第68話 ニュージェネレーション MMO!!

MMOゲーム創設者直々にお迎えしてもらい俺はたじろいでしまう

名前だけは知っていたがどういう人柄かは知らない。ニュースやテレビなどメディアに出てはいるようだが生憎俺はそういったものは見ないタチなのだ


入り口で待っていてくれて丁寧なお辞儀で迎え入れてくれた上に出迎えた社長さん直々に先導してもらい社長室まで案内してくださった。


社長室は漫画やアニメでよくあるガラス張りを背面に机が鎮座ましましている

直射日光とかじかに当たってまぶしそうというのが素朴な感想


そこへ腰かけ用意されていた椅子へ促されて俺たちも座る


「前置きや社交辞令はさておいて」と社長さんは一拍置いて


「本題に入りましょう、鹿目雄一様。本日わが社が開発した新たなMMOアップデートはただの更新ではありません。ドローンを用いたアバターや異世界へ疑似的に体験できるというものです。そのプレイヤーとして貴方様が選ばれました」


「意外ですね…異世界には誰も興味がいかないとばかり」


弓野さんも横で驚いた様子でいる。俺も驚きだ。言葉通り異世界への関心というのは誰もないと思っていたからだ。

そんな最中で関心を示しているのが政府公認のハンター育成ゲームを推進している社長さんだとはだれも思わないだろう


「いえいえ、魔王討伐は大変困りますが異世界への進出はわが社としても嬉しい躍進ですよ。新たな地形未だ見ぬ世界。ゲーム開発者として興味が尽きませんよ」


にこりと朗らかな笑みと口調は屈託がない。

何も着飾らず丁寧語でありながら学生時期から成人まで間もない年下である俺と弓野さんにプライベートな対応でなおかつ対等に話しているのがうかがえる


「でもなんで俺も呼ばれたんですか?ゲーマーの人はたくさんいると思いますが」


「弓野さんたっての希望もですが我々も貴方のことは注目していましたよ鹿目雄一様。総てのマップを埋めるマッパーとしてね」


はえー。ゲーマーって程裏ダンジョンやら隠し要素アイテムには手を付けていないけどマップに関しては総て埋めている。

…ヒュドラ以外。まあともかくおおよその話はつかめてきた。俺と弓野さんを推薦した理由としては何も目論見がないわけがない。

異世界関連ならなおさらだ。多大なメリットがなければ政府が許すはずがないからだ


「異世界でのマップ埋めと調査を協力してほしいってことですかね?」


「ご明察でございます。ハンターとしてもマッパーとしても随一の雄一様を見込んでのお願いです。そして異世界転移の際レベル1になる原因を掴めればこれからワンダーグラウンドはレベル無制限解禁へつなげれれば嬉しい限りです」


さりげなくとんでもないことを言いのける社長さん。政府から許可が下りた理由と目的を隠すことなく打ち明け、そして信頼を得る為に包み隠さず話す姿勢は社長足る貫録を見せていた。


マップ埋めと調査。そして本音はレベル上昇のヒントが異世界にあるかもしれないという推察。普通ならば一笑に付されたであろう理屈であるがそれを通し道理にした人のいう事は違う。


天才というのはこういう人の事をいうのだろう。自身を信じ他人にどう言われようと無謀ともいえる道を信じ突き進み続ける心と挑戦。その凄みを俺は社長さんから感じている…!!


狙いとしてはつまりゲームひいてはリアルでもレベルを上げれる方法があるかもしれないということだ

ワンダーグラウンド唯一の不満要素はレベルが20までしか上げられない


それを用いたレベルが上の相手と戦うのがコンセプトであるが俺TUEEEE無双をしたいプレイヤーも数知れない。レベルを上げれない理由は明白だ。

リアルでレベルが縛られているので現実での限界を仮想現実でも再現できないのだ。


現実でのレベルを超えたシュミレートをした場合現実とのズレもだが存在しないはずの領域レベルにいるので脳だけでなく肉体に負荷がかかり過去にそう言った失敗もあってかレベル20以上のハンターゲームは存在しない。


無論30の壁がある為最大30まで引き上げれれるがそれ以上リアルでも上がらないという現実を知り空しくなるという事例もあってレベルは20までに調整されている。


その為ワンダーグラウンドはレベル20は誰でも行けるレベルでなおかつ縛りプレイとして楽しませるという手法は見事だと思う。

逆を言えばハンターゲーは政府公認のこれしかなく他は淘汰されている。

ゲーム好きというカテゴリーにいるならば現実にいるハンターをわざわざゲームで楽しむ必要性はない


話は脱線したが限界ぎりぎりを娯楽へ昇華させたハンターゲームワンダーグラウンドだが

その追加コンテンツの拡張オーグメントを社長さんは試みているという事だ


限界があるという懊悩煩悶アゴニーは物を作っている立場ではない俺には測りかねるがゲームの成長とハンター成長のメリットを結び付けて政府と交渉し取りつけた社長さんの采配は感服を禁じ得ない。


「でもよォ…レベル上げってのは夢見すぎじゃねえの?」


「はははっっ、無論、論拠ろんきょありきの計画ですよ

机上の空論では政府は動いてくれませんからね」


「それもそうかぁ…」


「その理由を今からお二方にお話しします。口外は厳禁でお願いしますよ?

弓野さんも配信でお話しないでくださいね?」


「いやオレはそんなうっかりさんじゃ…ってええええええ!??話すのか!?そんなヤバ気な案件をオレらに!??」


「驚くところですかね?」


「いや何でオメーは平然としてんだよ!??オレの知らない修羅場とかくぐってんのかぁ!??」


まあ、驚くことは多々あったからなんかフツーに感じていたがやはりヤバイ案件なのかコレ?女神さまや改造人間にトップランカーとの至徒バトル。色々ありすぎてなんか感覚マヒしちゃったな…


「お話していいですかね?」


「お願いします。弓野さんも静かに聞きましょう」


「何でお前が仕切ってる&冷静なんだよ…。…………おかしいな。オレの方が経験豊富なはずなんだがな…」


何やらブツブツ呟いている弓野さんをよそに俺は拝聴に耳を傾けて

社長さんはゆっくりと話し始めた


「実はレベルについてですがドローンによる調査で異世界のモンスターのレベル測定をした結果。レベルが100を優に超えていたんですよ」


「レベル…ひゃく?」


あんぐりと絶句している弓野さん。そして続きを促す俺に対し社長さんも軽く驚いた様子で訊いてきた。もちろん弓野さんも続いてだ


「驚いていない様子だね?」


「そーだぜ!!?レベル100だぞ!??トップランカー以上だぜ!??」


「あ、えーと…魔王がいるって言うなら不思議じゃないかなーと思いまして」


即興だが上手い言い訳でその場を凌いだ。普段はテンパっている俺がこんなに冷静なのは短期間で色々あったせいだと思う。


それに言い訳も的を外しているわけではない

無限の魔力を持つといわれる魔王がいる世界だ。

レベルがインフレしていてもおかしくはない。


現に永久機関ダンジョンをいくつも作り今も絶え間なく魔力を流出している魔王とその麾下きからしき至徒の強さ。

それらを考えれば驚くに値しないのが正直な感想だ


「私個人聞きたいことができたけど話を続けよう

端的に言えばレベルの制約というのは人間の限界数値でもあり

同時に環境によって制約を課されているのだと私個人は思っているんだ」


「つまりよー。異世界って空間ならオレらもレベルの縛りがなくなるっつー訳か?

極論過ぎね?モンスターと人間は違うしよ」


「そう思っていたんだけど調査の結果人間の魔素洞調律シンクロニシティもまだ未知の部分があると判明したんだ。

そして異世界のモンスターがそんなに強いとなるともちろんそこに住む人間も強くなければならない。

こっちの世界と向こう側の人間。

違いはあるだろうけどやはり根底は同じ人間だ。

だからこそ環境によってレベルが縛られている可能性が浮上するんだ。生物は環境に帰属する。

普段こっちの人間はダンジョン外でレベルやステータスに関係なく生きている。

だからこそ成長する必要性が低下していると視座しざしているよ私は。

環境が違えば肉体にも異常をきたす。逆に危機的状況化に置かれれば進化を余儀なくされる。その理論をもとに異世界ではレベルがこちらより上で我々も上限を超える可能性が出てくるんだ

レベルが初期値になるのもひとえにレベルの順応が出来ていない状態にあると考えている。逆を言えばレベル順応すれば制約という枷もなくなる可能性があるんだ」


「安穏だからレベルが上がらねえって言いてえわけか。否定できねえな。

まあ仮にそうだとしても、オレらへの依頼自体困難なのは変わりねえし。

どれだけレベルが高くても初期値の戻ればレベル差の開きで異世界行ったとたんに死ぬのは明白だぜ?笠井だって出来そうにねえよ。

オレらと素人じゃプレイヤースキルや経験の差があれど彼我ひがのレベル差は絶対数だ。ジャイアントキリングのオレでもレベル1でレベル100相手はかなりきついぜ」


「そこでわが社の出番というわけだよ。MMO技術を応用したアバターを現実世界に投影する技術に成功したんだ。もちろんレベルは変動しない。アバター自身は今までのハンターの経験を詰めたAIだけどこれから君たちには実施という形でアバターを作らせてほしいっていう訳さ」


「要は実験モルモットってわけか?なかなかどうしていい根性してんな?」


今までAIで実験してきたアバターシステムをプロハンター自身で実験台になってくれ

それは捉え方次第では侮辱に値する。とはいっても弓野さんが憤慨していないのは分かっている。それほどの覚悟があるかと社長に問いかけているのだ


「嫌なら断ってくれて構わない。リスクを承知で頼んでいるわけだし

何よりトップランカーの弓野さんに異常をきたす真似は政府としても迷う決断だったからね。でも私個人としてはお願いするよ」


「はーん………………オレは良いぜ?危険なことは慣れっこだしよ」


一瞥弓野さんは俺に視線を送り社長さんも俺に水を向ける

俺の返答はどうか…そんなの、決まっているじゃないか!!!!!!!


「やるに決まってるじゃないっすか!!こんな楽しそーなこと断る方がどうかしてるっすよ!!!!」


感極まって敬語が崩れてしまうが目をつむっていてほしいがテンション上がらないわけにもいかない。

ハンターはスリル求めてなんぼだ。そんなワクワクしかない提案。蹴るはずがないぜ!!

理想の返答を得た事で社長さんも満面の笑みを浮かべてうなずく


「良い返事だ。ではシュミレートルームへ案内するよ。

キミたちを土台にテクスチャを構築しアバターを造り出す

協力…感謝するよ」







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