異世界徒然なるままに

竜翔

第1話 始まりは停電の闇で

ふれたい、ふれたい、あなたにふれたい




うまれたときからそうおもった




ただねがった、それをねがった。




あなたのせかいにわたしはいきたい。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






嘘だろ…」




 




驚愕するしてしまう。まじか、まじで、まじでショータイムと驚きを禁じ得ない。なぜなら。




 




「この小説めっちゃ面白いやん!お気に入りに登録しよ!」




 




暇つぶしに小説サイトを通覧していると面白そうな題名の異世界ものを見つけ読了し俺は意気揚々な気分になる。




 




東雲 森秋しののめ もりあき。学生だが色々あって家に引きこもっているこもりオタで人生を順風満帆に謳歌している。学校辞めたくせに何でそんな事を言えるのか。それは




 




『ほんとうか〜!見せて欲しいのだ〜!』




 




俺の嫁、リノたんがいるからだ。パソコンのスクリーンに住む彼女は俺が心血を注ぎ完成させた電脳少女。AIを搭載し、ある程度の自我を持っている。




 




人工頭脳が一般的に普及された現代。AIの発展によりロボットに自我が芽生え不気味の谷現象が起こるまではいかないものの人命に関わる仕事などに機械が用いられ人間の生活が幾分か楽になった時代。




 




でもター〇ネーターやマ〇リックスほど機械の意思が発達しているわけではないので安心して欲しい。まあ、そんな中。ニ次元に命を吹き込もうとする奇特な人がいないわけがなく、




 




近年。ネットでどこかの天才がそれを製作し、ネット界隈では二次嫁にAIを搭載させそれを動画で投稿するのが流行りになっている。制作方法もお金はかかるも提供してくれている。




 




それにあやかって俺も始め、リノを製作した。デザインは俺が描き。電子の海をイメージして青色を基調とし海兵隊の制服を着させている。




 




絵は上手くいかなかったが肝心なのは性格だ。アンドロイドのように理知的で冷静沈着で寡黙でクールな少女を作ったはずなのだが…。




 




『おお〜。めいさくなのだ〜!』




 




ウキウキとさっき登録した小説を開き読んで楽しんでいる。このようにリノたんは天真爛漫で純真無垢だ。




 




何というか、説明書通りに製作したはずなのだが何か間違ってしまったのか、性格が真逆になってしまったらしい。




 




どうしてこうなったのかを調べてみたがヒットすることなく空振り、だが別に異常はないので気にしないことにした。




 




理想とは違えどこれはこれで良い。リノたんの笑顔は俺の心が洗われる。怪我の功名というんだろうか?するとリノたんは例のごとく




 




『リオハー♪トリャフェー♪レサファーヌ♪レアー♪ザルキュース♪シュトフォルゲン♪』




 




と気分が良いとリノたんは知らない言葉で楽しそうに歌う。何語なのか分からずリノたんに尋ねても『なんとなくなのだ〜』と別に意味はないらしい。多分どこかで拾ってきた歌なのだろうと特に深くは考えなかった。




 




でも、何というか、すごく良い歌だ。意味は分からないが心に響くのでリノたんは歌のセンスあるなと感服した。




 




「才能あるねリノたん、歌手になれそう」




 




と、誇張なしに言ってみた。するとリノたんは褒められたことでスクリーンを縦横無尽に飛び跳ね




 




『ありがと〜なのだ〜!リノはうたひめになるのだ〜!』




 




おお、歌姫ときたか。ならデザインも変えないとなと歌姫様の舞台衣装を考える。色々似合うなー、可愛いリノたんなら何をきても似合うと妄想に耽っているとリノたんが何か反応しスカートから何かを取り出す。




 




4次元スカート。ドラ〇もんよろしくなんでも収納できており何かあればそこから情報を取り出せるよう使用されている。これはその天才の人が考案したのを真似したものであり俺が独自に作ったとかそういうわけではない。




 




そして取り出されたのは天気予報図だ。スクリーンに表示され俺のいる地方に大雨注意報が流れている、そう言えば窓に雨粒が弾丸のように打ち付けられている。豪雨だ、嵐になりそうだな勢いの暴風で窓が揺れ光を発し雷がドップラー効果で6秒くらいの間隔で轟音が響く。遠いな、停電の心配はなさそうだ。




 




『かみなりこわいのだ〜!?』と自身の取り出した天気予報図の裏に隠れ怯えるリノたん。




 




「大丈夫だよリノたん。俺がついてる」




 




と、誰でも言えそうなひねりのないセリフを言ってみる。




 




くさいセリフと思いながらリノたんは天気予報図から顔を出し怯えていた表情は消え笑顔で




 




『ありがと〜なのだ〜!モリーがいてくれればなにもこわいものはないのだ〜!』




 




と、さすが嫁。メチャクチャかっこカワイイセリフをチョイスする。俺もそうだよ、リノたんがいてくれれば怖いものなんてない。




 




と考えていた矢先。閃光と共に轟音が響く。空を引き裂き空気が悲鳴を上げているようなそれはかなり近くに雷が落ちたようだ。




 




1秒も間隔もなく停電が起きる。コンセントを抜いていた為ノートパソコンは無事でありリノたんも無事だがさっきと同じく隠れてしまう。




 




真夜中のため暗闇が辺りを包み込む。あまりの驚きに硬直しかけたが気を取り治り、とりあえずブレーカーを上げに携帯していたiPhone灯り代わりに持っていく。するとリノたんが




 




『お…おいていかないで、ほしーのだ…!!』




 




とすぐ終わることだが雷が怖いため置いていかれると思ったのかリノたんは震えながら叫ぶ。




 




「あ、ごめんごめんっ!リノたん、一緒に行こう!!」




 




ということでノートパソコンごと俺たちはブレーカーへ向かう。




 




数秒おきに、雷は激しく鳴り響き流石に異常だろうと思いながらブレーカーの場所まで歩を進める。




 




「天気予報でここまで酷いとは書いてなかったのに…」




 




となぜか抜き足差し足忍び足で歩みを進めながら流石に慄いてしまう。するとリノたんは




『こわいのだ〜!』




と怯えている。俺も怖い、でもリノたんがいるから俺は平静を装える。若干顔を引きつりながら作り笑いをし




 




「はっはー!雷なんてなんのその!リノたんのナイトたる俺がいるからしんぱいめされるな!」




 




だが、少し様子がおかしいと思った。いつもなら安心する挙動をするリノたんが怯えを隠せていない。ただ純粋に臆している…。《キテ》




 




嫌な予感がする。その反応にさすがに俺も怖くなる。いやいや!強がれ東雲森秋!




 




《キテ》俺まで怯えていたら本当にリノたんまで不安になるだろう。《キテ》




 




さっさとブレーカーを上げて灯りとともに俺も《キテ》明るく振る舞わなければ!!




 




走るー走るーオレーたーちー!と歌キテいながら早足になる。恐怖に飲まれるな。毅然と振る舞え《キテ》ば問題ない、と言い聞かせる。雷ご《キテ》ときで大げさじゃないかとは《キテ》思うが、何だろう、




 




この《キテ》恐怖は雷に《キテ》対してで《キテ》はない。リノたんの挙動は普通じゃない。




 




《来て》温かい言葉を《キテ》かけると音声入力で微笑む《キテ》よう設定して《キテ》あるリノたんがそれに反応していない。




 




まるで、別のものを恐れて《キテ》いるようで、そう思うと《キテ》不安を助長さ《キテ》せるように《キテ》轟音は鳴り止まない。




 




だがもうそれも終わりだ、ブレーカーまで到着。《キテ》後は《キテ》これ《キテ》を開けて《キテ》レバーを《キテ》上げる《キテ》だけだ。




 




レバーに手を差し伸べ、ようとし《キテ》た途端




 




『ダメなのだ!!!!』




 




と、レバーに触れそうになった俺に声高にリノたんは叫ぶ。驚いた。・・・こんなリノたん今まで見たことがない。ここまで俺は設定してないし明らかに尋常ではない。




 




制止の声、リノたんの異常な反応。このレバーに触れればやばいことが起こると言わんばかりだ。・・・、俺は持っていたノートパソコンを置く。




 




すると俺の行動を察したのかリノたんは灯りにしていたiPhoneの画面に移動する。




 




『しんじてほしいのだ!!なんだかわからないけどレバーにさわっちゃダメなのだ!!』




 




警告をやめないリノたん。…ここまでするということはよっぽどやばいことだろう。知っているさ。信じてるさ。分かっているさ。




 




iPhoneとパソコンをブレーカーから遠ざける為に数メートルまで距離を置く。これなら多分リノたんに被害は及ばないだろう。




 




リノたんは叫び続ける、死んじゃうのだ、置いていかないでなのだ、聞こえたけどなぜ俺はそれを聞かず向かうのか。明らかな異常だ。危険がある、死ぬとリノたんは言う。




 




…さっきから何か、おかしいんだ。体の動きがままならない。頭に砂嵐が舞うようにノイズが走って行く。それは、ブレーカーに近づくたびに蝕まれる黒い恐怖。一滴一滴盛られる毒のように気のせいだと振り払ったせいでそれを毒だと気づかずに、毒と気付いた時にはもう遅い。徐々に蝕まれた体はブレーカーを上げる為に勝手に動く。まるで誘蛾灯に群がる蛾のように…。




 




だがリノたんを遠ざけたことは許すようにすんなりと動けた。もう駄目だ。流石に限界だ。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないと思いながらも手を伸ばす。




 




その前に最後の力を振り絞り振り返る。そして、リノたんに向けて強がりながら引きつりながら笑顔を作り。




 




「大丈夫、俺はリノを置いて行ったりしない。俺が守るっていったからな」レバーに触れた。




 




《アリガトウ》




 




『モリぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!』




 




同時に暗転、ああ、しまった。最後にリノたんを呼び捨てで呼んでしまったと後悔しながらリノたんの叫び声を聞きながら意識が途絶した。


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