第4話 プルニエ定食と珈琲 瀬戸の海辺の景色添え
列車が西ノ宮を過ぎ去ろうとする頃から、今度は女性の声で食堂車の案内。
ちょうど食事時間帯であることから、乗客を呼び込むことに余念がない。
実はこの二人とも、検札を済ませてすぐに隣の食堂車に入っている。
こちらも、満席というほどでもないが半分以上の席が客で埋まっている。
かの二人は、それぞれプルニエ定食を注文した。これは魚料理をメインとした定食。ビーフステーキ程も値は張らない。
この後のこともあるので、二人ともビールなどの酒類は頼んでいない。
彼らが食事をしているうちに、列車は三ノ宮に到着。
ここでまた幾分の乗客が乗車してきた。降りる客はほとんどいない。程なく三ノ宮を出発した列車は、宵の口の元町駅をエンジン音も軽やかに通過。
後にいわゆるブルートレインを「青い流れ星」と評した鉄道雑誌があったが、こちらは夜行列車ではないとはいえ、言うなら、「赤と白の流れ星」かのごとく、その足さっそうとを山陽路に進めていく。
神戸を通過したら、ここからいよいよ山陽本線。
新長田、鷹取、須磨と、帰宅客にあふれる電車駅のホームをよそ眼に最新鋭の気動車特急は宵の口の瀬戸の海辺をさっそうと駆けていく。海には、漁師の舟や客船の灯りなどがちらほら、蛍のようにその灯火を海辺に添えている。
かなり早く食堂車に入れたおかげで、彼女たちの食事は三ノ宮を発車する頃には早くも提供された。
そそくさと食べ終えた彼らは、珈琲をそれぞれ追加注文した。
どちらもミルクと砂糖を入れて飲むが、かの有賀氏は、横の若い女性よりも幾分多めの砂糖とミルクを珈琲に投入する。
「別にこれ一杯で粘らなくても、席に戻れば背もたれを倒してゆっくりできますからね」
横の清美女史も、相槌を打つ。会計はすでに珈琲を頼んだ段階で済ませている。
列車は朝霧を過ぎたあたりで少し海から離れ、街中へと入っていく。
明石、西明石と市内の中心駅を通過し、さらに大久保、魚住と、明石市西部の小駅を軽々通過。
食事を終えた彼らは、魚住の次の土山を通過して間もなく食堂車を出て、隣の一等車の背もたれ付きの座席へと戻った。
さらに幾分の乗客が、三ノ宮から乗車した模様。
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