第15話

僕は、姉様たちを集めてあらかた姉様たちに可能性と推測を話した。


「感じていた違和感は、それだったのか。」


どうやらルナ姉様は一つの魔法に心当たりがあるようだ。


「それはどんな魔法なんだ。」


「マリオネット。これは西方の国で始まった魔法の総称なのだが、それに近いものだと思うわ。」


魔力の繋がりを対象とする物体と繋ぎそれを操る魔法なのだが。


「これだけの規模と練度は目を見張りますね。」


「さらに、これだけの死体を用意するのは」


そう、物理的に難しい。


「幻影魔法の類?」


「それもあるわ。でも、質量を持ってる。」


「それは、おかしいわ。」


一般的には、幻影魔法には質量を持たないいや正確に言うと質量がゼロに果てし無く近いので感じられない。なので、普通触ったり、光の加減具合でそれが幻影と見分けることができる。


「なら、姉様みたいな精神魔法で、広範囲に感覚を誤認させる魔法は?」


「ありえないと言いたいけど。発動を相手が認識する瞬間で発動させるように一体一体に仕掛けておくことにすれば労力を少なくしてできるわ。それなら、シオンの目で見えるはずなのだけど。」


そう、見えるはずだ。


「そうなると、やはり死体を用意しなければならないのでは?」


僕たちは、やはり悩んでいた。


そこへアゲハが現れ核心的なことを告げた。


「我が軍の死体を使っているのでは?」


灯台下暗しとはこのことだ。

確かにそれなら説明ができ、この膠着した局面に納得ができる。


「ルナ様。私たちが先行して潜入し情報を集めますね。」


「お願いするわ。」


すぐにアゲハの気配は消えた。


「そうなると。困ったことが1つあるわ。」


「そうですね。」


イリーナ姉様が同意していた。


「そうか!」


イーリス姉様が何かに気づいたようだ。


「相性が悪い。」


致命的に相性が悪い。


姉様たちは対生物に対して絶大な破壊力を持つがその分他の分野に対して絶望的に弱い。

その分、従姉妹はそれ以外の分野に精通している。


「なら、私の魔装が使えそうね。」


イリーナ姉様の魔装は、翼の形状をしている。それにより上空からの一方的な虐殺が可能だ。さらにイリーナ姉様はある程度コンスタントに魔法を使える。ただ、レベルとしてはたかが知れている程度だ。


「イーリス。あなた、体頑丈よね。」


「イリーナ。まさか。」


「そうよ。」


何をしようとしているのか分からないけど多分碌でもないことなのは確かだ。何せ、イリーナ姉様は、頭いいように見えて意外と脳筋な面があるから。


「私とシオンは後方だね。」


結局ルナ姉様が一番対人という面では最強なのだ。


「その前に、交渉よね。」


僕とルナ姉様はこの軍の前線指揮責任者に会いにきていた。


「まぁ。無理よね。」


現在の状況と打開案を提示し、そこで軍の後退をお願いした。


「包囲網を崩すことになるぞ!」


つまりは逃げられてしまうということだ。


「この手の場合はそれが出来ません。」


「どういうことだ?」


「この量を操るには相当の集中力が必要です。もし、少しでも切らすとたちまち魔力の繋がりが消え操ることが出来なくなります。」


確かにある程度制限を設ければ、処理を軽くできるが、それでも纏まった量を動かすとなれば相当精神を削られる。


「分かった。少しずつ後退する。それと逃亡の可能性も考え優先度が高いところに人を配置する。」


「えぇ。かまいませんわ。」


「よろしく頼む。」


僕は、敵の可能性を限りなくゼロにするために動いた。

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