第17話 修行の終了
奥へ進みながら、貰ったものを試す。
まずは、分かりやすい感応から。
意識すると、文字通り色んなものを感じられる。
出てくる奴のなんとなくの強さ、相対的な距離。
試しに、感じるところへ光の玉を投げる。
やはり、よけた。
まあ緩いからな。
よけた後、怒ったのかこっちに向かってくる。
さっき行き過ぎた玉を操作して、後ろからぶつける。
モンスターは消滅した。
今までは目で見える範囲のみで、意識が外れると操作ができなかったが、4つくらいまでならバラバラにでも操作できる。
ただ、頭が壊れそう。
すごく頭痛がひどい。
光の玉を解除する。
次は、式? 式ってなんだよ。
うーむ。ああ分かった。
なんでもいいから物質を持ってきて、それをコアとして簡単な制御式を記述する。
そのコアを収めた土人形とかを使って、指定した作業が行える。
命令式も、細かに書くのもできるが命令セットを作っておいて条件分離で分岐実行ができる。
色々な決まりごとの基礎情報と動作方法を決めて、色々な種類かな?に投げる。
それで制御できる。
たとえば音を周辺に出しながら、進んでいく。
壁に当たって音が返ってくる時間を、右と左で引き算して0なら正常。
もし敵が左に現れた場合、右から左を引いた結果が0ではなくて+の数字になるならば左側に敵。まあそんな感じでざっくり組めばいいようだ。
六芒星の真ん中に、基礎情報。
動作方法はとんがり部分だから6個だよな。
げっ属性ごとに一個か、しょぼい。さっきの蜘蛛は一体どうやって制御していたんだ? 頭に何となく使い方は湧いてくるが、かなり難しい。
積層構造とか、魔方陣ごとの共通化された補助機能の物を作れば、大丈夫なのか。ふむふむ。
大きな物なら、各部分部分に魔方陣をコア化して、それに対して共通の言葉を指示の入り口として仮の器指定すれば、『い』と『ろ』という器に命令が来れば、口から何かを吐くという命令だが、『い』に指定された動作が終わらないと『は』に信号が来ないようにしておく。
一つでは足を踏ん張り、もう一つでは鋏角(きょうかく)と呼ばれる口の前にある牙状の部分が開く。そこで『ろ』の部分に入っていた制限つまり先ほどの準備ができたという状態になり『は』に信号が入る。
すると、やっと糸や火を吐くことができる。
この吐く物は、属性で指定か。
まあ何とかなるか? 多分。
さてとやっと、空間だな。
綾織に馬鹿にされたが、亜空間収納庫を作ってやる。
俺は意気込んで、貰った能力から情報を読み取る。
いきなり、空間とはなんだという点で引っかかる。
頭に浮かんでくるのは、漠然とした概念なんだよ。
連続した同一条件を持った時空? だから、それはなんだよ。
そこを説明してくれ。
あーでも、そうか。
ある一定法則に従った空間。
ここにいて、周りを見る。
見るのは、目が物に当って反射した光の周波数をとらえて、脳が色として認識をしている。
つまり、人間が理解できる状態を、空間として認識しているだけだ。
空気は、そこにあるのに光を透過するから見えない。
洞窟内は、光が無いから物があっても見られない。
まあ今はなぜか見えるが。
白黒じゃないから、目から赤外線のような、単一周波数のビームを出しているわけじゃなさそうだ。
周りに、ホーリーレイをまき散らし、集まって来ていた幽霊もどきを霧散させる。
考えているときに、邪魔をするなよ。
ええと、まあ難しく考えず、この連続を切ればいいんだよな。
そう言って、俺はいろいろ試した結果、空間切断を覚えた。
その後、空間と空間をつなぎ直そうとしたら、空間内での置き換えつまり、テレポート? つまりなぜか、転移ができるようになった。
これは戦闘時に、有効。
相手の後ろに、ひょいと移動ができる。
俺はここじゃなく、今あそこにいると考えただけでできた。
自分でもびっくりした。
そんないい加減な力を試行錯誤する。
今ある条件は存在せず、時間が停止して大きさの概念が無い所。
ついでに、中にある物は理解できるという都合のいい世界。
などというものを、創造する。
うん。目の前に黒い球ができた。
石を放り込む。
頭の中に、石が絵として見える。
手を突っ込んで、頭に浮かんできた石をつかむ。
いけるな。
石をもう一度放り込み。
空間を閉じる。
頭から、石の絵が消えた。
もう一度、開いてみる。
その瞬間に、石の絵が頭に浮かぶ。
取り出してみる。
そんなバカなことを繰り返して、自由に使えるようになった。
最初のうちは、イメージを明確にして開くのに10分以上かかったから、だいぶ慣れた。
よし、俺はチートを手に入れた。そう言ってもいいだろう。
ありがとう、はるあきさん。
おれは、検証が終わったから、あの青い温泉にしてはぬるい泉をイメージして飛んでみた。
目の前に広がるのは。
青い泉と、綾織たち3人が真っ裸で浸かっている景色。
俺が現れた瞬間、みんなが固まる。
一人いないな? 翔太は、ああ石の仕切りの向こうか。
いつの間にか、泉に仕切りができていた。
まあ、綾織たち3人なら良いか。
俺は服を収納して、ざっとかけ流して泉に浸かる。
やはりぬるい、水に干渉をして少し温度を上げる。
固まっていたようだが、綾織たち3人が復活したようだ。
「なんでお前が、こっちに居る。修業はどうした。それにどうやってこっちへ」
ちょっと考えて、
「向こうにいるの飽きたから。こっちへジャンプした」
そう言うと、綾織がいきなり立ち上がり、ざぶざぶと近づいて来る。
「ぬっ。誰に何を貰った?」
綾織の目が厳しくなる。
そんな目で見られると、なんだかぞくぞくするな。
「はるあきという奴に、空間と式。感応を貰った」
「あ奴か、また勝手にわしの領域へ入って来おって。まあいい。力も理解したという事じゃな」
「ああ、何となくだけどね」
「器が足りなくなりそうじゃな。もう少し、神水を飲んでおけ」
「わかった」
そう言って、水をすくい飲もうとしたら、
「お兄ちゃんの変態」
という声が聞こえた。
見ると、紬と紗莉が神水の影響か色々育っていた。
なぜか真っ赤になってプルプルしている。
驚いたことに紗莉が、普通の女の子になっていた。
「そうか、まだ成長するんだ、良かったな」
とつい紗莉に言ってしまった。
「えっ。あっありがと」
そう言って、真っ赤な顔がさらに赤くなった。
そんなことを言いながら、俺は変態という言葉は無視して神水を飲む。
綾織が、
「どうじゃ。わしらの出汁が出てるからうまかろう」
と言って、笑いやがった。
ああさっき言っていた、お兄ちゃんの変態はそう言うことか。
向こう側とは、仕切られているから、翔太の出汁は入っていないだろう。
なら問題ないな。
「みんなも飲んだのか?」
「たわけ。こやつらは、まだそこまで行っておらん。皮膚からなじませ器を広げている最中だ。お前の様にいきなり飲めば、普通は耐え切れず死んでしまう」
紗莉をさっき褒めたせいか、綾織が、胸を見せびらかすように腕組みをする。
そんな意図は見えるが、俺は無視をして、
「そうなんだ」
とだけ答える。
「もう少しと思ったが、もう今回は終わりにするか」
綾織が呆れたようにつぶやく。
「服を着ろ。上に送る」
紬と紗莉は面白いことに、泉から出ると縮んだ。
面白いと思ってみていたら、
「さすがに、恥ずかしいから見ないで」
と二人に言われてしまった。
紗莉はともかく、紬は向こうの家の時には、パンツ1枚で歩きまわっていただろう。今更なんだよ?
お年頃か?
「忘れ物は無いな。行くぞ」
綾織がそう言って、みんな送ってもらったはずだが、俺は泉のそばに取り残されていた。
そして、帰って来た綾織に、いつものように捕まる。
帰ったのは1時間後だった。
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