第75話 合流《クロス》至徒排除戦(リジェクション)その3
「足引っ張んなよ女ァ」
「ナマ抜かしてんじゃねえぞ若造がよぉ。オレはトップランカーサマサマだぜェ!!」
呼吸を合わせるよう勝鬨に続いて弓野が吶喊。カージテッドに一直線に向かう
『オイオイ。雄一君から聞いてなかったのかな僕の性質を?』
「聞いてるからこそ効く対策で挑んでいるんだろうが!!!」
猛るように吠えて一連の動作を終えて破棄。黄金の一撃を初っ端かな惜しみなく勝鬨は抜き放つ。
だがそんな攻撃をカージテッドが受けるはずがない
黄金律の斬撃。呼吸 タイミング 速度 軌道で正確に剣撃を放つことで発生する世界の法則を味方にした勝鬨の必殺技だ
この黄金の一撃。比類なき威力の前にはいかなるものも例外なく断絶され
正攻法で切り結んで勝つことは不可能だ。故に影による迎撃は愚策
防御など度外視。回避しか選択権はない攻撃を前に否応なくカージテッドは回避を強いられる。
一撃は躱された。当然だ。攻撃回避は容易に行われた理由は単純であり
この黄金の一撃は
ひとつは予備動作に一連の動きを重ねその後に縦横斜め正面のどれかひとつを選択し一撃抜き放つ手刀の絶技。
つまり手を知られればどのタイミングで放つかが容易にうかがえる。そして名の通り一撃しか放つことができない為一回の回避で事足りる
もうひとつは黄金律の斬撃の速度だ。刹那にも満たない愚直の斬撃は人間の目で捉えられるほど
故にこの技は知られることが最大の弱点。
だからこそカージテッドは看破できる。
(わかりやすいほどのフェイク。次弾が本命だと単純すぎる
だから十手を一度に放つ
まだ奥の手を隠しているのかと思案していると続いて弓野が魔法で番えた一射を勝鬨の横すれすれで放つ
属性は十種類。十種の魔法を蓄積し放つそれの名は
「
だがその一撃はあえなく影の鋭角にてはじかれる
魔法の効果はない。打ち消されたように力が消えた一矢を見て弓野は推理する
(レベル差による魔法の打ち消しじゃねえ。魔法事態を無効化する影
だが雄一の話じゃ魔法は通じたはず…魔法を分析し
いったん身を引き体勢を立て直す。カージテッドまでの距離10メートルはプロハンターである勝鬨や弓野が至徒の初動を捉えられる必要な
「何だ?やっぱ遊んでやがんのかテメエ…?」
『種明かしをしよう。今の僕には魔法攻撃は通じない
一度受けた攻撃に耐性が付くから時には攻撃をあえて受けるのさ』
「あ!だからあの時の破魔のナイフを受けたんだ!??」
アリアの脳裏によぎる以前の戦いで投擲したナイフを受け吐き捨てた光景。
その理由がカージテッド本人により開示されたのだ
弓野も同じく腑に落ちた。魔法を無効化する破魔の特性ならば打ち消せるのも道理
だがそれは武器となる情報で明かすことで弱点を増やす行為に他ならない。
通常なら一笑に付す
明らかなブラフ。情報操作により状況を覆す魂胆が透けて見える。と本来なら思うだろう。
しかし雄一たちの反応は異なっていた。それを聞いてハンターたちは青ざめたのだ
理由は明白。これが至徒と人間の
普通の敵ならば聞き流す戯言だろう
だが相手は至徒であり未知の存在。1位の笠井を倒した本人の言だ。その言葉は重く質量を帯びたように全身に
絶望的な差の開きを口にすることで心を折る。
なまじ強いからこそ信じてしまう
カージテッド自身企図してやったわけではないが殊の外効果はてきめん。
こけおどしではなくただの事実通告が現実味を帯びることで暴力になる。
現にそれが本当なら唯一の対抗策である神代魔法が通じないことを意味するのは彼らにとって絶望でしかない
圧倒的な力の差、次元の違い。雲泥の差という表現すら生ぬるい彼我の差
それを聞けば普通のハンターならばたちまちひざを折り、
だがそんなものに屈する彼らではなく。冷や汗と苦笑を浮かべる彼女らとは別に
食い下がる男が二人。口端を上げて笑いながら
「俄然、やる気が出てきたぜ…!」
「俄然やる気が出てきたぜ!!」
異口同音以心伝心。勝鬨と雄一が口をそろえて同じセリフを言う
降りかかる絶望を燃料に闘志として燃やし続けるのは男のサガか
至徒の女形のミアリガルドも味方側の女子組は男の
その力強さに充てられて彼女らは自身を鼓舞することができた
(心を折る作戦は失敗。わかるよ、逆境が燃えるのは。
だが
次善の策としてミアリガルドの
ひとつカージテッドは嘘を吐いていた。あらゆる魔法。全属性の魔法すべてを無効化する耐性を持っているのは事実でアリアの破魔のナイフでそれを
だがあの神代魔法は別だ。カージテッド自身未知の魔法。前回受けて急遽特性を使ったことで無効化したのだが
今回それを使ういとまはなく使用すればたちまち屠られることは必定。
それほどまでに奥の手であり黄金の一撃しかり手の内が看破されればたちまち弱点に転じる禁じ手。
一対一ならば別だが今回の戦いは数が多すぎて一瞬の隙が命取りとなる。
そのためカージテッドはからめ手に転じ嘘の中に真実を混ぜることで信憑性を増させる作戦は成功した事は
実際真実味はある嘘は一割しか為九分九厘は事実のため完全な嘘ではない。
現に魔法が通じないのはハンターとして痛手だ。
信じたのは経験則と天賦の直感だろう。
よしんば嘘と切り捨てられてもカージテッドの優位は揺るがない。
故にそれを覆す存在に彼らは気づいていなかったのが唯一の誤算だが
≪マスター、神代魔法が効かないのは嘘よ≫
雄一も至徒に聞こえぬようチャットを用いキャシーに返答する
『どういうことだ?確かに嘘かもしれないけどあいつらなら出来そうな…』
≪根拠はあるわ。神々が魔王と戦った時神代魔法を用いて戦って
多くの従えた部下と魔王自身に傷を与えたと聞いたことがあるのよ
1万年前だから今は傷は残っていないだろうけど無限とも呼べる魔王に通用した事実が裏付けになっているはずよ。
あいつらが何者かはわからないけど魔王を上回っているとは思えない。前の至徒だって追い込んだじゃない?≫
それならば信用するに値し、なおかつカージテッドの
カージテッドの話とキャシーの言葉どちらが信じられるかなんて言うまでもない…!!
『オーケー。だけどそれなら真っ先に佳夕さんの防衛に努めないと』
≪駄目よ。佳夕ちゃんのところに回ったら嘘を見破られたことに気づいて
佳夕ちゃんを一斉攻撃するはずよ。そうなれば反撃ができず佳夕ちゃんも魔法を討つための詠唱が間に合わない。短縮できたといっても一呼吸で詰めるほどに奴らは強いわ≫
『ならどうする?神代魔法なしで戦うって方向性で良いのか?
俺はそのつもりだったけど』
≪いえ、神代魔法は使うわ。私がね≫
それはできないと意思表示にかぶりを振る。
佳夕さんが代わりに魔法を行使するのはキャシーの負担を減らすためだ
ただでさえ1割の力しか発揮できずそれに存在維持に注力しているのにそんな命を賭けるような真似…
≪アンタバカァ?みんな命張ってるのに私だけ安全圏なんてムシが良すぎるわよ
仲間なら私を信じて、マスターのフェアリー。キャシーを≫
それを言われたら弱いと観念してしまう。仲間の大切さは痛いほど痛感している
キャシーもまた俺と同じくらいいやすでにそれ以上に命を賭けているというのにこれ以上を求めてしまうのか…?
それを承諾したら下衆だ。だが仲間を信用しない屑にはなり下がりたくはない。
なによりもキャシーの信頼を汚したくはない…!!
俺は…放言する
『―
≪アハハッ!ナニソレ私の真似ェ?・・・当たり前よ。私が死んじゃったらこの世界の人々が危ないんだから≫
『それよりもキャシーの命が優先だ。世界なんて知っちゃこっちゃねぇ…!!』
≪はは、アンタ、マジタラシね。シラフでそんなセリフ言えるなんて≫
『悪いがマジだ。大マジだ』
茶化すつもりは毛頭ないし真剣そのものだ。神妙な顔を見てそれは分かっているはずだ。俺は絶対に誰一人仲間を犠牲にするつもりはない…!!何を引き換えにしても
≪はいはい、わかってるわよ。私だって死にたくないし
だから、マスターの力が必要なの≫
そういわれてキャシーは耳元で内容を囁く
そして≪出来る?≫と聞かれて即断で首肯する
言うまでもない。出来るしやるに決まっている
何よりもすごく気が楽だ。キャシーの言う方法で一番負担が大きいのが俺という事実が
キャシーが肩に乗る。奴らにキャシーが見えていないことは先刻承知だ
『振り落とされないよう力いっぱいしがみついてろよ』
≪どんだけアンタと一緒にいたと思ってんのよ。慣れてるわよこれくらい≫
そう言ってカージテッドと距離を測る号生と弓野さん
控えともう一人のゴシック服の至徒の出方をうかがっているアリアと佳夕さん
その後ろに待機していた俺が狙うべきは決まっている
「カージテッドォォオオオオオオオオオオッッ!!!!!」
宣戦布告するように敵の名を叫んだ。一直線に奴の懐内へ
迎え撃つ為に名を呼ばれた故に敵もまた俺の名前を呼んだ
『来るか、鹿目雄一…!!』
接近までの時間は一秒に満たない。そして攻撃予測は瞬きよりも早く帰結する
いかなる攻撃を仕掛けてくるか。双方未来予知めいた演算で攻撃法を20
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