」


そこに女性が入ってきた。


「ここの所長を任されているアルヘスタというものだ。よろしくシオン君。」


「こちらこそ。お初にお目にかかります。」


「そろそろ、エリカ様が見せたいものが始まると思うよ。」


僕は、ガラス越しに彼女達を上から見下ろした。


女子生徒達は各々魔法を行使し始めた。


「これは!」


彼女達は変身したり魔法で空を飛んだりしていた。


「そう。彼女達は私たちとは全くと言っていいほど私たちとは異なる魔法を使うのだ。」


僕は、さらに気づいた。


「まさか、無意識の領域で?」


「そう。彼女達は無意識の領域で魔法を行使している。さらにそこにイメージを上乗せして使っているんだ。」


僕たちが行使する現代魔法は既存の魔法に理解と解釈そして科学を混ぜたといっていい。

しかし、彼女達はそこから逸脱して自由に魔法を使っている。


「私は、彼女達に聞いたのだよ。どう魔法を使っているんだとね。」


彼女は、タバコに火を付けた。


「どう答えたのですか?」


「奇跡だそうだよ。」


僕は、何も言えなかった。


「彼女達には、魔法は奇跡や空想といったものと感じているらしい。一昔前はその認識で使う魔法師はいたが今では違う。だが、彼女達は現代魔法を使えない。だが、あういう自由に使う分には何の問題が無い。」


僕は、彼女達の自由さに意識を奪われた。


「しかし、ながら一つだけ問題がある。」


アルヘスタはタバコを手に取り指し示した。


「彼女達の具現化が弱い。だから現実での魔法の持続能力が足りない。しかし、彼女達の能力ではイメージを強くするしかそれを解決に至るすでが無い。」


僕は、そこでここにきた意味が繋がった。


「エリカ様。まさか。」


「そうね。あなたの目で見て欲しいのよ。」


僕の目で通したものは現実に存在しないものも存在するということに置き換えられる。

それを通して彼女達の魔法が現実に存在するというふうにできるということだ。


「分かりました。やるだけやってみます。」


僕は、快く返答した。


結果からしたら成功だ。

彼女達の魔法は現実とリンクするようになったので発動がスムーズになった。

それだけではなく魔法の可能性に僕は気付かされた気がした。


「ありがとう。これで彼女達の可能性が増えたよ。」


帰り際にアルヘスタ所長に俺を言われた。


「エリカ様。ありがとうございます。」


「何か収穫があったかな?」


「えぇ。魔法は自由だということに気付かされました。」


「そうだね。君が私の教えを受けたのはいいのだが、殺伐としたことばかり教えていなかった。今の教育でもそうだ。だから、私はこれを教えたかった。いや、違うか。これを教えなければならないのか?私でも、良く分からないのだ。」


彼女の中でもまだ明確ではないようだ。

しかし、全てを明らかにするのは今すぐ出なくてもいいのかもしれない。


「私は、君に何かヒントになることを教えたかったのかもしれない。」


「なぜ?」


「最近、君は本能に振り回されている。そこで、理性的になれるものがあれば本能と理性のバランスが良くなる。私が思うに人類とは本能と理性のバランスによって社会という秩序の中で生きていると考えている。私は、君に理性的な何かを与えたかったと思う。」


ここ最近のことを考えると私は本能に振り回された生活を送っていた。そこで、今回のことだ。私は、ただの獣から理性と秩序がある獣へと戻らなければならないと感じる。


「ありがとうございます。どうやら自分を見失っていたようです。」


学園に戻り次第僕は練習場の使用許可を取りに行った。


魔法は、自由だ。だから、


僕は、その日一つの真理に触れたのかもしれない。


魔法とは何か?自分とは____?


魔法を使うことで起こる肉体的変化とは?


全てイメージによって引き起こされる現象なのでは?


僕は、何かの答えに辿り着いたのかもしれない。


1ヶ月後、人間救済解放軍なる組織が結成と魔女に対する宣誓布告をした。


その放送を見ていた家族全員の口角が上がったことに僕は恐怖を抱いた。














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