第2話 いじめと邂逅とご教示。

 川へと降りるため、一度田んぼに降りて、田んぼの外れから川へと下る道を降りる。笹が茂る脇を抜けて、岩がごつごつし始める。

 台風などが、一度来ると川の形が変わるため道は途中までしかない。



 昔来た時には、ここの少し先には、川の中に大きな岩があり。ちょっと深い淵になっていたはず。

 あの周囲は岩が大きめだから、穴を探れば何かがいるだろう。


 キャニオニングいや登りだからシャワークライミングか? 岩の縁を回り込むと、少し岩に囲まれた部屋のようになっており、少し砂たまりで草が生えているところがあった。

 そこになぜか、裸の小学生? が居て崖の上に向かって叫んでいる。


 ああ、上の子たちが、着替え用の服を盗って、嫌がらせをしているのか?

 でもなんで裸? 水着位着ていても良さそうなのに。

 俺は速やかに、上に羽織っていたパーカーを、女の子に渡すと上の女の子たちに向かって怒鳴る。


「お前たち高校生くらいだろう。こんな小さい子をいじめて何をしているんだ? 恥ずかしくないのか?」

 すると言われた、女の子たちはきょとんとして。その後笑い出した。

「確かに小さいけれど、その子同い年だから。あんたひどいこと言うね」

 そう言って笑った後、服を投げてきた。

 川に入らないように、全部キャッチする。

 タオルとか、水着が無いな? 少し不思議に思いながら女の子、いや彼女に後ろ手に渡す。

「水着とかは無いのか?」

「えーと、田んぼの縁を帰っている途中でうなぎが見えて、捕まえようかと思って川に入ったけれど。深かったから全部脱いで川に入っていたの。それを、あの子たちに見つかったらしくて服を盗られていたの」

 そう聞いたので、俺が持っていたタオルも渡す。濡れた時用に持っていたものだから少し大きめだ。


「これ使って」

 そう言って渡す。

「ありがとう」

 と言う返事。


 服を着たのか、つんつんと突かれて向き直る。

 女の子は多分152~153cmくらい。

 視線に気が付いたのか、

「助けてくれてありがとう。わたし、広瀬紗莉 16歳 あの子たちと同じ2年生」

 俺は自分の右の眉が動いたのを感じた。


「小さい子ですけど……」

 そう言って、ぼそぼそとつぶやく。まさか同級生のヌードを見て、小学生と言ったのか。俺何気にひどい?


「それであなたは?」

「ああじいさんの家がそこで、この夏に帰って来たんだ。2学期からここの高校へ転入する」

「そうなの? それで名前は?」

「ああごめん、山瀬和也。16歳。高校2年生だよ」

 そう言うと、固まるよね。さっき裸だったもの、明るいし全部見たもの。

「そう。2学期からよろしくね。教室は一つだからクラスメートだね」

「そうなんだよろしくね」

 にこやかに、でもお互いにぎこちなく挨拶をする。


 場を切り替えるために、俺は聞いてみる。

「それで、教えてくれないか」

「えっ何を?」

「うなぎ。何処に行った?」

「もう少し上流」

 分かった。そう言って岩に上がろうとしたが、

「もう帰るのか? なら上に上がるの手伝おうか?」

「普段も上がれるから大丈夫よ」

 そう言って、石垣を使って器用に上がろうとするが、岩に取りつきかなりずりずりしている。服がかなり汚れそうだ。


「下で押し上げるから」

 そう言って岩に背をあて、彼女に膝をだす。

「ええ。でもパンツ見えるし」

「すでに全部見たから、気にするな」

 そう言うと、はうっという感じで胸を押さえてうずくまる彼女。


 やがて立ち上がると

「じゃあお願い」

 と言って、右足は俺の膝の上。軽く飛び上がり左足が、俺の構えた手の上に乗る。

 俺の肩に両手でつかまり、伸び上がるから顔に胸が、当たらないな。


「いくぞ」

 そう言って、彼女の足を押し上げる。

「ひゃー」

 と言って飛んで行った。かなり軽かったな。


 俺は横の石垣を使い、岩の上に飛び上がる。

 彼女は、まだ岩の上にいて。

「面白かった。すごく飛べた」

 50cmくらい岩よりも高く飛び、両手を広げ。すちゃっと着地できたそうだ。そう言って、無邪気に喜んでくれた。そんなに飛ぶわけ無いのだが、彼女が思う気持ちの中では飛べたのだろう。当社比というやつだな。


 それから、一緒に2~3時間うなぎや蟹を捕まえて遊んだ。色々穴場やコツを教えてもらい楽しかったよ。うなぎは都合3匹。蟹は5匹ほどいた。もちろん、俺が一人で捕まえる事を良しとしてくれず彼女もいっしょに捕まえた。ちなみに、うなぎをつかんだのは彼女の方だ。岩の隙間から頭が見えた瞬間に、うなぎは数m離れた陸の上にいた。


 そんなことがあった、数週間後。

 登校日なるものがあった。

 学校へ行き、クラスで転入生ですと挨拶する。その時、見たことのある女たちの顔があった。そして、あーこいつから始まり、俺はハブられることが決定されたようだ。

 ちびっこ、広瀬紗莉もハブられていたようで、仲良くペアを組むことになった。

 まあいいけどね。


 それでまあ、気に食わなかった俺は、家で文字通り畳の上であっちへごろごろ。こっちへごろごろと転がっていると、呆れたような顔をしたじいちゃんから、暇なら掃除でもして来いと言われて、社のカギを渡された。


 社の中は、集会ができるようになっている。

 板張りの床を、備え付けの箒で床を掃き祭壇の上も上から順に払っていく。


 だが何か、埃っぽいのが気にらず、一度家に帰り新しい雑巾を持ち、バケツに水を汲んで社に戻る。

 当然祭壇から順に拭き始め、きれいにしていく。


 何か楽しくなってきて、結局大掃除を都合4時間以上していた。

 当然床も拭き掃除したよ。


 社の鍵を閉めて、外へ出る。

 なんだかやり切った感がして、すっきりした気分でお参りをする。


 そして、振り返ると、おばあさんが立っていた。

「うわあ」

 俺は、結構本気で驚いた。いつから居たんだよ。

「驚くとは失礼な奴じゃな」

「いや、振り返って人が立っていれば、びっくりするでしょう?」

 そう言うと、

「ふむ。修行不足じゃな」

 ばあさん、そう一言おっしゃる。


 その後、おばあさんは、何かふむふむもがもが言っていたが、しゃべり始めた。

「そうじゃな、これから世の中。多少騒がしくなる。その時に導き手として生きていくのがお前の定めの様だ」

「えっ。そうなんですか?」

 そう言うと。

「黙って聞け。一度しか言わん。明日。特別にお前の為。この鎮守の奥にある洞へ、道を他に先んじて開こう。そこで修業して徳を積め。奥へと向かい最後まで到達できれば。おのが人生いーじーもーどとなり、俺つえーもハーレムウハウハもやり放題になるじゃろう」

 そう言って、ばあさんは目の前で消えて行った。


 キーンという、耳鳴りと。軽い頭痛の中で俺はぼやいた。

「はっ何? ばあさん消えるときにハンドサイン間違えていたよね。あの話なら親指立てるとか。いや、ハーレムどうこう言っていたな、じゃあ中指と人差し指の間に親指を挟んでいたのは正解なのか?」

 俺はばあさんが目の前で消えたことよりも、ハンドサインのことに対してパニックを起こしながら家へと帰り着く。家の前では家族が出て大騒ぎをしていた。なぜか掃除が終わってから、4時間ほど時間が経っていて夜9時になっていた。その間に幾度も家族が社まで探しに来ていたようだ。


 何をしていた? と聞かれても、社を掃除して、その前でおばあさんとしゃべっていたとしか答えられない。

 爺さんは、神様と会ったのかとぼやいていたが、神隠しの方を危惧しているようだ。昔は結構あったらしい。狢(むじな)という言葉が出て、何かで読んだ紀国坂かと思ってしまった。

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