第3話

今日の天気は最高だ。一日寝て過ごしたい気分になるぐらいだ。

しかし、今日という日は僕にとって羞恥と劣等感に襲われることになる日になることが決定している。


「ルナ姉様。これは本当?」


「うん。いやなんで、こんなことに。」


「バカな貴族のプライド。」


ため息をつくしかなかった。

今見ていたのは学院から通知された校内魔法師対戦トーナメントだ。

そして一回戦目は捻くれている貴族であるヤーブ伯爵だ。


「問題なのは、私に対して強気だったのよね。」


「裏がありそうだね。」


なんだかんだでこの国は実力主義に近い体制をとっている。


「隣国に接していたわよね。」


そう。ヤーブ伯爵の領土は隣国レステ帝国に接している。なので、買収されている可能性はある。


「バタフライに任せる案件かもしれないね。」


「そこはシオンに任せるわ。」


とりあえず情報を集めるだけ集めておこう。無いよりはいい。


「登校の時間ですよ!」


コーネル嬢が現れた。入学して1ヶ月が経ちこの部屋にも出入りするようになった。なぜかメイドみたいなことをしているが。これは謎だ。



さて気を取り直そう。対戦は午後からなのでまだ時間がある。それまでに対策しておくか。


「だからと言ってルナ姉様授業中です。」


「うん分かってる。」


そう、自分の身長が小さいことをいいことにルナ姉様は自分を膝に乗せている。まぁ1ヶ月も経てば皆は慣れてくる。ある意味役得なので文句のつけようがない。ルナ姉様の胸部は豊満でとても柔らかい。


ただ、問題はそこではない。ルナ姉様の受け持つ授業なのだ。


「ルナ姉様。ルナ姉様の受け持つ授業です。ちゃんと授業をしてください。」


「それなら問題ないわ。」


ルナ姉様の示す方へ目線を向けた。そこには、もう1人ルナ姉様がいたのだ。それは精神系統に含まれる魔法だ。単純いそちらにいるように見せかけている魔法に過ぎない。応用が効く魔法である。

問題なのはその精巧さだ。とても単なる幻術には見えない。この教室にいる聴講生には誰にも気付いてない。聴講生の中には教師の姿もある。ルナ姉様の授業は教師陣にも人気を博している。

授業自体は魔法応用学且つその発展の考察になる。この授業は珍しいディスカッションに近い体制である。まず基礎知識がある前提として話を始めそこから各々の意見を言い合う。ある意味難しいが、この学院に入学した時点でそういう道に進むような人間だ。想像以上に白熱する授業となる。


なので午前中はこの授業で潰れてしまう。かなり有意義なので普通の授業よりは相当ためになる。何より各々思考や思案をするので間違いなく魔法に対して核心へと一歩また一歩と近づく。


こうしてお昼をすぎ対戦が始まるまで刻一刻と近づいてくる。


「勝ち目はあるの?」


イリーナ姉様が聞いてきた。正直にいうと、正攻法では全くと言っていいほど無い。なぜならこの対決には魔法を使用することを前提にしているルールがある試合だからだ。なので直接的な打撃が禁止になっている。魔法で生成したもの魔法を付与して飛ばすものはルール的には問題ない。しかし、問題がある。僕は魔法が使えない。いや正確にはみんなと同じように魔法は使えない。


「それでどうするつもりなの?」


「こんなものを用意した。」


タブレットを持ち出した。


「これは?」


「簡単にいうと魔法をスロットにして入っている道具ってところだね。既にインストールしている魔法をタップするだけですぐに発動できるようにしてある。問題点としては、5つまでしかできないことだね。」


「それ本当?」


「嘘をついてどうするの。誤魔化すにはちょうどいいかなって。」


そう。普通の魔法師は補助として道具を使うが基本的には魔法を記憶している。そのためここまでする必要がない。

楽なのだが、スロットが少なすぎる問題がある。それを使い分ける魔法師がいる。速さでは勝るが強い魔法が打てないのでそこまで効果が出ない。扱うには緻密に戦術を考え予測し使い方を考えなければならない。


「この魔法だけで勝てたら楽なのだけどね。」


正直あまり自信がない。挑発に乗ってくれたらこの魔法だけで済む。


「分かった。ほんの少し解除するね。」


「いや、それはやめておいた方がいい。」


イリーナ姉様は驚いた表情をしていた。


「どうやら、隣国のスパイがいるみたいなんだ。」


イリーナ姉様は驚いていた。それもどうだろう。正直色々なところにスパイはいる。だが、おかしいことではない。この辺りはバタフライの縄張りだそこに出入りしている時点で手練れというものだ。


「大丈夫。もう目星はついているよ。指示しているしね。」


「時々、自分の弟が怖いよ。」


「僕は、魔法師じゃないからね。」


目の前にある重い扉を開けてステージに上がった。

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