第21話

かれこれさらに半年が過ぎ、寒い冬が過ぎ春となった。


僕は、久しぶりの登校となった。


「ルナート姉様。行って参ります。」


「うん。いい子にするのよ。なんかあったら職員室まで来なさい。」


今まで通り登校していつも通り授業を受け、いつも通りに下校する。

変わったことと言えば、枷と周りからの視線だ。


「お待たせして申し訳ありません。」


放課後になり僕は、いつも通りに生徒会室に顔を見せた。


「大丈夫よ。座りなさい。」


ルナート姉様が優しく向かい入れた。


「久しぶりね。シオン。」


「はい。お久しぶりです。イリーナ義姉様ねえさま。」


ここには、イーリス義姉様もいる。


「さて、貴方達を呼んだのは。シオンの許嫁を決めたいと思ってね。」


開いた口が閉じないとはこのことである。


「正直今更な気がしているんですが。」


最初に口を開いたのは意外にもイーリス義姉様だ。


「それはどういうことかな?もしかしてそういう娘がもう学園にいるのかな?」


ルナート姉様の笑顔と威圧感がこの部屋を満たした。


「いえ。私は、その。」


「言ってみて。イーリス。」


イーリス義姉様は完全に腰を抜かしている。


「あ!あの!すみません。」


「何かな?イリーナ?」


「はい!その私たちはてっきり結婚相手はルナート様かと。」


「あら。私。」


明らかに柔らかな雰囲気に様がわりした。

それより顔を赤らめる姉様は少し可愛く思えた。

しかし、溜め息を吐き話し始めた。


「それね、この間エリア母様から言われてね。『子供を作るのは自由だけど外部の血が欲しいのよね。』って言われて、その通りで別に子供作れるしいいよねってなってね。だから、ここに通う優秀な娘がいいなって思って。」


優秀な娘なら誰でもいいんだけど。と付け加えた。


「それで、誰かいないかな?」


それが一番問題だ。なぜなら。


「今思うと、」


「私たちより、」


そう。なのだ。彼女達より優秀な人材はいないに近い。


「それで、妥協してこの人物っていないかな?」


「流石に、思い当たらないわ。」


「寧ろ、シオンの好みの女性にすべきでは?」


「「それだ!わ!」」


いい案が浮かんで何よりだ。ん?ちょい待ちそれって僕の趣味趣向が反映されるのでは?つまり公開処刑。面倒くさくなってきてないか?


ということで、全校放送で僕の許嫁を決めるということが放送された。そして僕を取り合えとルナート姉様からの鶴の一声により学園の女子が少しざわついたとかなんとか。



ーーーーーーーーーー

「私にもチャンスあるかしら。」


「はい。お嬢様なら。」


「しかし、あの姉妹の方々からしたらどうも足りない気がするのですが。」


その女性は自分の体を見て落ち込んでいた。


「流石に、あの方々からしたらそうですが、一般的に見たらお嬢様は素晴らしいプロポーションをしていますよ。」


実際に、かの姉妹が現れる前までは学園で1番整っている容姿と抜群のプロポーションで学園を席巻していた。なので、一般的に彼女は美しいと言える。しかし、あの姉妹を見たら誰でも自信を失うのは明白だ。


そして、そこに現れた、容姿が整っている姉妹の弟。そして、見る人が見れば分かる圧倒的な魔法師としての力量。昨年までならそこそこだが、この間の戦争と家族間の問題でさらにステージを上げたようだ。


「私のことも忘れているようですし。」


「お嬢様。それは、しょうがなく思います。小さい頃とは容姿も性格も変わっておりますし。なんせ、あの方々は貴族では無いので舞踏会や夜会には出席なさらないので気づかないのはしょうがないと思います。」


「そうよね。」


彼女は、納得したように頷いた。


「にしても、お父様ったらこのようなメッセージを送ってきてどうしたのかしら?」


「私目にも分かりそうには。」


そうこうしているうちに家に着いた。


「おかえりなさいませ。お嬢様。御当主様がお呼びです。帰ったらそのまま来るようにとのことです。」


かなり、お急ぎのようだ。


「分かったわ。行きましょう。お父様は、どちらへ?」


「はい。書斎にいるかと。」


「ありがとう。」


私は、足早に書斎に向かった。


「お父様。」


私は、扉をノックした。


「入りたまへ。」


「はい。失礼します。ただいま帰りました。」


「うむ。お帰り。そちらに座りたまえ。」


お父様は、ソファーに座るように促した。

そして、椅子から立ち上がり対面するようにソファーに座った。


「先ほど、かの者達から貴族に、並びに、富豪と呼ばれる者達へと連絡が回った。」


私は、静かにお父様の言葉を聞いた。


「魔女は、外の優秀な血を欲しているとのことでな、そこで私は、お前を差し出すことにした。すまないが、これも。」


「えぇ。心得ております。それが貴族の役目ですもの。」


「すまない。私に力が無いせいで。」


「いいえ。あの者達が私たちの力が及ばない外の方々ということですわ。」


彼女は、大きな勘違いをしている。既にこの国は飲み込まれているということを。

ただ、自分が置かれている状況を正しく理解していないというこだ。逆に、自分の置かれている立場を理解している人間は数多くは存在しない。


「あぁ。すまない。ありがとう。それと、シオンという男に気に入ってもらわないといけないようだ。頑張れよ。」


「分かりましたわ。それでは、お父様。私は、着替えてきますわね。」


「あ、あぁ。ありがとう。忙しい時に、いきなり呼び出してしまい。」


「大丈夫ですわ。それでは。」


そのまま、部屋を出て行った。


「お嬢様。」


「どうかしたのかしら。」


「いいえ。そのお顔は予想通りって顔ですね。」


「えぇ。明日から女の戦いですわね。」


彼女は、人一倍張り切っていた。


ーーーーーーーー

「ねぇ。シオン。」


「何。ルナート姉様。」


「その呼び方止め無い?やっぱり、ルナって呼んでくれないかしら。」


「んー。いいよ。ルナ姉様。」


「あー。もう可愛いんだから。」


僕は、ルナ姉様の胸に埋もれ頭を撫で回された。さっき、お風呂に入ったおかげなのか、とてもいい匂いがした。


「ねぇ、シオン。」


僕は、幸せからどうにか逃れて姉様の目を見た。これは。


「今日は、たっぷり可愛がってあげるわ。」


この時のことを後に彼は最高の一夜と語っていた。










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