第49話 インポッシブル(内緒ごと)2
「なるほどねえ…。でも心配させたくないからって内緒ごとは良くないぞ雄一君☆」
「ごもっともで…」
ことのいきさつをアリアに伝える。
キャシーや花道さんには聞かれたくない話だ
アリアなら守ってくれるだろう。
二人で話があると言って別室にてアリアにその旨を伝えた。
プロハンターランキング3位工藤シオンに試され総括部隊『リジェクト』への参入
そしてアリアは入れないという事を
「だよねー。素性も知れない奴に背中任せたくないよねー
どこかの誰かさんと違って☆」
「俺も不思議に思うよ。結構自分ってよくわからないもんだな。俺って結構警戒心強い方だと思ってたんだけど…」
「あれれ。信頼されてなかったの私?」
「いや、戦いの中でどういう人物かわかったし信頼はしているよ」
「さっすがダーリン☆」
「誰がダーリンじゃ」
などというコントを交えながらアリアにも佳夕さんやキャシーに知られないよう画策をお願いしている
隠し事はなしとは言ったが…プロハンターと共に俺だけ駆り出されるのは不公平だとは思う。現にレベルも50を超え佳夕さんと大きく開きが出来てしまった。
「だから頼むよアリア。キャシーは情報網が広いから俺だけじゃごまかしが効かないし」
「まっかせなさい。弟君の頼みならおねーさん女神様相手でも頑張っちゃう☆」
「結局俺の立ち位置どっちなの…!?」
「どちらにしろ秘密にしといたほうがいいかもねー。佳夕ちゃんその辺すごく気にしそうで暴走しちゃうそうだし」
「だよなぁ。やっぱ俺だけはおかしいよなぁ」
「? 何か勘違いしてない雄一君?」
「え?だってそうだろ?みんな俺より強く統率も取れている
どうせならみんなでチームを組んだ方が合理的だと思うんだけど…」
「いやちがーう。雄一君の事心配しちゃうからおねーさん佳夕ちゃんに伝えたくないのよ。危険な場所に駆り出されるの自覚してるでしょ?」
う。そうだ。俺はみんなと離れ行動する。それ自体の問題ではなく
俺があのカージテッドのような相手と戦う事を佳夕さんは頑として反対するだろう
そこを失念していた。自身の軽視。確かに無意識にそんなことしてしまう自分がいるのは確かだ。俺の命も大事。それは忘れちゃいけない。
「そうだな。とりあえず時折一人の時間が欲しいって伝えてキャシーに
「でもキャシーちゃんに内緒にする理由って何かな?
キャシーちゃんなら結構さっぱりと受け入れるだろうし」
「そうだろうけど…。それじゃ佳夕さんだけ省いている気がして嫌なんだ」
本当は俺一人秘密を抱えていればよかったがそううまくはいかない
察しのいいアリアにこうして看破されているしキャシーもいれば確実に内密に出来るだろうけど…それは仲間として出来ない
「そうだね。でも一人で抱え込むのはだめだぞ☆おねーさんが愚痴でも聞いてメンタルケアしちゃうから」
「ありがとう。本当に助かるよアリア
俺は必ず無事に帰ってくるから」
「よしよし。でも忘れないで。佳夕ちゃんだけじゃない
私もキャシーちゃんも貴方を心配しているってことをね☆」
「わかってるさ。だから信じてるんだろ?」
「またまたー。このタラシが~☆」
「?」
ちょくちょく聞くアリアのタラシ発言だが俺にはよくわからなかった
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――――――――――
「むむむ…よく聞こえませんね…」
≪確かにねぇ…。流石アリアってとこよね。
レベル適応がリアルで反映している分スキルも多少使えるみたいね…≫
「何ですかそのトンデモ能力は…」
二人っきりで話しているドアの傍ら。佳夕とキャシーは雄一とアリアの話を耳朶をそばだてて
防音も
社会の目をかいくぐりフェアリーとして擬態し身が割れることなくハッキングし
ダンジョンの運営権を取得した猛者であるキャシーでさえもだ。
現在は運営権による情報の撹乱を用いて位置情報をまばらにし特定されないという芸当は神の力を用いていない辺りその実力は推して知るべきだろう。
その社会の最新鋭を知るキャシーでさえアリアの結界は突破できない
それほどにハンターのスキルは強力なのだ。
本領を発揮できていないとはいえ女神の一端たる力は皮肉にも女神自身の障壁と化しているのはなんの
≪はぁ、私の力舐めてたわ…。
いえ、元々の素養を具象化したモノだから私の力っていうのは正確ではないわね…≫
「アリアさん…すごいです。女神さまも手をこまねいてます…」
≪違うわよ。女神パワー使えば一瞬だから。でも消耗激しいから使わないだけだから…!≫
そしてドアに近づく気配を感じ取り
そそくさと二人はさっきまで寛いでいた定位置に身を戻す
ごく自然な振る舞いで優雅にお茶を楽しんでいるという風を装いながら
「平和ですねー」≪ねー。いい天気ねー≫という
あらかじめ用意していたセリフを
盗み聞きがばれないよう
だが無駄である。あっちは隠密のプロ。
相手の手の内を常に把握しているのが暗殺者の
「佳夕ちゃん?キャシーちゃん?盗み聞きはよくないぞ☆」
「ひっ!すみません…」
≪何でバレたのよ…≫
部屋から出たアリアが二人を肩を組みように掴み
耳元でそっとそうささやいて
逆にアリアには筒抜けであることを知り固く誓う
彼女の前での盗み聞きはやめよう…と。
三人仲良く肩を組んで(キャシーはフェアリー状態で小さく肘前で包むようにしている)何か楽し気に話している
隠し事をしているのは気が引けるが正直危険に巻き込みたくないのが本音だ
俺だけがスカウトされたのもあるがカージテッドの相手は正直尋常ではなかった
それが複数体。同じかそれ以上の相手をするのだ。
佳夕さんもキャシーもアリアも危険にさらしてしまった。
それは
そして…もう一つ解せないこともある。リジェクトにおけるハンター同士の
ハンターで肝要なのはチームワークなのは言うまでもない。
それをもって力となしパーティーの力があってこそハンターは続けられるというもの。中にはソロをする人もいる。
俺はかつてそうだったがどれだけ無謀か身をもって知ったので出来ないが信頼や阿吽の呼吸でパーティーは成立している。
それを
面識のない相手に背中を預けられるか。
そもそも知らない相手と連携も何もない
そしてソロで活動しているプロハンター。
トップ5がそのチームに組み分けられる
どう考えても打算的じゃない。確かに強い者の集まりではあるが
統率が取れていなければ
その是非を問いたださなければ俺も納得は出来ない
仲良く話している仲間に水を差さないようそっと俺は家を出る
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閑話 豆知識
ハンターがレベルやステータスを持てるのはダンジョンだけ
理由は『人間の体内にある魔素と大気中の魔素の同調』という条件が必要なため
もし現実世界に魔素が流れていればハンターもリアルで超人の力を発揮できる
異世界は魔素の濃度が濃く性質が違う為レベルが初期値に戻ってしまう弊害がある
――――――――――――――――――――――
「確かに。もっともだよなあ」
待ち合わせ。
面識のある弓野さんへの連絡をギルドに頼み人気のないカフェで俺たちは会合していた。俺はオレンジジュースをストローで吸いながらその話を持ち掛けた。子供舌なのでコーヒーは苦手である。ブラック飲める人凄い。そして対面する弓野さんは
コーヒーを片手に愚痴をこぼすように彼女はため息を吐きながら言う。ブラック頼んでおいて砂糖三つ入れている
「オレも疑問に思ったぜ。知らねー奴らと連携なんて一朝一夕でどうにかなるもんじゃねえ。プロハンターの各自警戒態勢ってんならわかるんだが上位級のハンター
「なら」
「でも笠井曰く『
確かに…力を持った者たちが一堂に会し合力するというのならそれほどの安心感はない
しかも1位の笠井さんの影響が大きいのだろう。
もし彼がダンジョン以外で力を発揮できるなら世界を敵に回しても完全勝利を掴めるほどの天賦の逸材。
1位と2位は規格外と言われる所以だ。だがカージテッドのような奴らを相手なら話は別だ
そんな未知の敵相手に有象無象の統制も何もない。プロハンターがなれ合い
つまるところ倒すことが重要ではないのだ。あくまで世間を安心させるダメージコントロール。…重役も大変だなと俺は思った
笠井さん自体特別な出自ではない、ただの一般人からハンターになりいつの間にか最強の名をほしいままにしている。
窮屈な立場に追いやられているのだ。
そして確かに重責で身動きが取れない政府の
だが彼を
…キツイな。最強のハンターがいても実態を知れば誰しも落胆する事実だろう
「どうにかして少数精鋭で各々情報共有して敵の分析に入る方がいいはずなんですがね…」
「だよなー。彼を知り己を知れば百戦危うからず。まずは敵を知ることが大事だ
でもな。ダンジョン閉鎖はかなり痛手なんだよ。今は汚染区域指定されて近頃未知の敵の出現を発表するけどよ。オレ達の世界って愚かにもダンジョン頼りだよな?
旧弊を捨てるってどこの西洋かぶれの明治時代だよ。今それが世界維持の妨げになり
ダンジョンが減るごとにハンターの不満や危機感が出てくる。一時的な措置とはいえムカつくが笠井の意見はそれを抑制する働きをみせている。とりあえず総力を結集すれば早急に片が付くと思わせなきゃ不満が爆発しちまうんだよ」
「でもそれは…後でしっぺ返しを食らうのでは…?」
「そこはまあ、戦争でよくある大本営放送みたいに情報をガセるんだよ
情報操作はピカイチだからな今の時代。でもまあバランスを保つためのコラテラルダメージ。多少のリスクは覚悟の上らしいぜ」
思った以上に切迫した事態。御代は弓野さんが奢るらしく伝票を手に取る
その時同時に弓野さんは伝票とは別の紙を俺に渡した
「誰にも言うんじゃねーぞ。トップシークレットだからな」
そう言って俺に釘を刺す。
彼女は会計を済まし俺もお言葉に甘えて互いに別れて帰る
その道中渡された紙の文字を確認。そこには
『トップランカーだけの隠しスキル。覚えたきゃオレの家に来い』
これが俺が新たに習得するスキル『
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