第38話ーぶちかましー
ドミネーター人型特殊個体、第二黒鎧ことクアッドの姿をヒナキは正面に捉えた。
セントラルストリートを全速力で駆ける建築用機体ダイナモは武器を構えることもなくただただ速度を上げていく。
「青い人! あいつの動き止められるか? 一瞬だけでいい!」
《青……、止められないことはない筈。何をするつもり?》
「まずあいつを都市から追い出すよ」
《……任せるわ。黒鎧、動きの兆候あり。3秒後にイージスを展開し挟み込んで動きを止めるから合わせて》
ダイナモはセントラルストリートを駆け抜けながら、パレードの出し物だったであろう機甲兵器用の大型シールドを掠め取り前に構えた。
それに対しクアッドは右手を振り上げ、向かってくるダイナモに向かって振り下ろす。
それに対し、結月は舌打ちをする。
イージスの展開が遅れたと。
『あ?』
クアッドは不可思議な現象に思わず声を出す。
突如として両側面に青く光を放つ半透明の物質が壁のように展開し、動きを封じられた。
ブルーグラディウスの自律駆動式の兵器に挟まれていたが気が付かなかったのだ。
自律駆動指揮兵器はクアッドの身体を挟み込むようにシールドを展開し、動きを一瞬封じた。
だが先程クアッドの腕は振り下ろされ、それと同時にダイナモに向かって5個ほどの黒い塊が飛来してきていた。
その黒塊を放たせる前に動きを止めるつもりだったため、結月は舌打ちしたのだ。
飛来してきたのは先の情報にあった
それがダイナモが構えた多重装甲シールドに貼り付き……。
「しどぉ、耐ショック姿勢ぇ!!」
「このまま突っ込む!!」
「わぁ、そゆの好きぃ」
シールドに貼り付いた粘着性のあるグレアノイド物質が見た目のコンパクトさに似合わない爆発を起こす。
その爆炎は大型シールドごとダイナモを飲みこんだが……。
止まらない。
背部に備えられた緊急時の姿勢制御用
爆発でいくらか装甲が割れ剥がれたシールドを構えたまま……。
ブルーグラディウスの指定箇所へ出現させられる
『おいおいおい流石に止まれや!!』
「やっちゃえしどぉ」
停止など一切考えない。
凄まじい質量と速度を保ったままその建築用二脚機甲は人型ドミネーターに対して突撃した。
ぶつかった直後、ネロはこれ以上ないほどの笑顔で右拳を振り上げていえーいとストレスの発散を全身で体現する。
割れたシールド装甲がそのドミネーターに刺さり更に身動きができなくなったクアッドは衝撃によって腕や足がちぎれ飛びながら、ダイナモと共に防護壁に空いた穴から都市外へ飛び出していく。
「あーあ、むちゃくちゃ……」
その凄まじく乱暴な所業を目の当たりにし、額に手を当てて呆れ果てていたのは結月だった。
だがあの重い作業用機体を使用した相当効果的である攻撃であることは認識していた。
機体駆動の衝撃を和らげるためのコクピットサスペンションがあるとはいえ、あのぶちかまし具合だと衝撃で骨の1本や2本は折れているはず……。
防護壁を越え、都市と本土をつなぐ巨大な橋に凄まじい勢いで転がり火花を散らす1体の人型ドミネーターと1機の二脚機甲。
けたたましいデンジャーアラートを聞きながら、ヒナキは操縦桿を操り機体を起こす。
「ネロ、大丈夫か?」
「あれくらいまったく問題ないわよぉ。あのムカつくのぶっとばせて幸せぇ」
「
機体を起こしたヒナキと同時に人型ドミネーター、クアッドも起き上がってくる。
弾け飛んだ腕や足は再生しつつあるが、再生速度が落ちている。
『クソがよぉ……相変わらずめちゃくちゃなヤロウだなテメーはァ!!』
《再生が遅くなってんなァ、クアッド。
ヒナキが操縦するダイナモは警備用機体から拝借した機甲兵器用ライフルを構え、射撃を開始した。
再生が追いつかず2、3発はまともに食らったクアッドだったが、すぐに腕を変形させてグレアノイドで形成された盾を生成し弾丸を防ぐ。
……が、飛来する弾丸に気を取られさらなる攻撃に気づけなかった。
上空から青い光を放つブレードがシールドごとクアッドの身体を切り裂いたのだ。
肩口から腰にかけてばっさりと裂かれたクアッドはよろめきながら後退する。
ブルーグラディウスの自律駆動兵器が行う高威力近接攻撃手段、フォトンノイドブレードを使用した斬撃だった。
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