第11話
契約は両者をつなぐ鎖のようなもの。
愛はこの世で一番硬い契約である。
そして、一番壊れやすいものでもある。
「どうしようもないくらい愛おしいと言う感じかしら。」
「ルナ姉様。正直、洒落になりません。」
「そう?私は、こんなにも愛しているのに。」
なぜか朝起きてからこんな感じだ。一体全体なぜこんなことになってしまったのだろうか?
原因は昨日のエリナ母様が原因である。昨日一日中僕と一緒にいた。それによって姉様達は完全に狂ってしまった。所謂嫉妬てやつだ。
「姉様。近所にできたカフェに行きませんか?」
僕の一言で姉様の息の根は吹き返した。いつも通り凛々しい姉様に一瞬にして戻った。
「着替えてくるわ。少し待っていなさい!」
いつも通りの姉様だ。それよりも他の姉様達と明日、明後日の一日付き合わないといけない。この調子なら何か対策でも考えておく必要があるみたいだ。
今日のこの通りは一段と賑わっている。ここは通学路でもあるので学生をターゲットとしたお店が多いのでそこまで値が張ることはない。しかし、それ以上に問題があった。
そのお店のお客のほとんどが女性客だと言うことだ。
つまり、そこに居づらいと言うことだ。
「シオン。これ美味しいわ。一口どうぞ。あーん。」
姉様はここぞとばかり攻めてくる。恥ずかしいが、嬉しいというのもありとても複雑だ。
「姉様。なんで僕たち見張られているの?」
「多分、エレナ母様のせいだね。気にしなくていいじゃない。どうせ手出しできないから。」
「それもそうだね。」
その日は美味しい料理とコーヒーを楽しんだ。
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「意外と空きを見せないな。」
「はい。もう少し様子を見ましょう。」
「しかしながら、あの男が標的か。」
「そのようです。家族の中で一番やれそうと判断したのでしょう。」
「周りの奴が強いからなかなか難しい。しかし、手がないわけではなさそうだ。」
2人組は闇の中に消えて行った。
「どうやら、確定ですね。」
「えぇ。私たちでやりますか?」
「まずは、報告よ。追跡はできているわ。」
それらを見ていた者たちも消えた。
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世の中には知らない方が幸せなこともあるが、責任として知らないといけない事もある。リーダーとして知らないといけないこともある。
だからと言って知らないことではあったがこれはひどい。
どうやら、隣国が怒って大量の暗殺者を送り込んだらしい。母様を倒すために。
しかし、出来なかった。そう出来なかったのだ。
入国からすでに監視が付き実行するまでに掃除されてしまう。それが、流れるように行われて証拠が無くいつどのようにして掃除されたのか推測でしか計れない。
「それで、全員どうしたの?」
「数が多いので処理に困りましたが、欲しい人材は確保して調きょ…教育を施し、バタフライの傘下に入れました。残りの人はご想像にお任せします。」
どうやら話せない内容のようだ。それほどまでに
「しっかりとこいつらは潰したのでしょうね。」
ルナ姉様は少々お怒りのようだ。それもそのはず、僕に直接危害を加えた唯一の存在だからだ。
「はい。そちらの方は、生きていることを後悔するようにしました。」
ルナ姉様は満足顔で頷いていた。
「ありがとう。今日は大変だったみたいだし、もう帰っていいよ。」
「では、これで。お邪魔しました。」
バタフライリーダーの黒揚羽は気配を消した。彼女の能力は恐ろしい。いるのだがいないと相手に思わせる。存在を偽っているといった方が正しい。
「ルナ姉様。このまま静観を続けますか?」
「そうね。イーリス。生徒会として当分の間、学院の警備高めておいて。どうやらちょっと胸騒ぎがしてね。」
「そうするわ。イリーナ。あなた方に臨時として部活動連合会の部員に生徒の警護を要請するわ。」
部活動連合会は簡単に言うと無数にある部活動を取り仕切る組織である。正直、教員や生徒会に申請するものやこちらからの報告などをするときに一括してできるという中間管理職みたいなものだ。
今回みたいに要請する時に使えるということだ。
あまり大ごとにならないことを切に願うよ。
「シオン様。朝方に連絡がありましたが、大丈夫でしたか?」
朝方に全校生徒に向けて注意するように連絡が入った。それで知ったようだがそれ意外にも彼女の家の者が手に入れた情報も得ているようだ。
「あぁ。特に被害は無かったよ。だけど、まだ悪さをする人たちはこの首都に潜んでいるみたいだね。」
学院の周りにバタフライの手の者が潜んでいる。これではここにけしかけるのは不可能に近いな。そういえば今日家を出る時に母様にバタフライが最低でも2人付いていた。
母様の護衛というよりもやりすぎないようにというお目付け役だろう。
「今日からまたイーリス様からあなたのお供するようにと言われたわ。」
「よろしく頼むよ。それじゃ、サボりに行きますか。」
「ダメよ。」
そう、彼女は絶対にサボらせてくれない。本当に困った。この時間、学院長室でお茶を楽しもうと思っていたのに。
「ちゃんと授業を受けましょう。」
彼女の笑顔には勝てなかった。先生が教室に入ると僕がいることに驚いていた。
下校時間で外に住んでいる生徒が帰る時に襲われると思っていたがそういうことはしなかった。僕たちを狙っているので学院の生徒に手出ししてきて人質なり僕らを炙り出すのではと思っていたが杞憂に終わったようだ。
「黒揚羽。いる?」
「ここに。」
「後ろのやつは?」
「片付けました。」
「さすがだよ。そうだ、今日姉様達がいないから、あそこのスイーツ食べに行かない?」
「はい!」
こうして、僕のささやかな楽しみを享受していく。
1週間が経ち、すっかり音沙汰がなくなり、生徒会からも通達が来た。
というのもバタフライが残っていたというより息を潜めていた暗殺者もとい不法入国者は全て政府機関と連携して一掃していた。
タチが悪いことに姉様達とのデートが囮に使われていたということだ。確かに、水族館やショッピング中にみられている感覚があったがここまで計算していたのか。
その翌日には隣国臨時政府から謝罪の連絡がこの国政府に送られてきた。このことは、バタフライの方から情報を横流しにしてもらった。それを知ってなのか滞りなく隣国の併合が完了した。
そのことを姉様達は特に興味を示さなかったが、何か裏で手を回したのだろう。母様たちの可能性もあるが。
自分自身は特にやっていないのに1つの国がなくなり自分たちは利益を産む。家族ながら末恐ろしい。
だから思う。この人たちは何がしたいのかということを。
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