ペスト対策本部設立
「「!?」」
突然の事に、2人は声にならない声を上げる。認識した途端、目も開けられ無い程の眩い光が部屋中を包み込んだ。
(なっ、何!? 何なのよ⋯⋯!?)
痛いくらいの
こんなものに効果が無い事は充分に理解している。——してはいるが、これは気持ちの問題だ。
「おいっ! 聖女様、無事か!?」
「え、ええ。問題無いわ。貴方こそ大丈夫?」
「ちょっとばかし目は痛いが、それ以外はどうってこと無いぜ」
「それなら良かったわ」
互いの無事を確認する為、薄らと目を開けて言葉を交わしているうちに刺すような痛みを伴った青白い光は徐々に収束していく。
『ピピピィ⋯⋯!』
漸く光が落ち着いたかと思えば、今度は小鳥の
(もうっ、次から次へと何なのよ⋯⋯)
げんなりしながらも声の正体を確かめるべく小夜はそっと瞳を開く。そして、目に入った物に驚きを隠せずハッと息を呑んだ。
「!!」
同じタイミングで瞳を開いたルッツもある一点を凝視したまま固まっていた。冷や汗を流したルッツは
「おいおい、マジかよ⋯⋯。今代の聖女様は治癒魔法だけじゃ無く召喚魔法も使えるのかよ」
2人が瞬きすらも忘れて魅入る視線の先——そこには一羽の鳥が居た。
それも、小さな身体にはおよそ似つかわしく無い大きな大きな風呂敷をぶら下げて。
✳︎✳︎✳︎
「え!? 此れって私がやったの!?」
正気を取り戻した小夜は鳥からは一切視線を逸らさずに声を上げる。その鳥は全身が深い青色の
青い鳥は絶えずヒヨコのように短い羽を懸命に動かしている。
「あんたじゃなきゃ他に誰がいるってンだよ⋯⋯」
同じく、突然現れた鳥に釘付けのルッツは言った。
『ピィッ!!』
2人が押し問答を繰り返していると、それを見兼ねた青い鳥は一際大きな声で鳴いた。小さな嘴をずいっと前に出している事から察するに、早く受け取れという意味だろう。
「あっ、ありがとう⋯⋯鳥さん!」
小夜は慌てて受け取る。
『ピィ~♪』
小夜が風呂敷を手にした事を確認すると、青い鳥は満足げに頷く。そして、狭い部屋の中を軽やかな動作でくるりと旋回すると、現れた時と同様に何処かへと消えていった。
「「⋯⋯」」
小夜とルッツは暫くの間、鳥が消えた方向をジッと見つめていた。
後に残されたのはこの世界には存在し得ないだろう
ずっしりと重みを感じるそれを、小夜は恐る恐る開いてみた。
ゆっくりと結び目を解くと、見覚えの有る物たちが姿を見せる。
「! 此れって——」
驚愕の表情を浮かべ、言葉を切る小夜。驚く事に風呂敷の中には今しがたアプリケーションで注文した品々が入っていた。
「驚いた⋯⋯本当に、本物だったんだわ⋯⋯!!」
「こんな物、一体何に使うんだ?」
小夜が歓喜に打ち震えていると、ひょっこりと横から顔を覗かせたルッツが不思議そうな顔で尋ねて来た。
「此れが私の魔法に必要な道具よ!!」
小夜は得意げに胸を張る。
不思議なアプリケーションのおかげで、今必要な物は一通り揃った。
これから本格的に小夜の聖女活動が始まる。
(これで少しは“それ”らしくなるかしら⋯⋯?)
小夜は包みの中から白衣を取り出し、慣れた動作でそれを羽織る。
そして、すうっと大きく息を吸い込み、真っ直ぐにルッツを見据え口を開いた。
「此処にペスト対策本部の設立を宣言しますッ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます