第63話 ヴァーサス
ダンジョン外へ脱出。控えていたヒーラーの人たちは突然移動してきた俺たちに驚いていたがそんな場合ではない。遅れてしまったが状況の報告を伝える
「至徒を発見!他のトップランカーの招集お願いします!!」
「なに…!他にもいたのか…!!」
「え…!」
「五か所総てに至徒の報告があったんだ!これはマズい…!さっきから連絡が取れないんだ…!」
専用の連絡機に向け応答を求めるも返答はない。戦いでそんな暇がないのか
ジャミング機能を持った至徒がいるのか…もしくは、全滅…?そんなはずはない
明らかにやつらは遊んでいる。おもちゃをそうそう壊すような真似はしないハズ
ハンターを危険視しているのならば早急に殲滅に向け動いているからだ
*********
ありえない。と思わざるを得ない。
笠井隆吾は初めて敵対した相手に攻めあぐねていたのだ
紫電を纏い間髪入れず叩き込む攻撃を。カージテッドという至徒に一向にダメージが与えられない
『いや早いね君。僕の仲間でもそこまで早い奴いないよ
人間もなかなかやるなぁ』
本体が影であることは早々に看破していた。だが決定打を与えられない理由は
単純な相性差だ。
雷電を駆使する笠井にとって光り輝くというのは仕方のない事象だ
それがよもや悪手になるとは思いもしなかった。
カージテッドは笠井を影の緞帳に包み込み光が一切差さない闇にひとり光輝を放っている
相手は影であり闇である。それ故に輝いている自身の存在が闇の中露呈し逆にカージテッドの影を視認できない。
通常闇に影は作られないが笠井が光を放っている限り影は作られ続ける。
そして光を放つ為に一挙一動筒抜けだ。
相手の攻撃を視認できずそしてカージテッドは闇の中電気を纏っている笠井が目立つことで悟られることなく不可視の攻撃を与えることが可能。
闇に溶けた影の攻撃は周囲総てに展開されている。
故にいかな攻撃が放たれるか笠井に認識することは皆無。
最早勝負は決した。カージテッドの無尽の影の攻撃を前に倒れ伏せることしか出来なかったのだ
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2位の鎧の騎士は言葉を介さない。そして現れた至徒はブラフであり幻影の存在故に攻撃が通らない。名をユーミディア。幻影の至徒であり物理攻撃は総て通り抜ける特性を持つ
このまま戦ってもジリ貧と判断し即座に撤退。他パーティーのハンターも決定打を与えることができない為逃げに転じる
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「…なんですかアナタ。ジラしているんですか?さっさと攻撃してくださいな!!」
工藤の叫びは空しく響き至徒の一人『ミアリガルド』は攻撃を一切行わない
特性『身代わり《モノドール》』を持つ彼女はカウンター型の戦術を取り
身代わりとなる人形に攻撃を与えることで倍返しにするサクリファイス
攻撃しようにも至徒の中で攻撃に特化していない彼女自身攻撃する術はない
時間経過とともに工藤のデバフが最高潮になっても同じく呪詛返しの工藤とは戦いという土俵にすら立っていない。ゆえにあるのは
「ああ…もう。放置プレイだなんて初めてですわァァァァァァァッッッッ!!!」
『うわぁ…』
片や悦び片やドン引きしている光景は見るに堪えない。別の意味で
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『どうやら順調に事が運んでいるみたいですね。私の采配はやはり完璧ッッ!!
特性『配置』は今回も絶好調であるなぁぁぁ!!』
「なに手の内明かしてんだコラ。お前の相手はオレだろうが!!」
気炎を上げ戦意を向けて重圧を与える弓野に対し至徒『メルエモス』は
『怖い怖い!吾輩の役割はすでに完了している!!故に取るべき行動は一つ』
「・・・・・・・・・」
至徒という存在は凶悪で何よりも強いと前情報から聞いている
だが目の前のこいつにそんな気配は感じられない
睨みこれからどう攻め入るかを考えて神経をとがらせていると
『戦略的撤退…デアール!!!!!!!!!!』
「はぁ!!!!????」
敵を前にして至徒は遁走逐電し一目散にその場から消える
戦闘態勢を取っていたことがあほらしいくらいに肩透かしで
そして逃がした事を悔やみながらその場を彼女は後にした
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「え…?」
連絡機を持っている予備のハンターはこの世の終わりのような
ありえない絶望に声が出ないような声を上擦る
そして二の句がその絶望を表していた
「どうした?山乃?…」
「…嘘だ…あり得ない…!!!」
連絡した先の声を聴いたのは彼だけで俺たちは何も聞いていない
現状を聴くように促し閉口している山乃という青年は一言、呟いた言葉は
「トップランカー。全員敗退…。特に笠井さんは重篤で戦線に再帰が不明…」
「…はぁ?なんだそれありえねーよ!!トップランカー。プロの上澄みの上澄み
人を超えた人外の集まりが何で負けるんだよ!!!」
声を張り上げるのも無理はない。現状総てを把握しているわけではないが
勝鬨さん以外のトップランカーは至徒相手に敗着し特に一番強い笠井さんが危篤状態にあるというのは。絶望以外の何物でもない
「知らねーよ!!!俺だって信じたくねーよ!!!!他のランカーは無事らしいけど
何で笠井さんが負けるんだよありえねえだろ!!!!」
ここまで来てようやく。事の重大さ。至徒の脅威レベルが人間に手に負えないという事実を皆が咀嚼できた
笠井さんの敗北はかなりの痛手だ。最強戦力を失っただけでなく士気を大幅に下げる要因となる
もはや、なりふり構っている場合ではない。そう意を決して俺は
「すみません。俺のパーティー連れてきていいですか?
俺のポテンシャルを引き出すために必要なんです」
「知るかよ!勝手にしろよ!!もう俺たちに打つ手はないんだからな!!!」
その言葉を待っていた。リジェクトについて黙秘という約束を反故するが状況が状況だ
ダンジョン運営を経由し事情を話しアリアと佳夕さんを招集する。キャシーはバレるとまずいから待機をお願いした
さあ、ここからが正念場だ。頼むから生きていてください勝鬨さん
今救援に向かいますから…!!
「何か手があるの?私たちに協力できること、ある?」
そんな最中三崎さんは俺に声をかける。
どうやら気が付いたようで現状を神谷さんに説明してもらったようで今の状態を把握しているらしい。
お二方には申し訳ないが三崎さんや神谷さんとは数分だけの付き合いでこれと言った感情はない。
俺は基本コミュ障で他人を信用しない。
だからこそ三崎さんの提案を無下にするだろう。
これから最善に戦う為には元のパーティーを招集して他の人物を入れないことで最高のパフォーマンスを発揮すること。
それ故に彼らは申し訳ないが邪魔にしかならない。
だがこの時は不思議と、自分でも何を言っているのかわからなかった
親切を無為に出来ない良心の呵責というものがあったのかそれともこれが最適解だと導いたのかわからないが
紡いだ言葉に俺自身驚いてしまう
「ではこれから俺のパーティーを連れてくるので
その支援をお願いします!」
これは流石にあんまりだと思った。
その辺のぽっと出相手がプロハンターに支援を要請するというのは身の程が過ぎる。
そんな口を叩けば反論の一つは出るだろうと思ったし何より驚いたのが短い間しか組んでいない二人に心を開いていた点だ。
俺は、何か変わったのだろうか?とにかくプロの泥を塗る発言を前に二人は
「良いぜ!とっさの判断ができたアンタなら信用できる!」
「任せておいて!プロの矜持見せてあげるわ!!」
首肯し同意。驚く間も理由を聞く時間も惜しいので俺も頷いて仲間を呼ぶためにスマホを用い
仲間を招集した
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