第10話

魔装剣とは、一見剣の形をしているが、魔法具である。前述の通り見た目は剣の見た目をしている。その能力は基本的には、使用者の能力の向上という至ってシンプルなのだが、驚くべきところはその振れ幅だ。一介の魔法師が魔女レベルにまで達すると言われている。ただ、使用する場合には契約する必要がありさらに発動するのに相当量の魔力が必要とされている。


「それで、お母様。何本作ったのですか?」


ルナ姉様が少々?怒っている。多分本気では怒ってないとは思う。それより今の僕の状況にイラついているのだろう。というか、イリーナ姉様とイーリス姉様も少々イライラしている。


「私は作ってないわよ。作ったのはエリサよ。私は、それに付与する魔法を渡しただけ。だから知らないわ。」


「そうだろうと思いました。」


大きいため息を吐いた。


正直あれは見るからにわかる。魔法で劣っているものにとっては喉から手が出るほど欲しい品物だ。最近やっと簡単な魔法であれば機械に処理してもらう方法が確立されてきたが、やはりその魔法の強さは個人に由来する。それを、ブーストされるということはそれだけ魔法師としての質が上がる。


「それより、シオン。成長しているわね。」


私は、魔法師ではない。魔法を使うことは基本的に出来ないので魔法師として成長できない。訝しむように母様の顔を見上げた。


「その顔は分かっていないわね。あなたは確かに魔力が体内にあるが魔法を自由に使えるわけではないわ。それでも、自然界に存在する魔力を使い魔法を使うことができるわ。つまり、自然界にある魔力と同化していくことによってあなたの自由度が上がるの。」


どういうことだ?


「見た目にも現れているわ。エルフとして姿が見えるのは自然に近い存在なのかもしれないわ。」


どうやら本当に魔法を使えるのかもしれないな。


「あなたは自然の魔力を操れるの、だからこれであなたは魔法を使うことができるわ。」


僕は、魔法を使うことができる、それはとても嬉しいこと。


「そう。あなたは魔法を使えるの。」


エレナは、ルナの母なだけあって精神に対して作用する魔法を自然と使う。それも気付かれずに。

魔法は早くそして気付かれないほどいい。そこは、深淵の魔女なだけある。


「シオン。あなたは、私たちの希望なの。それは覚えていてね。」


その後のことは記憶がぼやけている。お風呂に入り、部屋に運ばれて寝たみたいだが鮮明に思い出せない。


とりあえず、朝起きると隣に母上が寝ているのは確認できた。


正直あまり驚かない。なぜなら、起きたら隣に誰かしらいるからだ。慣れた部分が大きい。


翌日、母上と学院に向かった。


「久しぶりね。エリカ姉様!」


「まさか来るなんて。それで、ここに何しに来たの?」


「あら、自分の子供に会いに来たらダメなのかしら?」


「それだけが理由じゃないでしょ。」


タブレットを見せてきた。どうやらこれが原因でいるみたいだ。


「やはり知っていた見たいね。そうこれ。ちょっとやりすぎちゃったわ。」


「やりすぎもやりすぎ。一つの都市を消滅させるなんて。」


「しょうがないじゃない。いきなり、結婚してくれって言われたのよ。そんなの嫌よ。」


「それでもよ。」


相当怒っているようだ。というより、気持ち悪いという感覚になるだろう。


「やるならもっと狡猾にやったらということよ。こういう感じで消滅したらこっちに利益がないわ。」


「それもそうね!やるなら徹底的にやっておけばよかっわ。」


この姉妹は、明らかに狂っている。どうしてこの人たちはこんなにも極端な人なんだ。


エリカ師匠は、現在ではこうして研究者として過ごしているが、元々は軍人魔法師だ。と言っても、民間軍事会社といったところだ。つまりは、傭兵だ。それ以外にも武器を売っているのでビジネス面でも活躍した。そこに、姉妹の長女エリア様と三女エリサ様も関わっているとか。


「エリカ姉。魔装剣がなぜまだ残っているの?」


「それが、エリサの家からどうやら盗まれていたようだ。」


「あの人は。」


そう。あの人は、生活破綻者といっていい。簡単ではないが、そこそこ熟達しているものであれば忍ぶことも可能だ。


「それで盗まれたのはあれだけ?」


「そのようだ。他のものは残っていたらしいからな。」


とりあえずこれ以上問題は起きないと思いたい。

魔装剣は簡単にコピーできる代物ではない。なので、似たようなものを作るには理論から構築しないと無理と言っていいレベルだ。


机の上にある資料に目が止まった。


「ん?これが気になるか?」


エリカ師匠はそのことに気がついたみたいだ。


「これは、もしかして、契約についてのことですか?」


「そうだ。これは、契約失敗時に起きる魔力喪失についてだ。」


「契約ですか。」


「これはシオン。君の端末に譲渡しておくよ。君にとってはついてくる問題だからね。」


「そうね。今のところ私達だけでしょ。成功しているの。」


「うん。でも、できそうな人がいない。できる人はなんとなく分かる。この人は出来そう。この人は出来なさそうて言う感じに。」


そう。ここで言う契約とは、妖精族と呼ばれるエルフのような種族が魔法師と行う儀式で魔法師は自然と間接的に接点ができ今まで使えた魔力の総量が増え、エルフはその魔法師から守護されるとともに魔法師が使える魔法が使えると言うものだ。正直あまりエルフにとってはメリットが少ないが、自分が危機に陥った時に魔法師は命懸けで守るという最大のメリットがある。


しかし、これには大きい問題がある。それは、契約が失敗する場合があると言うことだ。その原因がわからないが、結果として、魔法師は魔力を失い魔法師として終わる。


「これを読んで君の感想を聞きたい。君の感想と考察を忌憚無く述べて欲しい。」



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