第2話 異世界転移 化け物と竜

強くなくても、強がることはできると。




その漫画のセリフに感銘を受けた。




俺はどう転んでも強くなれない。




だから、強がって頑張るぐらいなら、俺にもできる気がするんだ。




 




 




…なんだろう。眩しい。日の出のように暖かな光がまぶた越しに見えた。いや、これは普通に太陽だ。目を開けた。…ここはどこだ?




 




周囲を確認する。辺り一面緑の草原だ。まるでカーペットの様に敷き詰める様に生えているそれは感動を覚える。…目の錯覚なのか、フィクションの様な作り物に見える。




 




自然のじゅうたんだ、こんな立派な草原は見たことがなかったので都会暮らしの俺はちょっと興奮して草の上にクッションの様に飛び込んだ。




 




「あー、自然ってすげー」と、感動してこんなことをやっている場合ではない。それよりここはどこだ。天国にしてはイメージと違いすぎる。わたがしのような雲は快晴の空の上にあり地獄にしては穏やかすぎる。ならここはどこだ?




 




さすがに感動していた感情から場所がわからないという現実を認識し焦燥を覚える。




 




「やばいな、どうしよう…」




 




草食ってしのいでも一週間持つかもわからない。それより獣に食い殺されることを考えゾッとする。辺りを見回しても視力は低くないものの見えるのは草と遠方にそびえ立つ巨大な山と快晴の天気。




 




それ以外別段気にする様なものはなく獣の姿はない。逆に言えば誰も見当たらないので。助けてくれそうな人がいないと言うことだ…。




 




「やべえやべえ…!」




 




でもここで錯乱していても意味はないので冷静になる様に暗示をかける。ここは夢の世界だ。現実じゃないし現実的じゃない…。ブレーカーを上げて目を覚ましたら知らない草原なんてありえない…!物理的に科学的に常識的にとようやく落ち着いた。




 




というか夢だろこれと思いつつある。そうだよな、普通に考えればそうだ。レバーを上げるとき何かの拍子で気絶したのかもしれない。それ以外あり得るはずがない。そう思うと気が楽になる。この明晰夢から抜け出す為に何をしよう、せっかく夢の世界にいるんだし楽しまなければ。




 




そうと決まれば話は簡単だ、とりあえず走り回ろう。夢の中ならば運動神経ゼロのインドアの俺も最速で走れるかもしれない。というわけで少し準備体操をした後前傾姿勢クラウチングスタートの構えになり




「韋駄天の如く、いざ行かん!」




 




この草原を駆け抜ける 




 




「もうマヂ無理。うぅゲッホ、ッゴッ、ッフ、ォォォ…」




 




2分後、いや、多分1分も経ってない。全速力で走ってみたものの6歩辺りで息切れを起こした。運動不足の弊害だ。家出する前は鍛えていたくせしてたった一年運動しなかっただけでこの体たらくである。




 




いや、夢だし大目に見てくれると思ったがそうは問屋が卸さなかったようだ。確か聞いたところによると夢は自分の思いに反映すると聞いたことがあるのでそのせいだろう。疲弊した体は肩で呼吸し倒れて草原にうつ伏せにになる。




 




「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇっ!!あー、夢でも結構厳しいな…。でも…はぁ、はぁ…。ふぅ…。こんな風景見れるならまだ儲けものかな?」




 




呼吸を整え落ち着くと茫漠と広がるこの世界を見る。まるで幻想的、ファンタジーな世界に来た気分だ。と、そう思っていたら流行りの異世界転生やら異世界転移やらを思い浮かべた。




 




どうしてあんなに流行ったんだろう?まあ、面白いからか…。それとも




 




「もし、これが夢じゃないなら。異世界転生ものや異世界転移ものって、実体験を描いた物語なのか?」




 




と、口にしただけで笑えて来る。絶対ないしありえない。それなら帰還者がいないと話にならないしやっぱりこれは夢だと笑い飛ばした。




 




だがさすがに暇になってきた。早く覚めないかなと願っていた。だがなかなか夢は続いてゆく…。少し睡魔が迫ってきた。疲れのせいだろうと夢うつつと眠気まなこになり夢の中で微睡んでしまい眠りに着こうとしたとき思い浮かべたのはリノたんのことだ。ここに来る前にブレーカーを上げる時の一連の出来事




 




そして思い浮かべたのはあの現象だ。あれも夢だったのか?想起した出来事のおぞましさに睡魔を振り払う。もしあれも夢ではなかったのなら、これも夢ではない可能性もある…。




 




 




起き上がって辺りを見渡す。依然として変化はない。夢から覚めるようなことも、また…。ならば認めるしかない…。焦燥を押さえ平静を装い強がって強がって臆病な自分を押さえつけ




 




「とりあえず…街を探そう」




 




意識を切り替え歩みを進める。一日二日ではたどり着けそうもないほど、広々とした草の海の中を




 




疲れたら休み、疲れたら休みと歩いた距離より時間が過ぎていく。どのくらい歩いたのだろう。さっきの馬鹿な行動以外で歩く以外で体力を使っていない。とりあえず、獣の類とは遭遇せずまだ死には至らない。




 




いや、むしろいてくれた方がよかった気がする。もしかしたらここは生物がいない世界なのかもしれないなんて想像するだけでもめまいがする。そういう考えを振り切り休んだ後ひたすら歩き続ける。




 




不幸中の幸いに、ここは時間の流れが遅いのか自転が遅いのか、日はまだ上り続けている。良かった、ここで夜になったらもう死にたくなる。それにしても…おなかが減った。のども乾いたし唾でしのぐのもそろそろ限界か。




 




背に腹は代えられない。足元にある雑草を見る。異世界の雑草、案外うまいかもしれない。なりふり構っていられないので引き抜こうとするがなかなか抜けない。というか固すぎ!!




 




根っこというか葉っぱが引き千切れない。まずいな。異世界の雑草って固いな…。諦めて尻もちをつく。もしここに人が住んでいたら逆スー〇ーマン現象が起きて貧弱な俺は赤子の手をひねるどころか赤子にすら劣るかも




 




「これは…もう駄目だな…」




 




流石にあきらめた。あー、ここで野垂れ死にか…。嫌だな…。まだやりたいこと…あったのに…。こんなにいともあっけなく、死ぬのか…死…死…。




 




「リノ、約束破ってごめんよ」




 




なんというか、訳も分からず意味も分からずここにきて死んで終わりとは現実は厳しいな。物語の様にそうそう…都合のいいことは起こらない。




 




まだ体力は残ってはいるもののこんななぜかどこをどういっても草原しかない場所を見ていると絶望しか感じない。もう歩くのは止めてここで歩みを止めよう…。でも、なんでだろう。




 




理不尽 不条理 不公平 そんな言葉が浮かんだ。そもそも俺は好きでここに来たんじゃない。何かによって呼び出されたのだ。何か理由がある。




 




もしかして俺を呼び出したやつはこの光景を見ているんじゃないのか?もしかしたらこれは試されているんじゃないのか?理由は分らない、だが…。




 




「前言撤回。リノ、待っててくれ。俺は絶対生還してやる」




 




もう意地でも生き残ってやる。臆病風を向かい風に変える勢いで、自身に活を入れる。葉っぱが食えないなら俺に血でのどを潤すしかない。歯を使って腕にかみつく。痛みに耐えながら血が出るまで噛み続けた。




 




少し傷口が出来て出血。のどを潤すが返ってのどが渇く。だが少なくともないよりはましだと血を飲み続ける。




 




瞬間、空気が変わった。草原が、俺の血の様に、真っ赤に染まりすべての葉が深紅に彩られる。あまりのおぞましさに声も出ず恐怖で硬直する。なんだよこれ…




 




葉が蠢動する。見る見るうちに草原だった葉は形状を変え俺の腕に向かって伸びていく。まるで、俺の生き血をすすろうと手を伸ばすように。




 




動け動け動けと警鐘を鳴らす。だが前へは一歩も進めなかった。なぜなら群生する赤い葉が俺の足を縛っている。逃すまい、という様に。




 




・・・これは、さすがにどうにもならない。どうやら俺を連れてきたやつは俺の死にざまを見たかっただけらしい。それはそうだ、俺は全然特別じゃないし。多分誰でも良かったのだろう




 




葉はおもむろに伸びていく。みるみるとそれは俺の体を覆っていく…。その光景はもはや悪夢だ。恐怖を通り越して笑えて来る。ただ絶望、確実な死。走馬灯のように流れる景色が脳裏によぎる。




 




色々な思い出が錯綜し交錯する。あんな日もあったこんなこともあった色々あったと、ひとつだけ、心残りが。




 




リノが泣いている姿を見た。リノを置いていった現実を見た。リノを泣かせてしまった。リノを一人ぼっちにしてしまった。・・・ああ、なんでだろう。死ぬほど怖いのに…恐怖で震えて気絶してもおかしくないのに




 




リノを思った。リノに会いたい。リノが歌っているあの歌を、不思議となぜか、自然と紡いだ。




 




「–{■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!」




 




だが、まるでそれは軋轢音かなんなのか。バグが起きた様に俺の声で発していない何かの様に言の葉が虫食い穴だらけだ。




 




 




それを発したと同時に、慄くように血を吸う草原は消えていく。草原そのものが煙の様に消えていき、周囲は変化し森になる。なにがどうなってんだ…?




 




何が起こったかよりも俺は湖が遠方になるのを見つけひたすらそこに向かって忘我し走った。水水水と頭にはそれしかない思考に湖に着いた瞬間顔に水を突っ込みがぶ飲みする




 




急に飲んだため鼻に水が入るやら咳き込むやら気にせずただひたすらに呑み込む。生き返ると思う存分水を飲んだ。おかげでびしょぬれだが




 




「げほッ!げほッ!はぁ、はぁ、…良かった…」




 




たった一日しか水を飲んでいないのに三日ぶりという感覚でへとへとになった体を横たえる。疲労困憊だ




 




「インドアの俺が、奇跡だ…」




 




生きている。こうやって生きているし息してる。生きているというありがたみが身に染みて体に透き通った感覚がする




 




あの化け物草原から生きて出られるとは思わなかった。よくわかんないけどあいつは逃げていった。・・・そういえば俺は、何か言っていたような…?




 




なぜか覚えていない。覚えているのは化け物草原に食われそうになった事だけ。だけどなぜか逃げていった。多分俺の血がまずかったんだろうと勝手に思う




 




それより次の行動だ。水は確保した。後は食料と…お!近くに木の実がなっているのを発見した。こいつはラッキークッキーらっきょうもあるぜ!運が向いてきたなとたわわになっている木の実をもいで食べた。




 




さっきの経験をしておいて木の実が食べれるかとかどうだっていい。毒があろうとなかろうともうおなかがすいているので敷き詰めるだけ敷き詰めたい。




 




甘い果実が俺に血肉に変えていくのをなんか感じた…。生きてるって、それだけでも幸せなんだな…。どれだけの不幸があろうと食えれば幸せだと思う。いままで贅沢が過ぎたな。




 




だが食欲に負けてばかりもいられない。いくらか見繕って非常食にしようと思い数個ほどポケットに入れる。すると草陰から物音が聞こえた。その音にぎょっと驚いてしまう。




 




獣…というか怪物がこの世界にいるのはさっきの化け物草原で学んだし普通の獣であっても俺に勝てる見込みはない。子供の動物か小動物でありますようにと願い現れたのは




 




〈コウゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!〉




 




と嘶くのはまさかの、ドラゴンだった。マジで、トカゲに羽が生えているよ…!!信じられない!!というか鳴き声が獣的ではないのは意外だった。甲高く響く高貴な咆哮を上げるドラゴン。全身が白銀色の鱗でおおわれており瞳は榛はしばみの色で爪は鋭くもかくも美しく四足歩行で首は長くその体躯はさながら透き通った空のように見るものの心を奪うほど幻想的だ




 




その子はまだ俺よりも小さく子供だと一目でわかった。大きな翼をたたんでおり俺を見ている。ドラゴンならば怖いはずなのにこの子はそうは見えないほど美しい竜だった




 




というか、奇妙な感覚だ。あの化け物草原といいドラゴンといい二次元の様に見えてしまう。どうやら頭がおかしくなったようだ。いや、あんな経験をしてもうとっくにおかしくなっていてもおかしくはない。だがそう見えることで恐怖は薄れるが。




 




まあ、それはおいておいて。俺の持っている木の実が欲しいのか俺を見て動かない。というかさっきの木の実ならそこにあるのになぜ食べないのだろう?




 




とりあえず近づいている。いや、待て。警戒心を怠るな。もしかしたらさっきの草原と同じく見た目で騙そうとしているかもしれない。あの美しい姿の裏には恐ろしい怪物が潜んでいるかもしれない




 




だが、一瞬そう思っただけで警戒は解いた。この子に敵意はないしそもそもそういう類のものじゃない。よくわからないがそう思える。この子は優しい、おとなしくて、なぜか、痛そうな顔をしている




 




よく見れば左前脚を怪我をしている。銀色の血が流れ、鱗でおおわれていて気付きにくいが確かに怪我をしていた。悲痛に歪むのを耐えているような表情に痛ましさを感じ即座に来ている上着を脱いでドラゴンに近づきその布で傷口に当てる。




 




って何やってんだ俺。特に何も考えずにそんなことをしてしまいそもそも医療とか詳しくないのに消毒していない布で覆って大丈夫なのか?余計悪化させるんじゃないのかと心配になる。




 




黒色のジャージが銀色の血に染まる。とりあえずそでを結んで傷口をふさいだ。抵抗するかと思ったがドラゴンは特に何もしなかった。良かった。温厚な性格で。




 




「悪いな、こんな汚いジャージで傷口ふさいで。他にいいものがあればよかったんだけど」




 




なんとなくそういってしまった。通じてるはずはないが正直にそう言ってしまう。水で濡れてるし多分汚れは少しは落ちているだろう。と、そういえば先ほどから俺を見ている。木の実ではなく俺自身をだ。




 




果実目当てではなくなぜ俺を見ているか不思議に思う。怪我をふさぐ際にも俺を見つめていた。あ、そういえば血を飲むとき俺は右腕を噛んで血を流したのでその血が混じってないか心配だ。




 




・・・なんとなくだが、ドラゴンは笑っているように見えた。美しい面豹を持つそれはまるで安心しているかのように微笑んでいた。




 




そんな顔していると俺まで顔がほころんでしまうと思ったら寒気がした。それはそうだ、上着を脱いでいれば寒いに決まってる。勢いで水しぶきが飛んでびしょぬねになったのでそれも含めてだ。




 




 




「はっくしょんッ!あーさみい…!」




 




寒気がしてついくしゃみをしてしまう。まあ自業自得だ、後先考えず行動したツケが回っただけのこと。とりあえず体を温める為体を摩擦で熱を起こす。




 




すると俺を見ながらドラゴンは傷口を覆っていた俺のジャージを器用に口で結び目を解いた。そんなことをすれば出血が…。だがすでに傷はなく元々そんなものが無かったかのように治癒していた。そしてドラゴンはくわえていたジャージを




 




俺にかぶせる。・・・すごくいい子だ。正直感動とこの子の優しさに涙が出る。あーあったけえなと体も心も温まる。ジャージを再び着て温まる。だがまあ、まだ寒いっちゃあ寒いが問題はない。




 




俺が何を思っているかすぐにわかっていたようにドラゴンは周囲を確認し近くの落ち葉を前足でかき集めていく。何をするのだろうと不思議そうに見ていると口から火を噴き焚火を作った。




 




・・・かなり頭がいい。というか心配りのいいドラゴン様…。機知に富むこの子は成長すれば凄まじいドラゴンになるだろう。というかさっきからこんなに親切にしてもらっているのにドラゴンというのは失礼だな。




 




名前は何と聞きたいが多分言葉は介さないだろう。なので俺は知恵を巡らせ頭をひねる。・・・これはどうかな。




 




「ニュート。俺は君をそう呼びたい。」




 




生憎俺は名前を付けるのは下手であるため大体俺は何かから名前を取っている。




 




リノの由来のニュートリノのリノからとった為俺は後の文字にニュートからこの名前を呼んだ。・・・やっぱりお気に召されなかったかな?と思った時




 




〈コウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウン!!!〉




 




嘶く雄たけびは歓喜か分からないが喜んでいるように見えてほっとした。良かった、機嫌損なって食い殺されるか焼け死ぬかとか思ったけどそうならなくてよかった。




 




というかニュートって男性名詞だっけ?女性名詞だっけ?英語はてんでわからないしそもそもこの子はオスかメスかもわからないがオスだと思ったので多分ニュートで大丈夫だろうとくだらないことを思案する。




 




と、やはり女々しくニュートとリノと考えていたらまたリノの事を想起する。・・・今は大丈夫だがこの先行き先不安だ。ニュートを親元に返さなければいけないしそれからはまた俺は一人だ。




 




今は帰りを待っているリノが心の支えであるがいつまで強がれるか分からない、この先なのが起こるのかも。俺はただの人間、限界があるし帰還を誓ったが臆病な俺は結構自信がない。




 




浮かない顔をしているのを見ていたのかニュートは俺の肩に頬ずりをする。俺を慰まてくれているだろう、本当にいい子だ。背中を押してくれているような所作に俺も応えなければ。焚火のおかげで体も温まってきたし行動しなければ




 




「ニュート。まずはお前の親を探さないと、さすがに親さんも心配しているだろうし」




 




するとニュートは首をかしげる。文脈が読めなかったのか分からないが言っている意味が分からないという表情だ。




 




「どうしたんだ?」




 




その反応に俺も同じく首をかしげる。俺は変なことを言ったのか?ニュートはまだ子どもだし親が心配しているだろう。特におかしなことを言ったつもりはないけど…。




 




そしてニュートは何か思いついたように腰を低くする。そして首を動かし頭を自身の背中へ向ける。それは背中に乗れという意味だとすぐに分かった。




 




「乗っていいのか?」




 




首肯ととれる仕草にとりあえず乗ってみる。なんというか、男の夢が叶ったな。ドラゴンに乗るって多分憧れだと思うし俺も昔はそう思っていると、ニュートは咆哮を上げ翼を開き羽ばたいた




 




飛んでいた。ニュートにしがみつき風を浴びて鬱蒼としていた森の木々を飛び越え青空が広がり俺たちは世界を俯瞰していた。青い空はまるで海の様にニュートはその海を泳ぐように舞っている。




 




良い眺めだ。高所恐怖症であったことも忘れるほど息をのむ光景だ。世界周遊をしていてもこういう景色は見ることはないだろう。飛行機とは違う、素晴らしい景色だ。と感動に耽る。




 




そしてニュートはしがみついている俺を考慮しながら慎重に速度を調節し前進する。だがどこへ向かうのだろう。ゆっくりと風を感じながら前へ進んでいく。さっきまでいた森はかなり大きいと下を見ていて思う




 




ニュートに出会わなかったら多分森をさまようことになっていたとわかるくらいであり目測で半径何十キロも森は広がっている。水や食料は問題なかったが獣に合えば即座に殺されているということを思いぞっとする。かなり運がよかったと神様に感謝する。




 




大空を翔けるニュート。俺が突風で吹き飛ばされないのを考えているもすさまじいスピードで空を翔け、ものの数分足らずで森を超え、今度は別の景色が見えてくる。街だ。さまざまな建造物が建っているそれはファンタジー映画で見る巨大な城とその城下町。人がいる。遠目でよくわからないが確かに人がいる。多分そこに降り立つのかと思ったがニュートはその街を通り過ぎていった。




 




それはそうだ、ニュートの親を探さなければならない。今もニュートの親は心配で気が気じゃないだろう。俺も辺りを見回し探してみる。幻想的な神殿やら火山やらは見えるがドラゴンらしき影は見当たらない、親のドラゴンだからかなり大きいと推察し辺りを見回すがそれらしき影は見当たらない




 




うーん、悔しいな。ニュートに救われっぱなしだ。これでは恩が返せない。するとニュートは降下する、どうやら親を見つけたようだ。良かったと安心しニュートは森に向かって地面に降り立った、だが親ドラゴンは見当たらない。ニュートから降り俺は探しに行ってみた時ニュートは再び羽を広げた。まさか…。




 




「ニュート!?どこ行くんだ!?」




 




広げられる小柄でありながらも自身より大きな翼は空気を切り裂きニュートは宙を舞い飛び去って行く。どうしてだ?なんでこんなところに?飛び去って行くニュートを遠目で見ながら唖然とする。




 




・・・だがニュートは賢い。出会って数分だったがニュートなりに何か考えがあるだろうととりあえず歩いてみる。そういえば気にしていなかったがニュートの血で染まった為ジャージは銀色に染め上がっている。




 




それも傷口を押さえていなかったズボンにまでだ。かなりの出血量だったのだろう。このジャージはお気に入りとかそういうのではないのでどうでもいいが銀色は派手だな。まるで鎧の金属の様に輝いている。そういえば神話で竜の血を浴びて不死身になった英雄がいることを思い出す。まったく違うがと笑ってしまうが




 




しばらく歩いているとまたもや草陰に物音がした。・・・マジか、今度はニュートの様におとなしい存在とは限らない。幸運はそう続かない、確か獣は逃げると追いかけてくると聞くのでゆっくりと後ずさりをする。だが現れたそれは人型をしていた…。というか、マジか、マジで、マジだ…!




 




 




「おぬし、何者だ…?」




 




目の前に、謎の美少女が現れた。

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