第39話ー兵器少女と絶体絶命ー
ブルーグラディウスによる一撃をもらい、大きく体勢を崩したクアッドに対し接近していくダイナモは大きく右腕を引き……。
「もいっこもらったァ!」
クアッドの左脇腹に引いた右腕を思いっきり突き入れた。
脇腹を貫通したダイナモの右腕に握られていたのは
それをそのまま握りつぶし、赤い液体を噴出させながら潰れて崩れていく。
『調子乗ってんなぁ裏切りモン……!!』
《調子に乗れるくらいには削れてんだろ》
右腕部をクアッドの脇腹から勢いよく引き抜いた。
引き抜いた右腕には黒いグレアノイドがびっしりと付着しており……。
「げ」
『コレは防げねぇよなぁあ!?』
付着した粘着性グレアノイドの内部熱量が急激に上昇。
ダイナモの右腕部装甲がその異常な熱に耐えられず泡立ち、爆ぜようとしていた。
「右腕部の切り離しってどう……」
「もうやったぁ!」
乱暴ながらもネロが蹴り上げで右腕部の緊急切り離しレバーをかち上げていた。
すぐにその右腕から離れようと左側へ跳躍したが、直後に莫大なエネルギーを伴った爆発を起こしたそれの衝撃に巻き込まれ橋の縁まで吹き飛ばされ……。
「落ちッ……」
衝撃で吹き飛ばされた機体は橋から飛び出し、宙に浮いた嫌な感覚とともにはるか下に見える海面を見下げることになった。
残った左腕で方舟都市の最上層へつながっている巨大な橋の縁にギリギリだったが捕まることができ、ぶら下がる形になったものの落下は防いだのだが……。
「あ、あぶねぇ……。ありがとな、ネロ」
「しどぉ」
「ん?」
「
「あ、そうなん」
「もひとつぅ。この子水中機動用
ヒナキはそれを聞き、額に汗をにじませた。
「あ、あー……。ごめん、青い人早くもこちら戦線離脱かも」
《あれだけ威勢良かったのに何してるの》
「そいつは感情的になりやすいから煽るだけ煽って単調化させれば楽なんだよ……」
《このやたら強いの、やっぱり知り合いなのね?》
通信先ではブルーグラディウスとクアッドが戦闘しているのか、爆発音やミサイルの射出音などが頻繁に聞こえてきている。
おそらくヒナキに追い打ちをかけようとしていたクアッドに対し苛烈な攻撃を仕掛け足止めしているのだろう。
《うッ……! 厄介ねこの爆発する肉片みたいなの……! 上がってこれないの!?》
「一応さっきから試してはいるんだけどびくとも……。こいつのスペックじゃ片腕だと持ち上がらんみたいで」
《姿勢制御用のスラスターと片腕だけじゃ流石に無理なのね。グラディウスの
言葉の途中で通信先から一際大きな爆発音がしたと思うと結月からの声が途切れノイズが流れてきた。
キツイのを一撃もらったようだったため今すぐにでも助けに行く必要があると思ったヒナキはハッチを開こうとしたのだが……。
バキン、という大きな音が外から聞こえた。
直後ネロとヒナキを襲う強烈な浮遊感。
橋の縁を掴んでいた腕部の機構が自重を支えきれなくなり割れて破損し、海へ向かって落下した。
あまりにも突然でヒナキ、ネロでさえ声が出なかった。
海面に叩きつけられ、凄まじい衝撃とともにコクピットの床で身体を叩きつけられバウンドするネロ。
ヒナキはベルトで固定されていたため衝撃に耐えることはできたが……。
「ぐッ……ネロ!? 大丈夫かッ?」
声をかけたが反応がない。
すぐにベルトを外しコクピットシートから離れ床に倒れているネロの上半身を抱き上げてやった。
ぽたりと床に落ちる赤い液体。
ネロは頭を強く打ち付けていた。
血が出ているため頭を切っているようだが出方からそこまで深くはない筈。
だが打ち付けた際に脳震盪を起こしているため意識がはっきりしていない。
海面に叩きつけられてからしばらくしてこの機体が水中に沈んでいっている感覚がわかった。
外の景色は薄暗い海中の景色に変わっていく……。
どんどん沈み、もはや光も届かず外の様子も伺えないほどとなっていた。
上昇する水圧に伴い機体各部に入り込んでくる海水。
ある程度防水加工がなされているこの機体だが、水深数百メートル地点での防水性までは考慮されていない。
システムを動かしている電装系がショートしはじめた。
モニターにもノイズが走り始めもう外を映すことすらできなくなろうかというところで……。
突然前から迫ってくる巨大なクジラのような物体がノイズの合間に確認できた。
その物体の先端からは強烈な光が放たれており、こちらを照らしているようだ。
そしてモニターも消え失せ、ミシミシと音を立てて軋み沈んでいく機体が着底したわけでもないのに突然なにかに固定されたかのように静止する。
ヒナキはネロの頭部裂傷の止血を行いながら考えを巡らせた。
助けか?
方舟外海には所属不明な潜水艦がいたと聞いた。
その潜水艦に対し方舟側が出した捜査潜水艦隊かと都合の良いことを考えたが……。
多分違うだろう。
おそらくその所属不明である潜水艦そのものだ。
この状況下で楽観的な考えは捨てなければならない。
最悪の状況に身を置いていると仮定し、常に次の行動を考えていく。
もしクアッドとその潜水艦内部の人間が繋がっているのなら、この機体にネロ……つまり方舟の最高戦力であるステイシスが乗っている情報を共有されているだろう。
やつらにとってすれば海中に宝箱が落ちてきたも同然であり、当然
外の様子は伺えないが機体が水平方向に動き始め、何かが開くような音がし……そして金属質な床に乗り上げたかのような衝撃を感じた。
「まずい……これサルベージされてる感じだな……」
ネロの意識は未だはっきりせずぐったりしている。
ヒナキはMod-45のマガジンリリースボタンを押して
自分のジャケットを脱いで丸めネロの頭の下に入れて一旦寝かせてやった後、自分は
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