第22話

僕の辞書には積極的という言葉は無いと思っていた。

今日という日はそれが間違いだと分かった。


「ねえ。シオン。」


朝食の席で、ルナ姉様が話しかけてきた。


「どうして。そんなに顔が赤いのかしら?」


あからさまにおちょくってくる。


「いいでしょ。そんなこと。」


僕は、さっさとご飯を済ませ学園に行く準備をした。


「今日から女子に気をつけなさい。」


ルナ姉様の言葉に僕はこの後慄くのであった。


ーーーーーー


今日はとにかくおかしい。

見えるものがいつもと違う。簡単に言うと見えるものが一面ピンク色に見える。

事あるごとに女子に目が行く。


「シオン君。どうしたの?」


教室にはなぜかイリーナ姉様がいた。

やはり彼女もいつもより一層艶やかに見える。

しかし、それ以上にいつもと違うところが一つある。


「その背中の羽は何?」


「これね。」


事細やかに説明してくれた。

ことの発端は、例の戦争の時だ。

その時、魔法を使いすぎてとうとう魔装と同化が始まったらしい。

これは類を見ない現象だ。特に体に問題がないらしくいつでも飛べるらしくむしろ便利とのこと。

最初羽は小さかったらしいが段々大きくなり今の大きさに落ち着いたらしい。

それに伴って服が破れるからそこだけが不便と言っていた。


「触っていい?」


「うーん。いいわよ」


渋々といった感じだが、許可してくれた。

触ってみるととても柔らかく肌触りがいい。さらに一本一本がしっかりとしていて艶がかかっており丁寧に手入れされているのがわかる。


一つだけ気になることが、触るたびに


「キャ!」


と声を上げることだ。


「姉様?」


口を手で押さえていて、若干顔をあかれめていて呼吸が速くなっている。


それにしても手触りがいい。これに包まれたいくらいだ。

僕は羽に顔を近づけそれを頬で感じた。


それにもまた姉様は奇声を上げた。


「シオン君。わざとやっているのかしら。」


笑顔だがその迫力は鬼をも寄せ付けない程だった。

ただもう一つ気がかりなのは明らかに羽に異様な量の魔力が帯びていることだ。


「姉さん。これは?」


反射で言葉が出ていた。


「どうしたの?」


分かっていないみたいだ。ならそれでいい。特に異常らしい異常は無いからだ。


「いや。なんでもない。」


担任の先生が来ると姉様は名残惜しそうに教室を出て行った。


やはりと言うべきか周りの女子がいつも以上に魅力的に映る。


「あの。シオン様。」


隣の席の子が話しかけてきかたが名前が分からない。

どこかの貴族だった気がするが。


「どうした?」


「時間を頂いてもよろしいですか?」


「いいですけど、どうして?」


今はHRの時間だ。すぐに授業が始まる。


「私の血が欲しくはなくて?」


首筋を見せてきた。僕は、いきなりのことで奇しくも鼻血を出してしまった。

吸血鬼としての本能が彼女の匂いに反応している。


「その反応はとても嬉しいですわ。」


付いてきてというジェスチャーに僕は無言で従った。


「ここは、貴族が自由に使える部屋ですわ。貴族同士の話し合いやプライベートなことに使う部屋ですわ。」


そう説明すると手続きを終え、部屋へと入って行った。


「どうしたのですか?入ってきてくださいな。」


扉の先はまた廊下が続きたくさんの扉があり幾つか部屋があるみたいだ。


「ここですわ。」


一番豪華な扉を開けた。

その重厚な扉を開け入っていった。


中も豪華な作りになっていて、ここが学校であることを忘れさせる。


「そちらにお座りになってください。」


彼女は、ソファに座るように促し、テキパキと飲み物を用意し始めた。

壁にサーバーが用意されていて簡易的にできるようにしてある。

彼女は、飲み物をサーブすると少し待つようにお願いして別の扉をへと消えて行った。


彼女が用意した温かいコーヒーを飲みながら待つこと数分で出てきた。


「お待たせしましたわ。」


僕は、手に持っていたコーヒーを落とすところだった。


「一つだけ聞いてもいいかな?」


「何ですの?」


意を決して静かに質問した。


「なぜ、白のドレスなんだ?」













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