第16話 知らない人から物?をもらった。

 俺はそれからも、幽霊やゾンビ系のモンスターと戦っていた。

 中には、魔法を使うやつがいたが、反射シールドとホーリーレイは、無敵だった。


「ふっふっふ。俺は強いと言って良いのじゃあ、ないだろうか」

 一人でいるため、独り言がだんだんと大きくなる。


 そんな心の声を垂れ流して、浮かれていた時。


 そいつはやって来た。

 着物と袴。烏帽子をかぶり、どこかの囲碁好きな少年に憑りついた幽霊の様だ。


 指を立て、妙な動きをさせているのは良いが、こいつが現れたときから、無茶苦茶空気が重い。息がしにくい。

 こいつは一体、何者だ?


 考えてもわからんが、

「まあここに現れるのは、すべて敵だろう」

 そう思い、反射シールドを展開して、駆け出す。


 シールドは持つのが面倒で、俺の前というか、思った所へ自由に展開できるようにした。


 そう言ってしまえば格好が良いが、実は暇つぶしがてら、シールドを全身甲冑にしようとして、練習と改良をしていた。

 その時、当然ながら全身に創るためには、各部位に展開するのが必須条件となる。

 結果として、思った所へシールド装備ができるようになった。


 今では形を変えて、変身ヒーローや、ロボットのコスもシールドで組める。

 ただまあ、白く光る状態なので、素組み(すぐみ)モデルの感じだけどね。


 かなりの時間をかけて遊んだはずだが、喉も乾かなければ腹も減らない。相変わらず、ここでの時間の流れはよくわからない。


 それはさておき、それを装備して突っ込むと、相手にあたる前になぜか「キュイィーン…… ピーン」という変な音がして、俺のシールドが壊れた? 消えた。


 何だこりゃ。

 すると、奴が「はっ」とか「かっ」とか言った瞬間に、周りの地面から触手? いや何かで編まれたロープが出てきた。

 黒いが、あれ髪の毛か?


「うえぇ。気持ち悪る」

 反射シールド改造版、反射ソードを装備する。


 俺に取りつき巻き付こうとする髪の毛ロープを切り、そのついでに燃やしていく。

 髪の毛を焼くと、臭いかと思ったが、においはしない。

 何か、術的な物なのか?


 さすがにこの忙しい状況で、翼をはやして遊んでいられないので、少し離れたところに月の様に光の玉を浮かべ、ホーリーレイのブラスタータイプをあいつに向けて撃ちだす。最初は放熱板方式のコの字型や円錐を作ったが、その形の精神感応型武器はだめだと天啓が来てやめた。


 

 それはさておき、攻撃を加えると、なぜかその瞬間に風が起こり、枯れ葉が舞い散る。枯れ葉なんて何処に有ったんだ?

 だが、そんなもので、抑えられるはずが……。

 ……そうですか。

 なぜか枯葉は、緑色に復活して、そこら辺の壁を削り始める。


 相手の技だが、渦巻く風に対して炎を上乗せする。

 さすがに、葉っぱは燃えて行った。


 火に対しては、弱いのか。

 俺はそう思い、ガンガンに炎をつぎ込んでいく。

 回っていた渦が消えた瞬間、俺の後ろで気配が膨らむ。


 首筋にざわっとした感じがして、とっさに張ったシールドで何かを反射した。

「キーン」

 という金属音をたて、はじけたのは前足の爪? 俺の背後に見慣れないサイズの蜘蛛さんが、やあという感じで前足を上げ、容赦なく硬そうな爪の付いた足を振り下ろす。

 まあそのたびに、俺のシールド当たると簡単にはじき返されているが。

 困ったな。さっきの奴が変化をしたわけではなく、仲間を呼んだのか。


「ずるいぞ。正々堂々とだな1対1で戦えないのかぁ」

 と叫びながら、考える。シールドが効くならこれも効くだろ。

 さっきのお月様バージョンホーリーレイのブラスタータイプを、腹の下から食らわす。



「ギッ」

 と言って、なぜか燃えた。


「なんだ? 作り物か」


 そんなことを、悠長に考えさせてくれず、犬の首だけが飛び回り襲ってくる。

 まあ、あっという間に燃えたけれど。


「うーん手が無いな」

 よく見る、あれをやってみるか。

 シールドを尖らせて飛ばし、その後ろに攻撃用の光の玉を並べて飛ばす。

 相手は、フンこんなものという感じで、持っていた扇(おうぎ)でシールドは軽く弾き飛ばす。

 その瞬間。シールドの後ろにくっついて飛んでいた、光の玉から収束型の光が発射される。


 虚を突かれ、さすがに慌てたようで、扇を開いて止めようとしたが、無理だったようだ。

 俺は勝ちを確信して、腕を組みセリフを吐く。

「ふっ、そんなもの。私を甘く煮るでない」

 うん? 言った後、違和感に気が付いた。

 あああっ。

 煮るでないってなんだよ。見るだろう。


 言いなれないことを言って自爆し、一人で自分に突っ込んでいると、あいつは体に開いた大穴から青白い炎を出して燃えて行った。

 何だったんだあいつ?


 さて、証言者はもういない。重大な秘密は守られた。


 気を取り直して奥へ行こうかと思ったら、ポンという感じでまた復活しやがった。シールドを展開する。

「いや、まあ待って。綾織が面白そうなことをしていたから、ちょっと来てみただけだから」

 そんなことをおっしゃる。怪しい平安コスの人。

「綾織の知り合い? でもがっつりと攻撃してきましたよね」

「そりゃこんな面白い事。介入するだろう。現世はどのくらい振りか忘れたけれど最近は面白いね。浄化の光であんなことができるなんて、私でも知らなかったよ。勉強になった。君にお礼として力? いや業(わざ)だな分けてあげよう」


 そう言って、いくつかの光が俺のシールドを通り抜けて、胸へと吸い込まれていった。式と空間? もう一つは感応?

「あんまり変なものまで与えちゃうと、綾織に叱られるから、戦闘と封印それと補助になるかな? 君なら面白い使い方を考えるかもしれないね。楽しみにしておくよ。 そうだ僕は、晴明(はるあき)というんだ君は?」

「山瀬和也。一応、綾織の弟子かな」


「分かった。繋がりは作ったから、困ったら呼んでね。僕も退屈だし。それじゃあ」

 そう言って、消えて行った。

「変な奴」

 そう言って俺も、歩きはじめる。

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