3. Zhj. 29. 1421 (Mar.14.2001). バーミヤーン

アッラーは偉大なりアッラーフ・アクバル


 そのかけ声と共に、バーミヤーンの磨崖仏並びに石窟寺院が爆発される映像が世界中に発進された。

 ソ連侵攻を除けた後もムジャーヒディーン等による内戦で酷く傷ついていたこの大日如来立像と釈迦如来立像はターリバーンの「思想浄化」の為に完全に破壊されてしまった。


 この世界遺産の破壊は世界、特に西欧諸国に大きな衝撃を与えた。

 だが、それは同時に、文化財破壊と言う行為が、それまで数百万人ものアフガニスタンの人々が飢えや戦乱に苦しめられているとの報道以上の「宣伝効果」を発揮してしまった事を示すことでもあった。


 この矛盾に対し モフセン・マフマルバフは次のように宣べている。


「私は、ヘラートの町の外れで、2万人もの男女や子供が、飢えで死んでいくのを目の当たりにした。彼らはもはや歩く気力もなく、皆が地面に倒れて、ただ死を待つだけだった。この大量死の原因は、アフガニスタンの最近の旱魃である。

 同じ日に、国連の難民高等弁務官である日本人女性(緒方貞子)もこの2万人のもとを訪れ、世界は彼らの為に手を尽くすと約束した。3ヵ月後、この女性がアフガニスタンで餓死に直面している人々の数は、100万人だと言うのを私は聞いた。

 ついに私は、仏像は、誰が破壊したのでもないという結論に達した。仏像は、恥辱の為に崩れ落ちたのだ。アフガニスタンの虐げられた人々に対し、世界がここまで無関心であることを恥じ、自らの偉大さなど何の足しにもならないと知って砕けたのだ」


 戦乱に破壊されたオアシスの土地。

 荒野同様、人心も荒れる。

 人心荒れたからこそ荒野になったのか。


 世尊は何の故に世に出現したまうか――?

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廃仏建立 @Pz5

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