第6話 いよいよ、夜の岡山に
約2分停車の後、列車は定刻で姫路発車。
姫路駅の正面口は姫路城のある山側。彼女らが座っているのは海側の席である。
姫路から飾磨港方面に向け、山陽電車が走っている。それに加えて、国鉄播但線も飾磨港までの路線が出ていた。
もはや暗くなってほぼ見えない手柄山を通り抜けた列車は、姫路郊外の英賀保、網干を通過する。網干を過ぎるとますます田園が広がる。竜野、そして相生を通過。すでに国鉄赤穂線は岡山県東部まで開業している。相生を通過した列車は、鉄道開通以前から栄えていた赤穂、片上そして西大寺といった町を通らず、いささか山間部の様相の強い路線へと足を踏み入れていく。かつて赤穂への玄関口だった有年に続いて上郡を通過すると、列車は上り勾配に差し掛かる。
大カーブといくつかのトンネルを超え、勾配をほぼ登りきると、列車はいよいよ岡山県に。
県境を越えて最初の駅三石を通過すると、これまた大きなカーブを最新鋭気動車はさらに快足を飛ばして、下り勾配を進んでいく。
この82系気動車は、後に製造された車両はもとより当時の電車に比べても駅に停発車する際の加減速があまりよくなく、電車列車よりも停車駅を厳選していたところがあったが、それでも蒸気機関車の牽引する客車列車に比べれば、はるかに燃費もよく加減速もよい。
急こう配が苦手であったことも確かだが、山陽本線程度の勾配であれば客車列車や貨物列車ほどの重さもないこともあって、補機と呼ばれる機関車の助けなしでもすいすいと超えていける力は持っていた。
進行方向から見てすぐ後ろの食堂車は、この時間ともなるとほぼ満席の模様。
この一等車からはすぐ食堂に入れるが、4号車から6号車までの二等車の客は、調理室の横の通路を通って食堂に入る。
どちらからもそれなりの客が食堂に入っては出ていく。
食事時間帯は少し過ぎているが、遅めの食事や食後に一杯飲みたい人は、この食堂車を遠慮なく利用する。
まして特別急行列車。食堂車での飲食に慣れた乗客も多い。
2号車であるこの一等車の通路、前の二等車からとこの車両からの乗客が時々、食堂車との間を行き来している。
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