第58話 魔法銃《アレイシア》 籠手《オートクレール》8 完
右手の道を往き順風満帆。なんの障害もなく俺たちはミスリルのある発掘場へたどり着いた
露出している金属は今までに見たことない。
これがミスリル。と言いたいところだが
ここでダンジョン不思議話。
レベルやスキルにステータスと
これまで現代になじみ深い戦闘スタイルに落とし込んだ対ダンジョンモンスター用の力であり
モンスターもまた倒すと肉塊ではなくドロップアイテムとなって霧散していく。
ドロップアイテムは魔素構成を維持できず魔素に返還していくのと一般人がモンスターを屠ることへの抵抗をなくす為だと推論がある。
まあ確かに肉塊から肉やら骨やらを解体するのはグロテスク極まりなく
そう言った意味も込めてダンジョン関係は総てゲーム演出のような構築がなされている。
ダンジョンのトラップもそう、人間がいたずらで考えたものや残虐性を具象化したようなものまで多種多様だ。ならば採掘はというとやはり現実のものとは差異がある
ここもまたゲームと同じく確率変動によって手に入れられるアイテムが変わっておりランダム性となっている。
採掘の場合幸運値を上げるなどの対策が効果がある。
鉱石を求めるならば運が高いハンターを連れていくべきだろう。だとしてもやはりラックはラック。
いくら運が良くても
希少度が高ければ高いほど当たる可能性は低く更に人間の射幸心や物欲センサーも深層心理に組み込まれている為か求めれば求めるほどドツボにはまる素敵仕様。
クソが。
不平を漏らすハンターも多数おり採掘は作業ゲーと揶揄されるものだ。トップランカー1位も例に漏れない。
いくらレベルが最高位で一番幸運値が高くてもやはり確率変動と物欲センサーの
というのが問題だ。
つまり…最高レベルで最低300回でミスリルを当てられる確率の低さ。そんなに確率低くなくね?と思うだろう。
笠井さんの場合はそうだ。だが一般ピーポーの俺たちならばどうか。
そう、砂漠から縫い針ひとつ探し当てる確立に収まる。
笠井さんとのレベル差は近いようで遠い。
レベルが多く手に入れられるほどその人のステータスは向上していく素敵仕様。
計算としてはレベル差&それによる恩恵の+。つまり一万や十万のステータスを往く笠井さんと三桁程度の力量しかない俺達とでは比較対象にもならない。
それほどまでに残酷なレベルシステム。
キャシー曰く神の不平等ではなく本人の素養を引き出しただけで恩恵自体は平等に与えているらしい。
それは元来の才能を数値化しただけに過ぎず。数字にすれば力になるという証明。
才能の数値化というのは物量の暴力と言える。レベルを上げて物理で殴る。
これが絶対法則。逆に言えばこうでもしない限り魔王に肉薄できない証明でもあるとされる。
…と、滔々と語るのには理由がある。じゃあジャイアントキリングとか存在しねーじゃんとか現実は残酷だだとか俺はそんなことをのたまいたいわけではない
…先だっていったが数を力にする暴力が基本とするハンターはいわゆる戦闘のデータ化。やはりゲームというシステムに即したプログラムに過ぎない。
ダンジョンはゲームと考えるとする。現実はゲームだだとかそう言ったものではない
法則性に従うという意味では現実もゲームも同じ。
だがダンジョンをゲームと考えると話は違う。そう、ゲームと考えればやりようはいくらでもあるという事だ
チート。バグ。反則技。それらはダンジョンにおいても適応されている。
なまじゲームシステムを戦闘化したせいかその辺もダンジョンに反映され
最新の情報なためか最近になって通常ならありえないことができるのだ
とはいえそういったバグ技はまだ発見されておらずチートなど見つけたころにはハンターは廃業となるだろう。
前置きはこれくらいだ。物理的な合法チートがいま俺たちのパーティーにいる。
それだけを言う為に
ピッケルを持つのは俺ではない。佳夕さんである佳夕さんには凄いスキルが備わっている。
『確率操作』運を半分下げる代わりに自由に運を操作できるというデメリット無しのチートスキルだ。
こと戦闘に於いて確率操作のデメリットは操作する運の対象のみに注力しそれ以外の幸運がなくなるというデメリット。
佳夕さんの場合は大型魔法の構築と完成の精度を上げる為に
確率操作を使用したとして魔法の完成度は確固たるものとなる。
それに応じて隙が大きくなりダメージを負う時必要以上の攻撃や
あらぬバッドステータスが加算されるといった戦闘面では確かにマイナスになりうる要因を持つ。なにより確率操作の対象は一つだけ。
逆転の切り札たりえる可能性を秘めた運否天賦のスキルは万能ではないのだ。
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だがそれ以外ならどうだ。確実に大当たりを引けるクジ。
幸運が半分になったとしてもやっていることは採掘であり戦闘ではない。
ピッケルが壊れるという不運があるかもしれないが金のピッケルは絶対に壊れない仕様である為そんなことは起こりえない。つまり運を半分使う事で確実にミスリルを引き当てる裏技が確立されているのだ…!!
「ふひー…!大変ですぅ~~~~!!!おもたい…」
重たいピッケルを慣れない肉体労働をもって振るう佳夕さん
俺とアリアは応援しかできない。確率操作は佳夕さんにしか使えないからね…!!
「ガンバー!あるだけ全部かっさらっていこうぜィ☆」
「いや流石に必要分のミスリルと…ここまで来た戦利品なら文句ないな!!」
そう、300階というハードな環境にいるのだ。ここまで来た血と汗と涙を紡いだドラマのご褒美ならば仕方ない…!
流石に無限にあるわけではないのでミスリルは三つと条件に出された数に絞りそれ以外の金目のものやレア系の鉱石はガッポリ頂いていく。
トップランカー様ならばいくらでも行き来できる区域。ならば彼らに必要なさそうなものを総て頂いても大丈夫ではなかろうか…!!
金に目がくらむのも仕方ない。
壊れないピッケル。確定レアゲット。最高に条件がそろっており二度もないチャンスである。
こんな好機にあるだけ総て頂いていくのは俺だけではないハズ…!
まあその為に佳夕さんに苦労を掛けてしまうのは申し訳ないと流石に思った
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―――――――
「…早くね?」
「何年かかると思ってたんすか…」
いの一番のセリフが早くね?はないと思った。まるで俺を信頼していないみたいで侵害である
「いや一生無理だと思ってたが」
「信じてよぅ!!!??というか手に入れられないと思って依頼受けたんすか!?この詐欺師!!!」
心外というかもう憤慨に変わって普段言わないような
報復に神代さんも
「うるせえな!!!!!普通持ってこれるシロモンじゃねーのは分かってんだろうが!!!!諦めさせる方便だと思うだろ普通はよ!!頭お花畑かオメーは!!!」
「俺の真剣度舐め腐ってやがりましたねこの人!!!??追加でタダでやってもらいますからね!!!」
いがみ合い罵り合いながらも俺と神代さんは双方心の丈
「…ふ、は。はははははははははッッッ!!!!こいつは大バカヤローだぜ!!マジでやりやがったなオイオイ!!!!」
「はははははっっ。たりめーっスよ!!まあ色々運に助けられましたが何とかなりましたよコノヤローッス!!」
豪快に笑い合い拳を互いに合わせる。これも男の友情の形だ。もちろん互いに本気ではないジョークである。
「ははは…っっ!!ホントマジおもしれ―なオマエ。
しゃーねえ。約束は約束だ。
「頼みますよ。最高のやつお願いします」
互いに信頼を置き関係を築き上げられた気がした。
俺としてもこういった軽口をたたく相手はそうそういないので中々に嬉しい。
早速武器を鍛造する為にミスリルを受け取り鍛冶場へ向かう前に神代さんは踵を返して
「そういやーよ。武器の名前は決まってんのか?」
「え?名前…ですか?そういうのはあらかじめ決まっているものじゃ…?」
「そりゃそーだがお前専用の武器だぜ?雄二の餞別ならともかくそれ以外ならオメーが名前つける義務がある。まあないなら俺が勝手につけるがな…」
名前。確かに自分だけの武器ならばつけたいものだが…
というかそんなこと思いもしなかった。我ながら間抜けだ。自分のものならば名前を付ける権利くらい思いつくだろうに。
まあと言ってもないわけではない。だがネーミングセンスに自負があるわけでもないので試しに訊いてみる。
「ちなみに名前の候補は?」
「つらぬき銃にカチカチ腕だ」
「はい俺が決めます!魔法銃はアレイシア。
「あいよ。じゃ、造ってやるから
今度は冗談か分からないジョークを言い放ち、意地悪く笑いながら鍛冶場へ向かう神代さん。それに対し信頼を預けて背を向け俺は帰路へ向かう
新たな武器アレイシアとオートクレール。
これによって俺はどう変化していくのか見当もつかない。
でも確かに言えることがある。このふたつを作ったことは決して無意味ではないし
俺には魔法銃が使えないからチャレンジしたわけでもない。
新たな可能性。俺だけの戦術を編み出すために魔法銃は必要だという事
俺だけの唯一無二。それを造り出すために魔法銃は必要なのだ
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