第3話 点呼終り。いよいよ「へいわ」号に乗車!
「わかりました。それではそろそろ、出発いたします」
点呼を終えた父親である社長に、娘である従業員が返事を返す。
「では有賀社長、うちの娘、もとい弊社社員の岡山清美をよろしくお願い致します」
今度は同行する若い会社役員に向けて挨拶。
「承知しました。では清美さん参りましょう。本日は一等車を確保しております」
実は一等車に乗るにあたって、有賀氏と岡山社長の間でひと悶着があったが、それは既に結論が出ているため、特にこの件での指摘はない。
「それでは、有賀さん、清美さん。お二人ともお気をつけて」
父親でもある社長に見送られ、清美氏は有賀氏とともに大阪駅へと向った。
・・・ ・・・ ・・・・・・・
日が暮れてすっかり暗くなった大阪駅下りホームに、6両編成の気動車特急が入線している。
岡山・広島方面からのビジネス客がそれなりに乗車しており、大阪では席が約半分ほど埋まっている。その中には、大阪からの客ばかりでなく、東京方面からビジネス特急と呼ばれる151系電車から乗換えてきた客も含まれている。
二等車はおおむね6割、一等車は半分弱程度であろうか。
列車は、大阪駅を定刻に出発した。外はもう十分暗くなっている。
大きな川を越えると、もう兵庫県である。
その淀川を渡っている丁度その頃から、車内のスピーカーよりオルゴールの音が流れ、その後、男性の乗客専務車掌による車内放送が始まった。
福知山線との連絡駅である尼崎を通過し、さらに阪神間の電車駅を次々と通過していく。途中の停車駅は、三ノ宮、姫路、岡山、福山、尾道、三原、そして終点の広島と、各駅の到着予定時刻が案内される。
列車は6両。前から2両目、つまりこの清美女史と有賀氏の乗車している車両は一等車、その隣の3号車が食堂車で、あとの4両は二等車。
特別急行列車であるから、全車指定席である旨の告知もなされる。
後ほど車掌が車内に伺う旨と、次の停車駅が三ノ宮である旨案内され、オルゴールの続きがいくらか流される。
さほどの長距離列車ではないので、放送自体は他の列車よりも早めに終了。
一等車は車掌室から近いこともあり、別の車掌が検札をすでに済ませている。
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