第57話 魔法銃《アレイシア》 籠手《オートクレール》6
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「ミスリルはね…ダンジョン300階に存在するんだ。
僕らトップランカー以外足を踏み入れていない区画で
このダンジョンは特殊でワールドから始まりラビリンスへ進む逆方式で
迷宮を探すことが肝となる場所だ。」
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トップランカーのみが入れるポータルへ装備を整え俺。キャシー。佳夕さん。アリアでダンジョン攻略へ臨む。約束通り(?)ミスリルの所在と入手法を脳裏に刻み想起する
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「その迷宮を探すのがとても大変で結界術式みたいなもので覆われていて発見ができない。解除するために同じく結界魔法が使える人がいなければいけないんだけど…え?いる?凄いね…。手間が省けたよ」
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確かに運がいい。結界魔法が使えるアリアが同行し結界の解除を彼女に頼む
それに対し不服そうに頬を膨らませる佳夕さんだが適材適所というものがある
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「それで、ラビリンス内に入ったら必要なのがピッケル。鉱石が露出している部分を掘り出すのを都合300回。確率変動でまちまちだけどそのくらいでミスリルは出てくるんだ。ゲームみたいだよね確率って。まあゲームみたいなのが中々面白いよねダンジョンっていうのは。ああ話がそれたね。それで僕から餞別。金のピッケルを貸してあげるよ。これも特殊な金属でできていて何度掘っても壊れないんだ。返してね?無いとすごく困るから」
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そしてアイテムボックスには金のピッケルを笠井さんから貸してもらった。
これは一つしかないらしく必ず返すという約束の元譲渡を許された。
もちろん還すし盗んだら後が怖い。
これをアリアに話したら「1位のくせにケチくさーい☆」とか言っていたことは内密にしておく。
ナンバーワンに向かってなんてことを…と思いながらも実は俺も正直思ってしまったのも内緒だ。
不経罪で死にたくないからね!!
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「そして最後に、モンスターのレベルは300。
300に何の意味があるかはわからないけど300階は特別な場所として指定されていて僕たちはその黄金の土地をこう呼ぶ。『
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場所の名前はエルドラド。まさしく黄金の大地にふさわしくそのステージは目がくらみそうなほど黄金に囲まれ輝いている。大地というよりこれでは海だ。
ワールドのいたるところに黄金が出来ていてすべてがきらびやかに黄金で構築されている。
出てくるモンスターも
そんな綺麗な、というか宝石と金で酔いそうなほどあふれかえった金銀財宝の土地でなぜ俺たちはレベル300相手に平気かというと
笠井さんに貰った特殊な指輪のおかげだ。
この指輪はモンスターを寄せ付けず俺たちが格下だとわかっていても忌避感を抱かせる特殊な効果があるらしい。モンスター避けというアイテムは知っている。
戦いを避けるためのアイテムで特定のモンスターの苦手な匂いを含ませたものだ。だがそれが芳香ではなく指輪とは変わっている。
何か指輪に苦手意識があるのだろうか。黄金の世界にて指輪もまた宝石を彩る装飾品だ。だというのになぜと疑問に思っていても俺には全く理解できないだろう。
先端恐怖症や集合体恐怖症のように輪型恐怖症という深層心理が働いている。のかもしれない。そんな病名聞いたことはないがモンスターは人間の潜在意識の具象化体だ。理由としてはそれくらいしか思いつかない
「すごいねー☆ホントに魔物が近寄ってこない」
「うーん。退魔効果はあまり見られないんですがねー。不思議です」
「え?そういうのわかっちゃうの佳夕さん!?」
「魔法使いですから。エッヘン」
魔力の流れが視認できるのだろうか。魔力を持つものの特有の能力かもしれない
これはMAGがあっても備えられない魔力持ちの特性だよなーと羨ましがっていると
なにやらキャシーが興味ありげに指輪を無言で眺めている
≪・・・・・・・・・・・≫
「ん?どうしたのキャシー?・・・ははーん。羨ましいか?」
≪ああ…。魔王も同じ指輪をしていたなーってね≫
それを聞いた瞬間その場の全員が絶句した。
魔王の指輪???魔王って指輪してるの??というかそんなもの俺がつけてて大丈夫!??
そんなやべー代物を取り外そうとした俺を呼び止めてキャシーは言う。そして軽率だった。ここで指輪を取ったら魔物に蹂躙されることを失念していた
≪大丈夫よ。魔王みたいな凄絶な魔力は感じない。多分形だけ真似た代物ね
人間というより異世界の人間や魔物の恐怖意識が反映しているのね
トップランカーの人は知らないみたいでしょうが≫
それに対し一斉に俺達はキャシーに突っ込む。当たり前だ。
「いや重要すぎる案件やないか!!!!!!!!!!!」
「そうですよ!!!!魔王さんの情報何で教えてくれないんですか!!!!」
「確かにねー。そう言った情報は女神さまが降臨した時にいうものじゃない?」
≪ごめんって!ちょっと忘れてたの!?女神の時は…あれは。緊張してて≫
まあ、わからなくもない。コミュ障の俺も理解できる。
人前に出て物を伝えるというのは困難極まる無理ゲーだ
うんうんと異口同音している俺にキャシーはなぜか「お前と同じにすんな」という視線を向けような気がするが気にしないようにした。キャシー。お前は俺のソウルメイトだ…!!そんな一瞥をキャシーに向ける。キラッ☆
≪ちげーっつってんでしょーが!!!!!!!!≫
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≪雄一という男。人望が厚いな。流石アリアが慕情を抱く男だな≫
≪そうだな。佳夕が好くのもわかる気がする≫
雄一が聞こえないフェアリーの二人。佳夕のフェアリーヴィクターと
アリアのフェアリー『ガルム』は遠目で彼らの様子を眺めている
二人とも無二と判断したマスターが認める男。鹿目雄一を認めているのは彼女たちだけではないという事だ
≪フォローに入れないのが残念だ。フェアリーはマスター以外に干渉できない
しかしなにゆえキャシーというフェアリーは俺のマスターに干渉できるんだろうか?≫
≪私にも分かりかねる。そう言った情報を伏せる意味があるのだろう
我々はAIにして運営の道具。自由意志など端から無い身だ
廃棄しない不合理さが不思議ではあるがな≫
≪俺は運営側ではない。政府側のフェアリーだ。それを承知だろうが
俺だけに話してもフェアではないだろう。それが彼女なりの思慕というべきか≫
過剰な感情が搭載されていない機械的な思考の為合理に即した二人はそう結論付ける。
だが実際はそうではない。女神故に感情を持ち合わせたキャシーは自身を女神だと気取られないことは考慮に入れているが主な理由としては
『
という天性の女の勘によるものであることを彼らが知る由はない。
確かに雄一は異性よりも同性と話している方が気が楽な男特有の性質を持っているのでその判断は正しい。キャシーが雄一と話す機会が失われるのは確かだが
自身のエゴを優先する辺りはあまりフェアリーとしての本分を忘れているきらいではあるが
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魔物を避けアリアが先導する。結界のある区域。指定された座標につきアリアが結界の存在に気付いたようだ
俺には何もない風景が広がっている様にしか見えずそれが認識阻害の結界の効果なのだろう。素人目には全く判別がつかない
アリアは見えない壁に触れ目を閉じ詠唱を唱える
『ウァー サリアス ケシャリクト コースガルデ ケッカ…』
謎の言葉。どこの言葉にも属さない言霊を紡ぎ障壁に亀裂が走る
はた目からすれば空間にひびが入り見えないガラスが砕けていく光景が目に入る
「さ、開いたよ☆ここまで順風満帆。300階と聞いてどうなるかと思ったけどラクショーだね☆」
「それフラグでっせアリアはん。不吉な事言わんと下さい」
「
相変わらずの戦闘センスに舌を巻く。状況把握に冷静は判断力は依然として健在だ
訓練されたのは伊達じゃない。すぐに熱が入って戦いに没頭してしまう俺とは違い
こと戦いにおいてアリアは頼もしいことこの上ない。
結界が壊れた先。黄金の城へ向かう
アリアの宣言通り確かに何の
通常の迷宮とは違い中は城らしく内部の
ウィンドウを表示し地図を確認。ここから行く道は確か
「三叉路になってる階段の右手。右の道がミスリルのある通路だ」
「あとは地道に歩くだけですね。はぁ、なんだか疲れました」
「戦ってないにせよ魔物に遠巻きから見られるのは堪えるよねー☆
時間もそんなに経ってないし小休止しましょうか☆」
≪フッフッフ。そう思って今日はようやく…私弁当持ってきたんだから!
ありがたく食べなさいよねマスター!!!≫
「お、用意が良いなキャシー。助かるよありがとう。長丁場を想定してたから俺もおにぎり持ってきてたけど足りそうにないから助かるよ」
レベル300との戦い。指輪があるとはいえ避けられないものという
回復アイテムに蘇生アイテムなど揃えて疲弊と消耗も考え食料も持ってきていたが考えが甘かったようで戦わずして用意したおにぎりでは足りそうにない。
それは
城内だから安全という訳ではなくここにも魔物の気配はする
結界は張らない。指輪の効力を妨げる恐れがあるからだ。代わりに指輪という防壁が俺達を守ってくれている
キャシーが用意してくれたのは様々な具を用意したサンドイッチだ
どこから取り出したのかサンドイッチボックス一杯に敷き詰められた量は多い
「こんなに食い切れるかな…」
《なーに勘違いしてんのよ。佳夕ちゃんとアリアの分も含めてよ!》
「いや知ってるよ。三人で食べきれるかわかんないほどだったからさ」
≪く…この鈍感男…!≫
(雄一さんはホントアレですよねー…)
(簡単にものにできると思わない事ニャー☆)
女子同士何らかのシンパシーというかテレパシーみたいなので通じているようだ
なにそのスキル欲しい。
とはいえ、逆におにぎりの追加が出来ないほどの量を用意してもらったので
おにぎりは後で食うか。それか
「ヴィクター君やガルム君は食べれないかな?フェアリーって食事出来ないんだっけ?」
≪当たり前でしょ…彼らは機械よ。食事は必要としない。要らぬお世話よ
・・・そういえばさ、何で君付けなのあの二人に?≫
「え?いや何となく。話したことないからわかんないけど友達になりたいからさ」
≪…やっぱ話させないようにして正解だったわね…≫
「え?何か言ったキャシー?」
≪別に何でもないわよ!!フン!!!さっさと食べちゃいなさいよ!!!≫
「???」
何故キャシーが急に不機嫌になったのか俺にはとんと分からなかったが
キャシーが作ったサンドイッチは美味しく妙なアレンジをしていないことにほっとした。
ちなみにサンドイッチはアリアが結構な量を平らげて完食という運びになる
思わぬ健啖家で驚いたがいわく改造人間で消耗が激しいとアリアの弁。
普段ははしたないと思い小食だったと気づき俺はアリアにもっと食べさせようと決意し
休憩を終えて探索の準備に取り掛かった
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