3日目 ②
ピチョン、ピチョン
水の音がする。
目が覚めた私は、洞窟の中にいた。
動けない、縛られてる。
服が違う。着替えさせられている。この服は、羽白衣?
「っぁ、あ゛っ、がっ」
声が出せない、呂律が回らなくなってる。そういえば何か飲まさたな。
ショウ......どこにいるの
洞窟に目をやる。祠が見える。やっぱりここはあの洞窟だ
ん?、あれは.......ワラヤマくん......?
ボロボロになったワラヤマくんが見える。誰のなんだろう
私はタグに目を凝らす。
丸…山…?シ…オ…リ…?
シオリ、シオリ......もしかして、しーちゃん?
女性スタッフの、何故この場所に?
私はあのメイキング映像を思い出していた。もしかして......あの声は
「やぁっ」
洞窟の向こうから人影が見える。
氷上さん、いや、氷上。
「.........」
「もう喋れると思うんだけどなぁ」
「.........」
「あの映像、見たんだよね?」
「.........」
「どこで拾った?」
あの優しそうな目はどこにもない。冷たい目をしている。
「この洞窟に落ちてましたよ」
「?!......何故だ?あの時流されたはず」
やっぱり、最後の映像の、あの現場にいたんだ。
「なんでシオリさんを殺したんですか」
「......全部、見たんだね」
「シオリさんは、あなたのことが好きだったはず、なのに何故?」
死んだのはミサキさんだと思っていたけど。違った。あの最後の映像、カメラを回していたのはおそらくシオリさんだ。メイキング映像の冒頭からショッピングモールに入っていく所。あのシーンまでは目線の高さがミサキさんに近かった。シオリさんが撮影していたのだろう。お土産屋さんの映像からミサキさんが上目遣いになってた。撮影者が変わったんだ。
「あなたはメイキングを撮り終わった後、シオリさんにカメラを返した。」
「そして、シオリさんはミサキさんとレッドが出ていくのを発見し、密会を撮影した。そしてグリーン、イエローも」
「しかし、シオリさんは尾行中にあなたとミサキさんに気づかれてしまう」
「シオリさんとあなたは付き合っていたんでしょう。浮気がバレた。ミサキさんは今までの分も、撮られていると思った。だから二人で殺した」
「彼女だったんですよね?何も殺すまで」
「付き合ってなんかねーよ」
「え?」
「最後の映像を撮ったのがシオリだったのは正解」
「でも、ミサキを撮ってたのは俺だよ」
は?なんで?
氷上が語り出す。
──
ミサキとダイスケ......レッドっていった方がいいか。ミサキとレッドがホテルを抜け出して行くのが見えたんだ。俺は気になって後を追った。
洞窟の中で二人はまぐわっていた。ショックだったよ。俺はミサキが好きだったんだ。でもアイツはレッドが好きみたいだった。咄嗟にカメラを回した。週刊誌にでも売ったら二人は終わるだろうって思った。
次の日
ミサキはグリーンと洞窟の中に入っていった。
次の日はイエローと……
俺は更にショックを受けた。ミサキ、いや、ピンクはとんだアバズレだったんだ。
俺の知ってるミサキはもういない。
そして同時にとても興奮したんだ、カメラの中で穢れていくミサキ、アバズレになっていくピンク。その日はあの映像を見て何度も出したよ。
おそらく次は俺の番だ。でも、どうしてもカメラに収めたかった。
あれを使おう──
俺は前の日にシオリに告白されていたんだ。変な人形ももらった。その時はミサキがまだ好きだったから保留にしていたけど、俺はシオリと交際することを条件に撮影を頼んだんだ。
でも、あいつはしくじった。洞窟に入って、しばらくしてピンクがシオリに気づいた。彼女はカメラの中を見て今まで撮っていたのはシオリだと勘違いして。
頭を、石で……
死体は海に流したよ
カメラは暗くて探せなかった。次の日には無かったから水に流されていると思ってたよ。
撮影は中止にならなかった。だいぶ巻いたけどね。この島は若い女を生贄にする儀式がある。シオリは知らないうちに儀式を済ませていたんだ。この島はそういう風にできているからね。みんな因習を信じてたよ。
──
「ミサキさんは今、どこに?」
「知らないよ、もう芸能界にはいないしね。もう興味ないよあんなアバズレ、俺が見たいのはカメラの中のピンクだけだ」
氷上はとんでもない変態だった。カメラの中、って事は。
「SDカードを見つけてくれてありがとう」
氷上は上着を脱ぎだす。
「しかもピンクにそっくりだなんて。なんて奇跡なんだ」
笑いながら白いシャツをビリビリに破く
「ようやくこれで撮れる。アバズレンジャー全員とセックスした、正真正銘のアバズレピンクが完成する」
ベルトを外し、ズボンを下に下ろす。
「さぁ、コンプリートだ」
氷上はパンツを脱ぎ捨て、いきり立ったそれを私の前に突き出す。
終わりだ。私はこいつに犯された後、殺される。カメラに収めたら用済みだ。
でも待って?撮影者がいない。撮影者がいなければ、こいつは目的を完遂出来ない。
そこまで考えて、最悪の展開が脳裏に浮かぶ。
ショウ───
「姉ちゃん、今助けるからね」
「ショウ!!逃げて、こいつは」
私はもういい、ショウだけでも。
ショウがカメラをこちらに向ける
「なんで......」
「ショウくん、お姉ちゃんを助けるぞ」
あっ
これは映画と同じシーンだ。ピンクが怪人に操られているところをレッドがキスして助けた。あのシーン
「ショウッ!だめっ、逃げっ
氷上の唇が私の口を塞ぐ。
服を裂かれ、胸が露出する。
氷上のそれが、私の口に入っていく。
「ん゛ん゛ーっ、ん゛ー!!」
「ア゛ッ、オ゛ッ!!ミサキっ!ミサキっ!」
私じゃない名前を呼ばれている
犯される私をショウが撮影している。
何分経っただろう。氷上は何度も、何度も、何度も、私の中に出した。
「......ろ......して」
死にたい
「まだ洗脳が解けていないか......ショウくん、この儀式は愛すべきもの同志の方が効果が高い。君が今からブルーだ」
氷上はショウを前に突き出す
「ショウ、だめ……」
「姉ちゃん」
「ショウ君、さぁ、ピンクを元に戻すんだ」
私をあんなアバズレと一緒にするな。
「ショウ君はお姉ちゃんのことが、好きなんだろう?愛のパワーを見せてやれ」
「うん......」
あぁ、そういうことだったのか。
旅行中、薄々感じていた。ショウは私の事が好きだったのか。姉として、家族としてではなく。女として。
「姉ちゃん、大好きだよ」
だめだよ、ショウ。姉弟でそんなことしちゃ。儀式なんて嘘ってわかってるでしょう。ショウはそこまで馬鹿じゃない、アイツの本性にも既に気づいているはずなのに。
そうなんだね......
それほどまでに
私のことを......
ショウの小さなそれが私の中に入る。ショウはセックスのやり方なんて知ってる訳無いのに、どこで覚えたのか。もしかしてあの映像を見たの?
「姉ちゃんっ、姉ちゃん」
受け入れてはいけない。
でも......
どうせ二人とも死ぬんだし
アイツよりマシか......
「ハハハハハ!!、ハァ、ハァハァ、ああっ」
アイツはカメラを構えながら陰茎を扱いていた。その笑ってる顔を潰してやりたかった。
最悪だ
死んで欲しい、死ね、死ね、死ね
どうか 、神様
私の命はいい、弟を助けて。
せめてアイツを地獄に落として下さい。
朝から何も食べてない、気持ちよく眠れてもいない。神経が衰弱している。
もう、意識が無くなりかけていた。
ッアー、ッァア
?
なんだろう、遠くから何かが聞こえる。
グァーッ、グァーッ
グァアアアアッッッ!!
グァアアアアアアアアアアッッッ!!!
ガアアアアアグオッグオッググググッガガガガァ!!!
けたたましく低い音が鳴り響いたかと思うと、私の視界が真っ白になった。
当たり一面に無数の白い羽が舞う。
「なっ、」
「なっなんだよコイツらはぁ」
グァアア、グァアア、グァッッァ
グウォォォォオオオオオオオ!!!
グチュ、ビチッ、ギィィチッ
白い羽が赤く染まっていく。
「がぁぁあっ」
ギチィ、ビチャビチャッ、ビッ
「クソがぁ」
アイツの姿が赤い羽で見えなくなる。
「ミサキ!ミサキッ!」
「み「グァアアアッッッ!」
バサバサッ
赤い羽が天井から飛び立っていく。
あいつの姿はもう無い。そこには赤い血溜まりだけが残っていた。
ピチャン ピチャン
水の音だけが響き渡る。
その一瞬の出来事に、何が起こったのか、理解が追い付かなかった。
「姉ちゃんっ!」
「......ショウ」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
私は泣きじゃくるショウを抱きしめた。
ショウは氷上に、私が呪いにかかっているかもしれないと言われSDカードを渡した。呪いを解除する方法は性行為らしい。その時にショウはセックスの映像を見た。
しかし、ショウはあんなに私のことが好きだったなんて。
私は赤い血だまりを見る。
ペリカン、それも大量の。
あれはいったい何だったのだろう。
私は祠を見つめる。太陽の光が差し込んでいる。
──わがつまよ......我が妻よ......──
頭に何か聞こえてくる。お化け屋敷の時の、あの感じ。
ショウには聞こえてないのかな?
──.................───
あ
そういうことか
ポロッ......ポトッ
私はその声を聞いて、涙を流す。ごめんね、ショウ......。
「姉ちゃん、どうしたの?泣かないで」
私はショウを見つめながら話す。
「ショウ、よーく聞いてね。」
「うん」
「お姉ちゃん、今から行かなくちゃいけない所があるの」
「どこに行くの?僕も行くよ」
「ごめんね、一人で行かなきゃいけないんだ」
.........
「帰って......くる......よね?」
ショウは目を濡らしながら、不安そうに言った。
何かを悟ったように。
「またこの島に旅行に来て、そしたら、会えるから」
「いやだよ、ねえちゃん......」
「バイバイ......」
私はショウに口づけをする。
祠に刺す太陽の光が強くなり、私を包み込んでいく。
「姉ちゃん......う゛ぅ......」
そこにはショウの姿だけがあった。
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