第7話 魔法? 習得と修行の終わり。
一通り練習して、歩き始める。
火の玉は出せたが、飛ばすと消える。
もっと、先まで。
ばあさんが言うには、きっちり、現象を形として制御しろとの事だ。
火はどうやって燃え。それが飛んで行き、当たった時。
どういう現象を起こす。
そこまで、考える必要があるようだ。
「もっと簡単に、呪文を唱えたら勝手に発動するのじゃないのかよ?」
ぶちぶちと、文句を言っていると、
〈それならそれで、決まり事を作る仕組みが必要じゃろうが〉
そんな答えを返して来る。
「決まり事? 魔法陣とかそう言う物か」
魔法陣と言うのが、分からなかったのか、人をじっと見ている。
〈ふむ。それも一つの方法じゃな〉
やっぱり、心を読まれている?
ばあさん小鬼は、興味を無くしたのか、前を向いて歩きだす。
赤鬼さんと青鬼さんのペアは、あれ以来出てこない。
あの時が例外だったようだ。
1匹なら倒せる。
そう思っていた時もありました。
突然、足元に打ち込まれる電撃。
黄色鬼さん登場。
こいつも、両手から魔法を出して来る。
片手なら、方向を見ればいいが、避けた先を狙うようにもう片方が狙ってくる。
しかも、発動を見てからだと遅い。
掠(かす)っただけで、叩かれたような痛みとやけど。その後も当たった腕や足がだるくなり力が抜ける。
地面に手をつき、氷の柱を創る。
その陰に隠れながら距離を詰め、触れた瞬間。燃えろと念じる。
うまくいったのか、口や鼻から煙が上がる。
〈それも一つの手じゃな。こずるい手じゃが〉
そう言って笑いやがった。
俺だって、遠距離から強力な奴をあてて倒したいよ。
幾度か、戦闘を繰り返し飽きてきたころ、火の球を創って投げるようにすると意外とイメージがやり易いことに気が付く。
これならば、子供のころからやって来た。
野球や…… えーとサッカーは違うな。まあそれで培った俺のコントロールを見よ。
くっ。スピードが遅くて逃げられる。
リアル鬼ごっこだが、鬼が逃げる。
あーちくしょう。
両手に、大きめの火の玉を創り投げるふりをしたあと、握ったまま顔へくらわす。
どうだ、もう一丁。
苦しそうに、藻掻いているところへ、胸に向けこぶしを落とす。
「うーん。火の球はだめだ。槍にしよう」
炎の槍を作り振ってみる。手だけが振られて槍は消える。
炎でもわずかな重みはあるんだが、固体ではないため、振る形に合わせ移動させる必要がある。これは球の時でも同じだったはずなのだが、はて?
土を錬成して、槍を作る。
握って投げる。
鬼に刺さる。
鬼が死ぬ。
氷を槍に錬成。
握って投げる。
鬼に刺さる。
鬼が死ぬ。
「うーむ」
炎を槍に錬成。
握って投げる。
鬼に刺さる。
カハッとか言って、口から炎を吐いて鬼が死ぬ。
「あれ? いけた。なんで」
また繰り返すと、いけた。
炎の槍をどんどん創って投げる。
そのうち投げなくても飛んでいくようになり、周りに3つから調子がいいと4つ待機させて撃ちだす事ができるようになった。
おっ黄色鬼君か、さっきはよくもやってくれたな。
完全に違う個体だが、俺にとっては同じ。
行け。
飛んでいく炎の槍が、バシバシと雷をあてられて途中で霧散する。
「このおっ」
雷でやってみた。
さすがに、幾度も見せられた雷。
俺の作った方も同じ勢いで飛んでいくが、ぺしっとはじかれた。
ええい。雷の後ろに氷の槍。
どうだ、間際で気が付いたが、影響を受けにくいらしくそのまま刺さった。
追加で、刺していく。
3本目で消えて行った。
魔法の水が純水なら、導電性はないだろうが、雷は電圧が高いからな。
それなら、金属の間を氷で埋めればコンデンサ魔法が作れるのか?
いやどう考えても、雷を直接撃ち込んだ方が強力だな。
ああいかん。頭が馬鹿になっている。
そんなこんなで、気が付けば基本的な属性はマスターした。
多分。
空間魔法については、連続体つまり壁を破るのがそうならできた。
ただあっちと、こっちを繋げるとか、亜空間収納庫は扱えなかった。
ばあさんに言わせると、
〈別の宇宙を、己の作った空間に創るなぞ。創造神様の御業以外の何物でもない〉
そう言ってあきれられた。
そう言った後に、
〈じゃあ死合ってみるか〉
そう言って、おばあさんは美人なお姉さんに変化する。
「お姉さんお名前は?」
つい反射的に聞いてしまう男の性。
「綾織(あやおり)と呼ばれていたが、昔の話。さあ殺(や)ろう」
そう言った瞬間消えた。
だがわかる。右に向かい火球を置く。
足を踏み下ろして、地へと意思を伝える。
50cm先の地面から氷の棘が生える。
その時にはすでに、後ろから風切り音と、こぶしが俺の頭があった所を抜けていく。
俺は一瞬沈みこませた体を、持ち上げつつ、頭上を通り抜ける手首をつかむ。
そのままつかんだ手首を引き下ろしながら、体をさらに持ち上げる。
頭の後ろにふにょんという感触を期待するが、来たのは背中への無慈悲な膝の感触。
「ぐはっ」
一瞬海老反り、顔から地面に、行くかぁい。
両手を地面につき倒立へ持ち込む。
天地逆さの状態で、氷の槍を30cmくらいの長さで数十本撃ちだす。
前宙して、足から立ち。
気配を探る。
回り込んだのか、また背後。
左手のひらから、拡散させた雷を放出させて。
右手のこぶしを握り締めながら、振り向く。
「あれ?」
なぜか目線を下ろした俺の胸の前に、お美しい顔が笑っている。
彼女の右手が、俺の顎を打ち抜く寸前。顎を引くが、体はすでに重心が前へと進んでいる。
やばい、とっさに左ひざを出す。
ちょうど、伸び上がるわき腹に当たったようだが、俺の方ものど輪状になった突きを食らい「ぐえっ」と声が出る。
脳を揺らされたのか、両足から一瞬力が抜ける。
重量的に俺が勝った。のど輪というダメージを俺に与えたが、俺の左膝蹴りを受けて向かって右方向へ崩れて行っている。体をねじり力なくコケて行く自分の体を生かして、左ひじを彼女のわき腹へと打ち込む。つもりでした。
彼女も、体をひねり左足で蹴って来る。
それを慌てて右手で抑えると。
足に力が入らず、そのまま押しつぶす。
「うー参ったのう。まさか負けるとは」
そう言われるが、決まり手は何だろう。
「足がまだ、動かない」
そう言ってもぞもぞすると、
「あっ」
とか
「うっ」
とか言ってくれる。
突然、
「まあ褒美か。そうかそれなら、マッサージじゃ。気の流れも調整してやる」
そう言って、奥の部屋へと引きずって行かれると、また神水の部屋。
今度は、積極的に飲まされて、動けなくなった俺は、気の調整というずいぶん大人なマッサージを受けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます