しかし、それでも救われない
Sui
第1話
「やめて! 痛い! 痛いから! 」
「誰がお前みたいなブスの言うこと聞いてやるかよ! 」
この河川敷はもとより人通りが少ない。加えて、ここはその河川を渡る通行橋の下。「人目につかない場所」を特集した媒体にでも掲載されそうだ。
「ほんま、なんで俺様がお前みたいなブスに告白したんやろか? ほんまに気の迷いやったわ」
そんな灰田の初めての挫折は失恋であった。
「お願いやめて! 触らないで! 」
「お前みたいなブスが俺様に指図していいと思ってんのか? ああ? 」
灰田の高圧的な態度は、何も今に始まったことではない。
とある田舎、とある河川敷で、この世の誰も望まない出来事が行われていた。ただ一人、灰田を除いては。
「いた! いたぞ! 早く来い
那智はゆあなを見つけるなり、ものすごい速度で河川敷の上から斜面を駆け出した。けして安定しているとはいえない斜面を、それでも那智はものすごい勢いで駆け降りた。そして、灰田が反応する暇も与えずに体当たりをする。灰田は数メートル、綺麗に吹っ飛んだ。
「灰田お前、何しやがる! 」
衝撃に備える用意もしていなかった灰田は、突然の衝撃に耐えられなかった。地面に打ち付けられ、そのままうつ伏せのままになっている。
那智は未だ動かない灰田に近き、追い討ちをかける。腹を思い切り蹴り上げる。それも一発どころではなく、何発も。
「ゆあな大丈夫か? ゆあな! ゆあな! 」
遅れて到着した碧斗は即座にゆあなに近づいた。意識はあるようだが、しっかりとした反応を返せない。目は
「おい灰田! なんとか言えよ! 」
灰田の体は、至る所に怪我が見えた。
「なんだ……、佐渡かよ。てことは、連れの……、木偶の坊の碧斗ちゃんもいるわけか」
そう言いながら、灰田は視線だけを動かして、周囲を確認した。
「てめえ、ゆあなに何をしやがった? 」
那智はかがみ込み、灰田の髪の毛をつかみ、頭を無理やり上げて聞いた。
「何って……? そんなもん……、決まってるんじゃねぇかよ……」
灰田は食い気味に、視線を那智に合わせて「なあ? 」とだけ言った。
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