第5話

居酒屋

大五郎と小百合が飲んでいる。


大五郎

「……気持ち悪いって言ってしまいました。」

小百合

「あぁ……。気持ち分かるよ。逃げるなって話。」

大五郎

「そうなんですよ!」

小百合

「でも、大五郎君。知っててこうなった訳だよね。」

大五郎

「……。」

小百合

「私は、寝耳に水だった訳だよ。」

大五郎

「……好きな人にどっちか分からないって言われたら、その、じゃあ試しにってなっちゃうじゃないですか。」

小百合

「……なるほどね。」

大五郎

「……すみません。」

小百合

「初めは軽い気持ちだった訳だ。」

大五郎

「僕は本気です!……けど、どうせ捨てられるだろうって思ってました。」

小百合

「……。」

大五郎

「こんなに誠実な人は初めてだったんです。」

小百合

「じゃあ、奪ってしまおうと……?」

大五郎

「……。」

小百合

「ごめんごめん。意地悪だったね。気持ちは分かるって思ってさ。」

大五郎

「正直、こうして小百合さんと会ってても、この気持ちは変わっていません。」

小百合

「……私の気持ち、言っていい?」

大五郎

「……。」

小百合

「分かった時は混乱してて気付かなかったけど、セックスしてる訳だよね。」

大五郎

「……。」

小百合

「気付いちゃったら、初めて二人を見た光景が急に生々しくなってさ。かなり気持ち悪かった。」

大五郎 

「……。」

小百合

「だからあの日、めちゃくちゃに言ってやろうと思ってた。……大五郎君の方にムカついて。」


大五郎、俯く。

小百合、続ける。


小百合

「でもさ、真っ直ぐな目で私を見る大五郎君に会ったら、そんな気持ち、全然湧かないの。何かさ、応援したい気持ちまで湧いてんの。」

大五郎

「……。」

小百合

「でもさ、悔しいかな、大好きなんよ、光雄が。変えられないんよ。

嫌で、嫌で、どうしようもなくてさ……。」

大五郎

「……僕、正直、負けたと思いました。思ってた以上に素敵な女性だったから。」

小百合

「……。」

大五郎

「……。」


二人で笑いながら泣き合う。

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