あなたの物語

リビング

座ってテレビを見ている母親。

スミレ、部屋から出て来る。


スミレ

「大事な話があるの。良いかな?」


母親、テレビを消す。


母親 

「何?」

スミレ

「私、高校卒業したら一人暮らしする。」

母親 

「急にどうしたの?」

スミレ

「お母さんには迷惑掛けない。これからバイトしてお金貯めるから。」

母親 

「大学は?行くのよね?」

スミレ

「お母さんの望む大学かどうか分からない。私が決めて、そこに行く。」

母親 

「何言ってるの?第一、お金はどうするの?低レベル大学に入れるお金はありません。」

スミレ

「大学は行くかどうかも分からないから。でも勉強は今まで通りする。

ちゃんと高校は卒業する。」

母親 

「はぁ?」

スミレ

「私はお母さんの望む様な子にはなれない。ごめんね。」

母親 

「はぁ?何それ?お母さんが理想を押し付けてるって言いたいの?」

スミレ

「良い大学を出て、ちょっと働いて嫁に出て、孫を見せる子が理想なんでしょ?」

母親 

「違う、違う、違うの!そんな事無い!」

スミレ

「私には無理だから。離れよう。お母さん。」

母親 

「もうお弁当作らない。バイトするなら家賃入れなさい。

ご飯だってあんたを待ったりしない。私がどれだけ良い母親か分からないの?」

スミレ

「お弁当は自分で作るよ。キッチン使われるのが嫌だったら購買で買う。

家賃は幾ら入れれば良い?ご飯も、もう無理しなくて良いよ。今までありがとう。」

母親 

「私を捨てるって言うのね。この親不孝者!」

スミレ

「どう思おうと構わないけど、お互い自由になろうよ。

お母さんも今まで私に割いて来た分、自分に使えば良いと思う。」

母親 

「あんたみたいな奴なんか、絶対出来る訳ないです。無理です。泣きついて来たって知りません。」

スミレ

「今までありがとう。」


スミレ、部屋に戻る。



スミレの部屋

扉越しに、ずっと喚き声が聞こえる。

スミレ、自分の「あなたの物語」を開く。

破いたページの先から書き始める。


『カスミへ。

ずっと、「さん」付けで、ごめんなさい。

でも、もうそんな自分は捨てました。

これからは、あなたに面白がってもらえる様な人生を送ろうと思います。

どんどん書くから、ちゃんと読んでね。

もし、どんなワガママでも許されるなら……

もっと沢山話したかった。

屋上だけじゃなくて、色んな所に行きたかった。

2人の思い出をもっと増やしたかった。

クールで格好良いあなたが大好きです。

あなたが拾ってくれた人生を大事に生きていきます。

ありがとう。

スミレ。』




教室

スミレ、友達①・②がお昼ご飯を食べている。

スミレ、購買のパンを食べている。


友達①

「あれ?今日はお弁当じゃないの?」

スミレ

「お母さんが大変だから、今日から購買にする事にしたんだぁ。」

友達②

「やっぱ、小金持ちは違いますなぁ。」

スミレ

「これからは定期もやり繰りするから大変だよぉ〜。」

友達①

「頑張れー。」


楽しそうに話す3人。

スミレの笑顔。


(終わり)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君に紡ぐ春。 @yuzu_dora

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る