第50話 練気《アギト》
メモを渡され霊脈にある移動用ポータルで霊脈同士を繋いでいる
予想外なことに豪奢な豪邸住まいだと思っていたが
こじんまりとした平屋の家で庶民的だ。これが収入(時給で)50億のトップハンターの住まいだとは信じられなかった
インターホンを鳴らし数秒、玄関から弓野さんが迎えに来てくれる
「来たな。ようこそ。オレのマイホームへ」
「え、ええ」
「ま、だろーな。世界一稼いでるハンターがこんな一軒家に住んでるなんてありえねーって気持ちはわかるけど
俺にはこっちが性に合うんだ。豪邸は趣味じゃなくてな」
まあ、弓野さんらしい判断だと思う。妙に納得できる
だがそれはそれとして俺を連れてきた理由。秘密のスキルを教えてくれると書いてあったが
「あの、新しいスキルってなんですかね?」
「気になるだろー?まあ中で話そうぜ。ここじゃ見せれないからよー」
といい俺を家へ迎え入れてくれた
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外装通り一般家庭の様相で言ってみれば一世紀前の家に近い
古めかしく懐かしさを感じるそれは妙に落ち着きを感じリラックスさせる
「こっちだ。着いてきなよ」
弓野さんの案内で追従し地下室に続く階段がありそこへ弓野さんは降りていく
着いていった先。そこには…。いの一番俺は呟いてしまう
「…ダンジョン?」
「やっぱ気付いたか。ようこそ。オレのダンジョンへ」
工藤さんが閉じ込めた場所と異なるが同じ雰囲気を感じ取り
ステータスウィンドウも表示できる。入った先は取り立てて特徴のある部屋ではないがその向こうには…コロシアムめいた闘技場が広がっている
ダンジョンは人の欲望に反映する。そして次元の位相が違う為にいくら地下面積がなくとも関係はない。ダンジョンという空間は欲望がある限り無限に広がる土地である
そして目に移った闘技場を見て愉快そうに弓野さんは微笑する。そしてこれからやることがわかってきた
「このコロッセオみたいなとこで、教えてくれるんですね?」
「そうだぜ。リアルじゃレベル適応しねーしスキルも使えねー。ならダンジョンじゃなきゃ力も使えねえ。ここはそう言ったことにうってつけだ
もちろん
・・・だが誤解すんなよ。あのカビ女がおかしいだけでちゃんとリスクは避けてっからな。あんときの事。すまんかった!俺ももっと気を配れてりゃあんなことにはなかったのによ…!」
そう言って頭を下げる弓野さんに申し訳ない気持ちになる
どうやら工藤さんのダンジョンでの事を気にしているらしい
別に俺は気にしていないしそれは弓野さんのせいではない
どちらにせよいい経験にはなったし感謝こそすれ恨む理由はない
恨むというのなら怪しげなキノコ食わせたくらいだが…
「いえ、弓野さんが謝る事ないですよ!俺も貴重な体験できましたし
強く成れたので結果オーライです」
「そ、そうか…かなり肝座ってんなお前…。とにかく。非礼は詫びる。ケジメは大事だしな」
「いや、だから気にしてませんって。頭を上げてください…」
「やっぱいい奴だなオマエ。あいつみてーに酷なことはしないから安心してくれ
俺が教えるのは最近判明したスキル。『
アイツと違ってみんなに了承とっているから問題ないぜ」
「アギト?」
「覚醒って意味だ。ステータスとは違う別項目のステータスにAP《アビリティポイント》を割り振ってスキルを解禁し自分の好きなスキルを作れる能力だ」
「それってすごいじゃないですか。新たな隠しスキル。どうして発表しないんです?」
スキルの独占の理由はわかる。そのスキルが一般ハンターに知れ渡ればパワーバランスを壊しかねない。それは言うまでもない事なのだが俺は一応尋ねておきたかった
「そりゃお前、つえーから…ってぇ訳じゃねえんだけどな」
「え?」
予想外の答えに間の抜けたような声を上げてしまう
続けて弓野さんは言葉を続ける
「まーわかるぜ。秘匿レベルのスキルなら強いのが当然だ
っつー言いたいけどな。実はこれ最近判明した隠しステータスで
まだ勝手がわからないのが実情だ」
「最近…?もうステータスについては調べつくしたはずでは…?」
「まったくだよなー。実は隠してるステータス項目がありましたー!なんて
ふざけてるよ。まあゲームめいた設計だし仕方ないよなぁ」
いやでも、魔王倒せとか言っていた女神さまが情報開示しないってのはおかしな気がする。
打倒対象の討滅率を上げるために有利に進めるのが得策だ。
そんな隠し事要素は必要ない。後でキャシーに詰問…いや、今回の事バレるしやめておこう…
「とにかく!
「それって一介のハンターに教えてはいけないことでは…?」
「謙遜すんなよー。オレもカビ女もお前の実力わかってるしお前はプロレベルの資質持ってるよ。自信持てって」
「は、はぁ…」
それは別に俺だけの力ではない。パーティー全員で臨んだ実績だ。
俺だけ持ち上げられても困るしかない
俺自身。
佳夕さんやアリアの場合れっきとした本人の実力だ。
俺の事情を知らない弓野さんは頭に疑問符が浮かべる
「…?まあ続けるぜ?まず第一に。こいつのAP《アビリティ・ポイント》はレベルに応じて一定数が決まる」
「え!?それって理不尽じゃないですか!!レベルって…」
「そう、レベルは人ごとの定まっている。これがまだ公にできない理由のひとつ
レベルが低いハンターの救済措置かと思えば逆に強い奴をさらに強くしちまう
反発は避けられねえぜ。そして!お前のレベルは!?」
「ご…53です」
若干気圧されて。弓野さんの生き生きとしたテンションに少し気後れしてしまい声が上擦る
「50の壁を突破してるし今後の成長に期待できる。だから教えられるんだ!」
「といっても60行くという保証はないですよ…?」
「為せば成る成さねばならぬ何事も。無理を通して道理にすんだよ
俺の見立てじゃ2位のやつに引けを取らねえとみた。80は行くぜ絶対。俺が保証してやる」
「お、大げさすぎですよそれは」
というか…2位の人。名前で呼ばれてないんだ。経歴も来歴も名前も不明の人でアリア同様、
「まーだから、将来有望な雄一にはこの
・・・
許可が下りた理由は雄一を使って実験しようってハラなんだ。
上様は大切なトップランカー様に
ゲスな話だぜ。気を悪くする話をしてすまねえな。
隠し事ってのはどーも苦手なんだ。
もちろん危険な目には遭わせねえって約束するしよ!!」
それはトップランカーではなく政府の意向だろう。気に入らないように弓野さんも顔をしかめて言う。別に気にしてはいない。貴重なプロハンターにもしものことがあれば過大な損失だろう。
「いえ、別に気にしてないですよ。俺としても新スキルを得る機会を得たわけですし」
下卑たことを言えば俺にも得があるというもの。
「良かった、なら知っている範囲の
別枠に設けられたAP用ステータスにポイントを割り振ってその伸ばしたステータスごとにスキルが解禁し組み合わせ自分だけのスキルを生み出すというもの
ゲームで言うところのアビリティボード。ある条件を満たせば解禁するスキルボードでプロハンターたちは系統樹に喩えているらしい
根から幹へ、幹から枝へ。花を咲かせて結実に至る。その果てが
そして一通りの説明の後。弓野さんが分かりやすいように自身の
ありがたい。実際に目にし体感したほうがコツをつかみやすい
「じゃ、見せるぜ。攻撃力と俊敏にステ振りした結果造り出した俺の
レッキングクルーと当てはめたそれは芸術を破壊する意味を持つ
名前から察するに破壊を司る、主に美麗を持つに欠陥をもたらすスポイルスキル
両手
その指を拳として握り両手をカチ合い金属音に似た衝突音が響いた
・・・だがそれ以上はない。確かに千紫万紅たる十種の色のエネルギーを合わせたのは派手だったがいったいどういう用途のものか皆目理解できなかった
「これはな。10の
徒手空拳を条件に
確かに。属性という色で構築された魔法は絵画と表現できるだろう
それを様々な色で塗りたくり台無しにする。芸術への冒涜。まさしくレッキングクルーだ
説明を聞いた限り魔法を砕くためのスキルであり魔法に対し何か思うところがあるのだろうか…?
「あの、何でそのスキルにしたのか聞いていいですか?」
「良いぜ。つっても見たまんま魔法をぶっ潰すスキルで面白みに欠けたか?」
「あ、いえ」
「実は、まだ特性があってな。実はこの
つまり俺は十種の魔法を指に納めているわけだ」
すさまじいことを聞いてしまった。確かに魔法を相殺するには魔法しかないが
色のついた
確かに弓野さんらしいオールラウンダーなスキルである
そして魔法は組み合わせることが可能だ。それが十種類両手に収まっている
魔法使いではない弓野さんが攻撃と魔法を補うために作ったスキル。感服した
だが解せないことが一つ。名称だ。
「でもなんでレッキングクルーなんて物騒な名前にしてんです?
もっと華やかな名前でもいいと思うんですが」
腑に落ちないことを質問しまるで理解できない様に弓野さんは首を傾げた後
「んなの名前の通りだろーが?すかした魔法ぶっ壊して―んだよオレは」
複雑なスキルであるが弓野さん自身はとてつもなく単純であった
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