第6話

あの実験から1週間。僕はエリナ師匠に連れ回された。とにかく実験、実験の連続であった。忙しくなく働かされる。


ちなみに、隣国との戦争なのだがいつの間にか終わっていた。詳細はなぜか聞いても教えてくれない。何かあったのだろうか。不思議だ。とにかくみんな無事のようだ。大きい怪我なく帰って来たことに感謝しなくては。戦後処理でまだすぐには帰れないみたいだ。


そうして僕の平穏は訪れる。今日の天気はとてもいい。変わったことといえば、実験以降エルフとしての姿から戻れなくなったことぐらいだ。と言っても特に何も変わらない。いつもより見えすぎているくらいでそれが疲れるだけだ。もう慣れてしまったが。良い点としては、学院のお嬢様方々からチヤホヤされてとても心地いいという点だ。コーネル嬢が青ざめた顔をしているのは気のせいだと思いたいが、何かあったのだろうあ。とにかく見た目が変わることというより戻れなくなる人もたまにいる。そういう人は魔力の使いすぎであったりあえてその姿が良いという人だったりとまちまちだ。


僕の学院での日常は変化しつつも順風満帆だ。


「シオン様。申し訳ありませんが、午後から私校内対戦でして。」


「そうか。頑張ってね。コーネル嬢。」


「はい!」


元気よく返事をしたが、よくよく考えてみれば、彼女の対戦をしっかり見るのは初めてだ。

どんな戦いをするのか見学してみるか。


コーネル嬢の相手は2年のリュラ先輩のようだ。2年生の中でも屈指の存在だ。今の1年生の中で勝てるものはいるだろうか?


学院は酷いものだ。こうするのは先輩方の実力を見せるというのと、心を折ることで慢心を無くそうという魂胆なのだろう。


審判の合図とともに試合は始まった。

先制したのは意外にもコーネル嬢だった。彼女の魔法発動の速さは尋常ではなかった。

普通の魔法師は魔法を発動する時、発動する魔法の術式・魔法のイメージ・魔法の構築そして魔法の発動となる。そして、一般的にその発動を1秒とすると彼女は1/5の0.2秒とかなり早い。


それだけ、早いと相手への奇襲となる。そこにアドバンテージはあり、その分相手は焦りを生むことになる。


「隣いいかしら。」


座ってそのまま抱き上げ自分の膝に乗せて頭を撫で始めた。


「ルナ姉様。お早いお着きで。」


「頑張ったわ。」


どうやら本当に早く帰って来たようだ。本当に姉様は規格外だ。


「彼女強いね。」


「魔法の発動速度がダントツで早いし、それに命中もかなり高い。」


見ている限り、水の回転を得意としているように見受けられる。


回転をうまく利用して攻防一体の戦いをしている。


その中でも、リュラ先輩は素早い動きで翻弄している。どうやら近接で戦うのを得意としているようだ。先ほどから脚力に対して魔力を調整して強化している。

さらに使っているのは魔力を流し付与するタイプの武器だ。かなり特殊だ。あれなら速さに関係なく使える。ギリギリまで何が来るのか分からない。流さなければ、そのまま剣と使える。


「彼女もうガス欠だね。」


どうやらリュラ先輩は、息切れをしている。彼女くらいの実力ならあまり起こり得ないようだが。


「足場が悪くなっていて、無意識に無駄に使わしたみたい。」


そのようだ。コーネル嬢の魔法は早い代わりに威力が低い。だがその分魔力消費量が少なくすみ持久戦に持ち込んだというわけのようだ。外しても自分が思うように動かすことも可能か。


「頭いいね。」


本当に頭がいい。しかし、彼女のような人は戦場は似合わないな。


リュラ先輩はそのまま棄権した。これによりコーネル嬢の勝利となった。


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