第8話
これは、夏の1コマである。
そう、夏だ。夏なのだよ。今回、来ているのは、コーネル嬢の血縁であるミラーレン公爵の領土にあるビーチに来ている。特段プライベートビーチでは無いのだが、実質プライベートビーチになっている。
「シオンどう?」
イーリス姉様は見せつけてくる。その豊満な体を、頼りない布をその体に巻き付けて。
「イーリス姉様。正直もう見飽きました。家でも同じような格好なのですから。」
「それもそっか。」
もちろん前者は嘘だ。姉様達の体を見飽きるわけがない。脳内のフォルダに素早く保存しなければ。
「それとルナ姉様。くっつかれるのは嬉しいのですが、そこまでくっつかれると動けません。」
「大丈夫。お姉ちゃんに任せて。全部やってあげる。」
これは、嘘ではない。分かる。これは本気のやつだ。正直このままでもいいのではないかと考える。その原因は、背中に当たっているとても幸せなものにあるのだが。
「シオン!イーリスはどこ?」
「イリーナ姉様。どうしたの?」
「あの子、何もしないで出て行ったのよ。」
どうやらはしゃいですぐに出て行ったみたいだ。双子でもこんなににも差が出るようだ。
迷惑をかけなければいいのだが。
「もういいわ。私がやっておくわ。」
家でもイリーナ姉様はゆっくりできないみたいだ。そういえば、最近肩こりがひどいとも言っていたような。明らかに別の理由もありそうなのだが。
今日泊まる家の方向からコーネル嬢が歩いて来るのが分かった。
「今日は、誘っていただき感謝いたします。」
代表して、ルナ姉様が感謝を述べた。
「いえ。こちらも皆様が参加されることで呼びたい人を呼べたので。」
どうやら何か裏でしているようだ。こちらに実害がなければ何も気にしないので自由にやってほしい。
「皆様は、海を楽しんでください。」
「そうさせてもらうわ。」
そう言うと家に戻って行った。どうやらお目当ての人に会いに行くのだろう。
僕たちは僕たちで楽しもうか。
夕方まで海を満喫した。途中イーリス姉様は疲れてパラソルの下で寝ていたのだが。
「ルナ姉様。そういえば途中何か魔法を使っているように視えましたが。あれはなんですか?」
そう、魔法で何かしていた。そう視えたのだが、それがどのような効果なのか全く分からなかった。
「あれは、今開発中でね。原子に直接干渉する魔法なのだけど、視覚的効果を表すには相当な魔力量とコントロールが必要なのだがうまくできるかなと思ったのだがやはり厳しい。」
「もしかして、原子レベルで干渉して魔法として行使するということですか?」
「そう。そうすれば、魔法は科学に対して新しい見解と発見につながると思っていてね。エリス先生にも面白いと言われているのだがなかなか掴めていなくて。」
現代魔法は確かに科学と照らし合わせて行使している部分があるが、やはり分子として捉えている。というかその方が使いやすい。ただ、科学では干渉できない部分にも干渉しているのも事実。どこに根を伸ばすかにもよるが、ルナ姉様の場合はそれが魔法という大きな根の先で今回はたまたま科学に直面する分野であった。元々、姉様は精神面に干渉するのが得意な面があるので正直驚いた。
「姉様は、面白いですね。」
「そうか?」
「そうですよ。」
今日は意外な一面を知れたような気がする。そういうのもいいな。
夜になるとささやかながらパーティが開かれた。
ミラーレン公爵家の当主と当主夫人も来たみたいだ。
「本日は、お招きありがとうございます。」
目の前に広がる料理はとても豪華のものだ。さすがは公爵家の料理人と言ったところだ。
「こちらとしても助かったよ。やはり、魔女の方々の知名度は素晴らしい。」
早速いただこう。見た目同様味もいい。お肉の焼き加減を素晴らしい。
「いえいえ、家族を楽しまさせてくれたので、このくらいは有名税といったところですよ。」
それにしてもこのチキンは素晴らしい。これが胸肉とは思えないくらい、しっとりとしている。
「シオンさん。こっちも絶品ですわ。」
ミラーレン夫人が渡してきた。この方は、一番魔女に近い人間の魔法師だ。確かに見るからに潜在的な魔力量はえげつない。つまり、これ以上に伸びるということだ。
「はい。あーんですわ。」
うん。素晴らしい。正直見た目は20代にしか視えないので美魔女というわけか。ある意味魔女だ。
なぜか、夫人に甘やかされそれを羨ましがる姉様達を横目にささやかなパーティーは終わりを迎えた。
「本当に楽しかったわ。息子も男兄弟もいなかったからいたらこんな感じなのかしら。」
本当に胃に来る。姉様達の視線がトテモイタイ。
翌日にはミラーレン公爵当主と夫人は皇都にある邸宅に戻っていった。
正直体が持たないと思った。昨夜、あの後部屋で言えないくらい甘やかされた。相当嫉妬していたのだろう。やりたい放題された。そこに、大量の服を持った夫人とコーネル嬢も現れたのだ。もはや、カオスとしか言いようがない。
そんなことになり、夜は寝かしてくれなかった。
そうして、お昼には近くのショッピングモールに行き姉様たちは買い物を楽しんだ。
僕はというと魔法の練習をしていた。この屋敷の地下に魔法を練習できる場所があった。
今回は、行うのは原子に対する干渉だ。昨日ルナ姉様がやろうしていたことだ。
とりあえず、方法としては魔力を使い原子を認識することだ。これは魔力を薄く伸ばし周りを魔力の干渉による探知魔法を応用したものだ。
それをさらに薄くそして干渉したものに対する認識を極限にまで引き延ばした。
それでも魔力を干渉するにはいかない。なら、魔力で生成してそこで干渉するのはどうだろうか?
今までに生成魔法を実験した組織はたくさんあるが成功にはいかない。理由としては生成したものを維持するのが難しい。
基本的にそれはおかしい。普通魔法は発動したらあとは勝手に事象として残るが、生成魔法の場合はそれが永続的に発動して維持しなければならないようだ。なので今回は魔法として維持できる数秒を探知してみることにする。
結論から言うと失敗だった。なぜなら原子というものが無かったからだ。そうそこには魔力しか無かった。つまり、構成としては見た目は同じでもそれは魔力の塊から生まれたものだった。生成魔法はつまりは常時発動している幻影魔法に近いものなのだろう。
こうして僕たちの夏休みは終わって行った。
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