第17話

大きいな爆発とともにこの戦場にいる人々は思った。


“この化け物はなんだ?勝てるわけがない”と


この爆発で都市一つが焦土と化した。


「シオン。大丈夫?」


「はい。なんとか。それよりアゲハを!僕を庇って。」


「分かっているわ。イリーナ。アゲハを連れて下がって!」


「分かりましたわ。」


イリーナは、アゲハを連れて治療できる場所まで下がった。


「それで、シオンくん。何があったの?」


僕は、中であったことを話した。


「僕とアゲハさんで、都市内部にあった。役所に侵入したんです。」


入ったところまでは良かった。どうやら敵は屋上にトラップを仕掛けていたみたいだった。屋上着地と同時に人形が集まって来た。正直、ここに来るまでトラップが無かったことで気が緩んでいたところをうまく狙われた。


そこで、僕たちはやはりここに何かあることがわかったので、強引に突破するつもりだった。しかし、都市内部の人形が全て集まって来ているようだった。


相当数の数が僕たちのいるところまで集まって来たのだ。ただ一つ収穫があったとしたら。


「ルナ姉様。アレスは人形だった。」


そうなのだ。人形だった。僕は、この目で見た。アレスから伸びる魔力の繋がりの数々そして、意識が無くすでに亡骸でそれを誰かが動かしているであろうことも。


そして、そこから魔力の繋がりを通してこの都市内部にいる人形に命令が出た。


「僕は、その時分からなかったんだ。」


それは、自爆することだった。個々が爆発する分にはそこまで大きくはならない。しかし、集まって爆発するのは桁が変わってくる。


そして、それに気づかなかった。僕たちは、それに巻き込まれたという訳だった。


「今回は、運よく姉様たちが、近くまで来ていたから良かったものの、もしタイミングが違ったら終わっていたよ。」


「ルナ姉さん。シオンくん。来たよ。」


瓦礫の中から一つの影が現れた。


「あれが、アレスだね。」


「うん。見た目は変わっているけど中身はそうだね。」


「来るよ!」


イーリス姉様が構えた槍とアレスの腕が拮抗した。


「この人ヤバい!」


金属でできている槍と生身の肉体で打ち合っているのだ。

体に魔力を流して身体強化する人がいるがあそこまで固くなるのは見たことがない。


「さっきから精神魔法を使っているけど干渉できない!」


干渉できないということは魔法に抵抗しているのか、精神が強靭なのか、どちらにしても厄介な相手だ。


「イーリス!頭を狙って!」


「分かっているわ!」


人形は魔力の繋がりはその人形の頭から繋がっているのでそこを破壊した場合動かなくなる。


僕は、ここで異常に気づいた。


「ルナ姉様、何かおかしい。」


さっきから何か引っかかる。何かを見落としている。


「にしても、こいつを動かしているのはどこにいるんだ?」


確かにイーリス姉様のいうとおりで、操っている者はどこにいるのか探さないと。

僕は、何かに気づいているはずなのだが、肝心なことを見落としている。


しかし、この攻撃の前では考える余地が無い。


アレスの猛攻の前に僕は防ぐことしか出来ない。僕は、アレスの殴打によって吹き飛ばされた。

少しの意識の暗転のあと、僕は気づいた。


「アレスから魔力の繋がりが見えない!」


姉様方は息を飲んだ。


「シオンくん。それは本当?」


「はい。僕の目には彼から出ているはずの魔力の繋がりが見えません!」


「それじゃ。これはどうやって動かしているの?」


そう。彼は歴とした人形だ。先ほどから人形としか思えない動きをしている。

さらに彼からは命が見えない。


「さっきから君たちはしゃべりすぎだよ。」


僕たちは、意識をアレスに持って行かれた。


「あなた。口を開けるのですね。」


「もちろんだよ。お嬢さん。私は、生物という概念を超えた存在だよ。」


「なら、一つご教授願いますか?」


「僕に答えられることなら。」


「あなたは、何者ですか?」


「それは、さっき言ったじゃないか。生物を超越した存在だって。」


「えぇ。それは分かっています。しかし、それはなんですか?」


ルナ姉様は、ある一点を指し示した。


「そこだけ、生臭いです。」


どういうことだ?


「なぁ!」


アレスは、人間で言う心臓部分を手で隠した。


「私は、吸血鬼としての能力であなたから血液の匂いが分かります。不愉快ですが。あなたからとてもではありませんが、飲めるような匂いはしません。」


「何をいうと言えば、だからどうした!」


「えぇ。なのであなたは生物と同じ倒し方が出来るということです。」


姉様は、血でできた大鎌を構えた。

基本的にあまり近接戦は得意としてない姉様が近接戦をしようとしている。

正直得意じゃないというのは魔法よりという意味でその腕は超一流に近い。


姉様は、戦いながら敵を分析していた。さすが姉様である。


「ということは、限界はあるということね。」


「えぇ。イーリス姉様はとにかく彼を押さえ込んでください。僕が援護します!」


「任せるわ。」


ここから僕たちの反撃の開始だと思っていた。


「え?」


僕は、薄れゆく意識の中でこの状態を理解できなかった。


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