エピローグ
私は砂浜を歩く。
「来ねえなあ、遣い様」
砂浜ではヒロシさんを弔う儀式が行われていた。
けれど、誰にも私は見えていない。
「我が妻よ」
和服を着た男が立っている。髪は白く長い、もっと神秘的な感じかと思ったけど、普通の人間みたいだ。
「初めまして、テミニカ様」
私はその男に挨拶をした。そう、この男がこの島の神である。
「テミニカ?違う、我は雩(アマヒキ)、そして初めてでもないだろう。」
「アマヒキ?でもテミニカって書いてますけど?」
「この島の連中も間違って伝えてしまっている。まあ、そんな事は気にしないが」
初めてじゃないって......ああ、お化け屋敷の時か。
「我が妻よ、お前は死んだ、供物として。だがこれからは我と共に生きる。我はお前を一生愛すると誓おう」
「わかっています。約束しましたから」
ペリカンが飛んできて、ヒロシさんを口に加えていく。
儀式が始まったようだ。
「丸山シオリ」
アマヒキ様がそうつぶやく。
「えっ、どうしてその名前を?」
「やつは儀式を終えていた」
私もいつの間にか終えていた儀式、一体何なんだろう。
「しかし、我の元に来る前に死んでしまった。せめて弔ってやろうと、遣いに食わせた。すると、遣いの子にやつの魂が宿っっていた」
「執念ってことですか?」
「そんなとこだろうな」
あのペリカンはシオリさんだったって事?
たしかに思い当たるふしはある。
この島に来た時、私を見て逃げたのは、私をミサキさんと勘違いして。
スマホをとって祠に誘導したのも。私にSDカードを回収させるため。
最後、氷上を食べたのは、復讐なのか、それとも......
「儀式って、あのワラヤマくんを渡すことなんですか?」
「そうだな、それまでにも色々あるが、最後はその人形......正確に言えば中の紙、それを我に捧げる。丸山シオリもそうだった。」
「ふーん......」
シオリさんも洞窟で落としたのかな?
2個目をミサキさんが買ったのもそれでか。
2個目は意味がない......か。
「我が妻よ」
「そろそろ名前で呼んでくれません?」
「御供ヒトミ、人身御供、ははっ、字だけ見れば生贄そのものじゃないか」
「はぁ?」
カチンときた。
「ヒトミよ、本当に良いのか、弟のこと」
「いいんです、もう今までの関係じゃ、いられないと思うから。
早く彼女でも作ればいいんです。この島にも連れて来てくれないかなぁ?」
「そうなれば、我への供物となってしまうぞ?」
「全力で阻止します。っていうか何人いるんですか、奥さん」
「お前が30番目だ。安心しろ、みな平等に愛している」
「はぁ......」
まぁ、退屈はしないか。たまには遊びに来てよね、ショウ。
「ところで、アマヒキ様ってなんの神なんですか?」
「雩」
「名前の通り、雨の神だ。」
「えっ?......でも、この島って、亜熱帯だから、雨乞いなんて必要ないんじゃ......」
「ふむ、さぁ、どうだかな」
大口羽白アイランド 荒弥タマキ @arami-tamaki
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