第24-②話ー兵器少女と異世界兵士の競争ー


 ブルーブラッドOtypeオータイプ

 従来のAtypeエータイプBtypeビータイプと比べ積載可能な兵器重量と作戦行動可能時間が増えた。

 駆動系は液体燃料の気化により発生させたパワーとそれを利用した超高効率タービンで生み出す電気を利用し、機体脚部腕部に装備された人工筋肉を駆動させて人間さながらの駆動域と動きの自然さで観客を湧かせている。


 いくら機体性能が良くてもそれを見せられなければ意味がない。

 そこで結月少尉の卓越した機体操縦技術が光る。


 機体各部に装備された二脚機甲用装備……ライフルやランチャーを器用に展開し腕部を用いてくるくると回して弾薬をリロードしてみたり紙ふぶき入りの空砲を撃ってみたり、なんならその機体の姿勢制御の高精度さを示すために逆立ちをしたりしていた。


「すごいな、あの機体。人間みたいな動きだ」


「すごいのはあの機体じゃなくてパイロットぉ。こんな人の多いところで機甲兵器用の武装とか逆立ちとか普通のパイロットじゃ危な過ぎてできないわよぉ」


「へぇ……すげーなこっちの世界のパイロット。君はあれできンの」

「ネロぉ」


「ん、おお……ネロはあれできンの?」


 名前を呼ぶように食い気味に言葉をはさんだネロはヒナキの言葉に対し口元をへの字にしながら腕を組み……。


「逆立ちした上にそのまま歩いてジャンプできるわぁ」


「すげェッスネロさん」


「……嘘だと思ってるぅ」


「やっぱ目で見てみないとさぁ」


「いってきまぁす」


「ウソウソ!! 信じてるってできるって! どこ行こうとしてんだ!!」


 その辺りで警備のため突っ立っている二脚機甲に向かって歩き出したため必死に止めた。

 ただでさえ目立たないように必死なのに少女の卓越とかそういう次元を超えている技能で機甲兵器を動かされパフォーマンスなどされてはたまったものではない。


「しどぉも似たような機体乗ってなかったぁ?」


「お、覚えてるのか? あれは俺の相棒だよ。口は達者だったがあそこまで繊細な動きはできなかったわさすがに」


 大侵攻の際、ヒナキは黒い機体に乗ってステイシスの白い機体と黒鎧の間に割って入ってきた。

 その時の黒い機体のことを薄っすらとだがネロは覚えていたのだ。


「粒子エネルギーとそれを制御、出力するための次元間技術に特化して発達してたから電気使って人工筋肉を動かすなんていう繊細な技術はなかったなぁ。あの自然でなめらかな動きには素直に驚いてる。こっちとあっちの技術を融合させたらすごいもんができそうだわ」


「あっちの技術の知識はぁ?」


「多少は。長いこと兵隊さんとして過ごしてたが元々技術者志望だったからな」


「ふぅん……なんかぁ、しどぉってよくわかんない人ぉ」


 めちゃくちゃ反応に困る感想を言われ、ヒナキはブルーブラッドのパフォーマンスを眺めながらぽりぽりと後頭部を掻く。


「でも、おもしろいかもぉ」


「そうか? まあ質問したけりゃいつでもどうぞ。これから長い付き合いになりそーだしな」


 センチュリオンテクノロジーのパフォーマンスが終わった後もGNC社の二脚機甲兵器、ガンドックファクトリーの獣を模した四脚機甲兵器など見た目にも気を使った機甲兵器のパレードは続いた。

 休憩時間は後30分ほど残っている。


 ふと目に入ったのはGNCの歩兵用最新兵器を実際の戦闘さながらに体験できるブースだった。

 実銃とバーチャルリアリティの融合で、架空の敵に対し実際に身体を動かしながら銃の射撃感を体験できるそれはスコア制のアクティビティとなっていた。


 スコアランキングとは別に、GNCの特殊二脚機甲部隊エースたちが事前に行ったプレイで出したスコアが表示されている。

 どのエースたちのスコアもランキングトップよりはるかに上の数値を出しており、いかにエースたちの腕がいいかの広告塔にもなっていた。


「なにあのお遊びぃ」


「気になるか?」


「気になるぅ」


 少し迷ったがまあ、あれくらいなら良いかとヒナキはそのアクティビティのプレイを許可した。

 プレイするにあたり頭や腕などにデバイスを装着する必要があるのだが、それはヒナキが装着してやった。

 

 デバイスが子供用ではないためにネロが装着すると少しガバガバ感が出て大丈夫かと思ってしまったが……。


「あの、銃の反動もそのまま再現されてますので女の子は……」


「あ、この子は大丈夫だと思います。な?」


「大丈夫ぅ」


 GNCアクティビティブースのスタッフは少女が持つには大きすぎるエネルギーライフルを持たせることをためらっていたが、いざ持たせると大人顔負けのしっかりとした構えを見せたためそれ以上は何も言ってこなかった。


 アクティビティスタート。


 ヴァーチャルリアリティ技術による架空のドミネーターが拡張表示された空間に複数体現れた。

 あまりのリアルさに恐怖すら覚えるはずのものではあったが……。

 現れた次の瞬間にはネロが放つエネルギー弾によって撃ち倒されていた。

 ドミネーターからの攻撃もあり3回当たればゲームオーバーなのだがまず当たらない上に狙いをつける優先順位が的確すぎるせいで現れたドミネーターが対して攻撃行動も取れずなぎ倒されていく。


10ステージあるシミュレーションをすべてクリア。

オールクリアした場合、クリアタイムによりスコアが加算されるのだがそのスコアはGNCエースパイロットたちの記録を軒並み抜いていた。


「……す、すごい」


 夢にも見なかったその少女のリザルトにGNCのスタッフも目を丸くしていた。

 スコアランキングのトップにNeroNeroの名前で堂々登場。


「1回攻撃あたっちゃったぁ」


「おいおい、てっぺん取ってくれちゃってまあ……目立ってしゃあないわ」


「じゃあしどぉが塗り替えたらぁ?」


ふふんと胸を張り、その大きな二つの膨らみを突き出したネロに対しヒナキはため息を付く。


「やれやれ……安い挑発だなぁ、ネロさんよ。俺は心は子供だからだからムキになっちゃうぜ?」


 ガキをちょいとわからせてやるかとヒナキもそのアクティビティをプレイすることに。

 デバイスを装着してプレイスタート。


 数分後……。


「はぁーっ!? ずっこしたでしょお!」


「してねぇよ。まあこれが歩兵としての経験の差かな、へっへー」


 アクティビティをプレイし終わり、ネロが納得していない様子でヒナキに突っかかっているが頭をぽんぽんと叩くとおとなしくなり、ブースを出ていくヒナキの後ろをとことことついていった。

 休憩も終わりに近づき持ち場に戻る道中もネロは不満げそうだ。


「なんだったんでしょあの二人……」


 ランキングトップだったNeroNeroを抑え、ヒナキングが1.2倍ほどのスコア差をつけて1位に君臨していた。

 そのスコアボードを見ながらスタッフは度肝を抜かれた様子で立ちすくんでいて……。


「はぁ!? おい、俺らの記録抜かれてんじゃん! 誰だよヒナキングって!」


「あ、伊庭少尉。さっききた女の子と黒い仮面つけた人たちが塗り替えていきましたよ」


「黒い仮面……?」


 黒い仮面をつけたおかしなヤツなんて一人しか思い当たらない。

 自分が死体漁りだと罵った、結月少尉に話しかけられていたあの男である。


「ふざけんなボケが。まってろ今すぐ捲くってやるよ!」


「伊庭君……止めときなよ休憩もう終わっちゃうよ……」


「黙ってろシトリ!」


「うぅ……RB……」


「ファッ○。めんどくせェからやらせとけ。休憩終わっから俺ァ持ち場に戻るぜ、嫉妬バカによろしくなァ」


 たまたまこのブースに立ち寄ったGNCのエースがそのスコアボードを見ていきり立ち、プレイし始めた。

 そんなブースに全く興味のなかったRB軍曹は呆れながら持ち場に戻ると言い外に出たが、外に出た途端女性の黄色い嬌声が響き渡る。

 

「うぜェ……」


「RB……どこいっても人気だよね……」

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