第2話

 あれから十六年が経過した。

 佐渡那智はカタギの世界にはいなかった。那智は、その面が割れているわけではないが、詐欺師として裏の世界では有名であった。しかしとしての那智は、非常に有名であり、裏の世界ではよく依頼が来ていた。

 詐欺師の言葉を信じるべきではない。誰でも理解できることだが、しかし問題は詐欺師は自身を詐欺師と称さないところにある。自身を詐欺師と形容して、一体誰が騙されるであろうか。

「おいAさんよ。ヒデさんが、すげぇお前のことを褒めてたぜ。『あいつは信頼できる』ってな」

 金髪ベリーショートに、主張が激し目の柄Tシャツ。いかにもって感じが、この男からは漂っていた。

「そいつはどうも。しかし俺は誰かから称賛されたいわけではない。ただ金がほしいだけだ」

 Aと呼ばれた男は、そっけなく答えた。フードを深く被り、視線は下の方を向いている。半グレともあまり目を合わせようとしない。

「まあ、そう連れない感じで言うな。せっかく褒められているんだ。そこは素直に喜んでいいと思うぜ」

 半グレは軽くAの肩を叩き、そのままその場を後にした。別れ際、Aのポケットに茶封筒を入れることだけは、毎回忘れない。

この繁華街は、とても華やかに見える。道ゆく人、皆が輝いているように見える。しかし、光がはっきりとあるからこそ、その闇の部分は深く暗い。

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