第12話

ことを成し遂げるこれは立派なことだがそういう時に限って大事なこと見落とす。


「イーリス姉様。さすがにやりすぎです。」


「そうか?」


「はい。確かに僕の魔法があれば大丈夫ですが、これはやりすぎです。」


それで、やっていることはというと。


剣を分身させそれぞれに実態を持たせ一撃が何十にも増やすということだ。一応できるのだが、発動速度と強度が問題だ。なので隙が多く実戦では使い物にならない。

そこで、慣れるためにこうして練習場で何度も使って慣れようとしていた。


練習場は学院の地下にあり、生徒会に申請すれば使える施設で用途によって


目の前にある人型の的を使っていたのだが、加減ができずにこうして建物を破壊したり地面を掘ったりと直すのに時間がかかる。


そこで僕の出番なのだが、正直大変だ。イーリス姉様は単純に体力がありすぎる。つまり、治す方の体力が持たないのだ。


「この辺にしておきましょう。ハードワークは体に毒です。」


「そうね。シャワー浴びてくるから待っていて。」


やはり実態を作り出すのは無から有を作り出すのと同義と捉えられる。


ルナ姉様なら相手の精神に対して攻撃されたと思わせることができるため同じようなことができる。正直イーリス姉様は身体能力のおかげで実現できそうでいることに驚愕している。


「姉様。一層のこと剣を増やして持ってみるのはどうでしょうか?」


「それは、考えたんだけどね。うまく行かなくて。どうも槍を持っている時の癖で両手で持つイメージがついちゃっていてなんだかうまく行かないのよね。」


どうやら魔法を使うにも両手で放出するイメージの方がしやすいようだ。


「なら、実像を作り出す時、腕からイメージしたらどう?」


「ん?確かに。その方がいいかもしれないね。やはり、シオンは良い子だ!」


イーリス姉様の手は大きくて優しく頭を撫でてくれる。

今日の帰り道はいつもより少しテンションが上がる。


「イリーナ姉様は最近運動していますか?そうやってケーキをたくさん食べてばっかりで。」


最近、イリーナ姉様はずっと書類整理に追われて帰ってくるとこうしてケーキを食べている。もうこれはまずいかもしれない。


「シオン。それ以上何か言ったら明日からケーキ上げないわ。」


それは大変困る。コーヒーのお供のイリーナ姉様が作ったケーキが食べられなくなるのは困る。


「イリーナ姉様。それは困ります。姉様のケーキは美味しいので食べられなくなるのは困ります。」


「良い子ね。こちらに来なさい。一口あげるわ。」


やはり姉様のケーキは絶品だ。姉様は甘い方が好きのようで甘めのケーキだ。これがほろ苦いコーヒーに相性が抜群でついつい食べ過ぎてしまう。


僕はこの時隣国で起きていたことを知らなかった。

それを知ったのは、1週間後であった。


「ルナ姉様。これは」


「反乱ね。どうやら、政府は相当市民から不満を集めていたみたいね。」


臨時政府は市民により壊滅、無政府状態と言っていい。

ここで一つ気になることがある。隣国は実質的にこの国領土であるため、国防軍が動いてもおかしくないが動かなかった。

そして、反乱軍というべきか市民はそれがわかっていたのか、もしくはそれを上回る兵器ないしは人物がいるというのかそれらの要素があったのだろう。

詰まるところ、必ず勝利するという理由があったということだ。



夕方のニュースで国防軍が派遣される速報が流れた。やはり動かしてきたというべきか。ただ、鎮圧するためではなく、交渉代表の護衛目的らしい。実際の目的は鎮圧だろうが。


「そんなに難しい顔をしてどうしたのですか?」


相当深刻な顔をしていたようだ。身に降りかかる火の粉でもないのにこんなにも考えてしまうなんて。


「いや、なんでもないよ。」


このところ悪寒がする。指し示すように黒い雲がその悪い予感を増長させている。



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