59 噛みたい
ブラウスのボタンに手をかけて、一つずつ開けて行く。
「
でも、その力は弱々しい。
力比べをしたら、わたしは凛莉ちゃんに敵わないはずなのに。
凛莉ちゃんは口では嫌だと言いつつも、どこか迷っている。
それはわたしに罪悪感を抱いているからだと思う。
「手、放して」
わたしは出来るだけ冷たく言い放つ。
そうすれば凛莉ちゃんが言う事を聞くと思ったからだ。
「どうしたの涼奈、いつもと違う」
いつもと違うようにさせたのは誰なのか。
この期に及んで、まだそんなことも分かっていないのだから思い知らせてあげないと。
「凛莉ちゃん、わたし怒ってるんだよ」
「それは分かったから、分かったから謝ったじゃん」
「許さない」
「涼奈……」
こんな言い回しで、いつもわたしを従わせてきたのは凛莉ちゃんの方だ。
だから自分だって同じようにされても文句は言えない。
因果応報、過去の行いは自分に帰ってくるんだ。
「許して欲しかったら、手どけて」
「……」
念を押すと、凛莉ちゃんは素直に手をどけた。
もう邪魔は入らない。
わたしはブラウスのボタンを全部開ける。
白い下着と、それに包まれる丸い膨らみが露わになる。
凛莉ちゃんはヒロインの中でも一番胸が大きい。
そのせいか知らないけど、イベントの一枚絵では妙に胸を強調したものが多かった。
無駄に情欲を掻き立てるようなその煽情的な演出は、少し下品だと思っていた。
けれど、こうして実際に見てみると……。
「綺麗だね」
「ちょっと、どこ見て言ってんの」
分かってるくせに。
凛莉ちゃんは頬を染めていた。
更に視線を下ろすと、スカートがはだけている。
太ももの付け根まで見えてしまいそうだった。
――ひたっ
と、その剥き出しの足に触れる。
太ももの前面から内側を、撫でるように手を這わせた。
「どこ触って……」
滑らかな肌の質感と、指先が沈み込んでいく肉感。
綺麗なのに、いやらしい。
こんな足をいつも剥き出しにしているなんて、凛莉ちゃんはどうかしている。
「ねえ、凛莉ちゃんは何でいつもスカート短いの?」
「は、はあ?別に、短い方がかわいいくらいの意味しかないって」
こんな魅力的な体をしていて、大した意味なく衆目に晒す。
無自覚に、わたしの視線を釘付けにする凛莉ちゃん。
そればかりか、今日はその言葉でわたしの心をかき乱した。
許しがたい。
こんな子には罰を与えないと。
そうしないと、わたしの心はバランスが保てない。
「も、もういいでしょ……?」
凛莉ちゃんは許しを乞うような声を上げる。
いいわけがない。
こんなことをしておいて、わたしが許すわけにはいかない。
「凛莉ちゃん、まだ何も始まってないから。そのまま動かないでよ」
「あ、ちょっ、涼奈っ……」
わたしは凛莉ちゃんの首筋に舌を這わせる。
すーっと通っていく舌先の感覚を感じながら、凛莉ちゃんを舐める。
「まじ、やばいって」
なにがヤバいのか。
今までこういうことをさせてきたのは凛莉ちゃんの方だ。
わたしにこういうことを要求してきたんだから、今更止めるのはおかしい。
だから、まだ止めない。
そのまま舌先を下へと這わせていくと、柔らかい弾力に変わっていく。
白い布に包まれた膨らみの部分が、わたしの鼻先をついた。
「涼奈、ほんと、そこら辺で……」
それ以上はやめてと、凛莉ちゃんの手がわたしの頭に触れる。
でも、わたしは凛莉ちゃんの腕を振り払う。
「凛莉ちゃん、邪魔」
「でも、そこはヤバイって……」
「なにがヤバいの?」
「言わなくても、分かるじゃん」
わたしは胸元の膨らみ、谷間を舐めているだけ。
その先にも触れていないし、下着だってつけたままだ。
「涼奈、何でいきなりこんなことするの?」
「なんで……?」
そんなの凛莉ちゃんにムカついたからだ。
今までわたしのことを気にしてくれていたのに、急に試すようなことをしてきたら。
どっか行っちゃうんじゃないかって不安になる。
もし進藤くんのことを好きだったら、わたしと離れるってことなんだから。
そんなのつまらない。
だからわたしはもう一度、凛莉ちゃんの胸元に顔を埋める。
「まだ続けるの?」
一人取り残されるのはもう嫌だ。
だから、どこにも行けないように印をつければいいと思った。
この柔らかい部分は、そんな印をつけるのにちょうどいい
わたしは凛莉ちゃんの胸に、歯を立てて軽くかじる。
嚙み千切りたくなるような柔らかい感触だった。
「いたっ……涼奈、痛いって……」
凛莉ちゃんの痛がる声。
聞いたことのない声が聞けて、嬉しい。
わたしが与えたものが凛莉ちゃんを変えているんだと分かるから。
その声を聞いて、顔を上げる。
白い胸は、わたしが噛んだ跡で少しだけ赤くなっていた。
「なにコレ……意味、わかんないんだけど」
「こうすれば、凛莉ちゃんも反省するでしょ」
「こんな反省の仕方、聞いたことないし」
噛んだ跡だけじゃなくて、凛莉ちゃんの顔も赤い。
こうしている内はきっと凛莉ちゃんの感情はわたしだけに埋め尽くされている。
だから、このまま思い切り歯形をつけてやりたい。
そうしたら凛莉ちゃんはわたしのことしか考えられなくなるかもしれない。
「足りない」
まだ上半身の一部。
体の全部を舐めて、色んな所を噛んでやりたい。
そうしないと、凛莉ちゃんがどこかに飛んでいきそうで嫌だった。
わたしの側にいてもらうために、確かな証拠をつけておきたい。
わたしは凛莉ちゃんのスカートと、そこから伸びる足を見る。
ここにも印が必要かもしれない。
「涼奈、ダメっ」
でも、凛莉ちゃんはそんなわたしの視線に気づいたのか。
そちらを向いた途端に、さっきまでとは違う頑固とした拒否の声を上げてきた。
わたしの頭を掴んで、本当に止めに来る。
「なに、凛莉ちゃん」
「そこはまずいって」
「さっきもそう言ってた」
「いや、そこは冗談になんないから」
なら胸は冗談になるんだろうか。
……分からないけど、凛莉ちゃんの声は本気でやめて欲しそうに聞こえた。
「それ以上されると、ほんとにおかしくなるから」
釘を刺すような一言。
でも、その声は揺れている。
わたしを乱した凛莉ちゃんの声が、わたしによって乱れている。
それならいい。
わたしの気持ちが凛莉ちゃんも少しは分かっただろう。
「いいよ、じゃあ許してあげる」
わたしは凛莉ちゃんから顔を離す。
そのままにしておくのは可哀想だから、一つずつボタンを閉める。
どこまで閉めるか悩んだけど、第一ボタン以外は全て閉めておいた。
今の凛莉ちゃんを晒すようなことをしちゃいけないと思ったから。
仰向けに倒れていた凛莉ちゃんがむくりと起き上がる。
恨めしそうな目でこっちを見ていた。
「なに、言いたい事あるなら言ってよ」
「涼奈の……変態っ」
「え……」
変態と言えば凛莉ちゃんのはずなんだけど。
凛莉ちゃんはしばらくそっぽを向いたまま、わたしと視線を合わせようとしなかった。
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