がん
昼
教室
スミレと友達①・②がお昼ご飯を食べている。
友達②
「今日、どした〜?」
友達①
「具合悪かった?」
スミレ
「うん……。ちょっとね。」
スミレ、お弁当を開ける。
友達①
「今日も美味しそうだね!」
友達②
「確かに!」
スミレ
「まぁ、実際、美味しいし……うん。」
友達①
「いーなー。」
友達②
「美人で優しいお母さんってサイコーじゃない?」
スミレ
「……まーねー。」
スミレ、笑う。
スミレの部屋
ノックの音が鳴り響く。
スミレはイヤホンをしてベットに転がっている。
母親の声
「あんた!今日、お昼から学校来たってどう言う事なの?」
「学校から連絡来たんだよ!恥ずかしくて外歩けなかったじゃない。」
「これで成績下がったらどうするの!?」
「低レベル大学なんて、お母さん、許さないから!」
「出て来なさい!出て来い!」
暫く続く。
喚き声の後、静かになる。
スミレ、イヤホンを外す。
遠くで缶を潰す音が聞こえる。
屋上
カスミが本を読んでいる。
スミレが隣に座る。
カスミ
「やぁ。」
スミレ
「あの、これ……。」
スミレ、「あなたの物語」を返そうとする。
カスミ
「私には要らなくなったから、あげるよ。」
スミレ
「でも、何も書けないよ。」
カスミ
「今の辛い事を他人事にして書けば良いよ。」
スミレ
「……。」
カスミ
「作家気分で書くと吹っ切れるかもよ。」
スミレ
「……でもなぁ。」
カスミ
「がんは小さい内に取り除かないと自分がダメになるよ。」
スミレ
「……。」
カスミ
「ある程度溜まってスッキリ出来たら、私に読ませて。」
カスミ去る。
スミレ
「ちょっと……。」
スミレだけが残った空間。
スミレ、「あなたの物語」を少しだけ書いてみる。
スミレの家
リビング
昨日の事が無かったかの様に料理をしている母親。
母親
「今日はスミレの好きな唐揚げにしたから。昨日はビックリしちゃった。
具合悪いなら無理しなくて良いのよ。」
スミレ
「……。」
スミレの部屋
一心不乱に「あなたの物語」を書くスミレ。
書き切るとスッキリした表情。
そのまま眠りにつく。
朝
普通に起きるスミレ。
ホッとする。
屋上
楽しそうにやって来るスミレ。
カスミは本を読んでいる。
スミレ
「カスミさん、聞いて!」
カスミ
「何?」
スミレ
「昨日の事書いたらスッキリしたの。魔法みたい!ありがとう!」
カスミ
「なら良かった。」
暫くの沈黙。
スミレ
「……ねえ、カスミさんのもあるんでしょ、これ。」
カスミ
「あるよ。」
スミレ
「今度、見せて。」
カスミ
「私のは昔話だし、つまらないと思うよ。」
スミレ
「書いてみたら、その、読みたくなって……。」
カスミ
「分かった。じゃあ、交換しよっか。」
スミレ
「……うん!」
スミレの「あなたの物語」を書く日々が続く。
大体、同じ。
昼
教室
スミレと友達①・②がお昼ご飯を食べている。
友達②
「最近、スミレ、明るくなったね。」
スミレ
「え?そう?」
友達①
「うんうん!何か憑き物が取れた感じ!」
スミレ
「私、そんなに暗かった?」
友達②
「暗いと言うか心ここに在らずと言うか……。」
友達①
「激疲れぇ〜。って感じだったよね。」
友達②
「そうそう!」
友達①
「だから、この間おばさんに会った時、具合悪くても学校に来るなんて凄いって
言っておいた!」
スミレ
「……そうだったんだ。」
友達②
「スミレが元気になったお祝いに今日パフェ行かない?」
スミレ
「私、入院してたみたいじゃん!」
友達①
「単にダイエットの言い訳したいだけだよ。」
友達②
「バレたか〜。」
スミレ
「良いよ、行こっ!」
楽しそうに話す3人。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます