第17話 尻尾をフリフリ

 ゴブオはにやにや笑って、ジャネットを見つめている。幸せ幸せ、その気持ちが全身から吹き出し、身震いする。彼女が身を仰け反らせた時の表情が瞳の裏にこぼりついて離れない。半分白目剥いて、怒り眉は困り眉、舌はだらり垂れて、普段の威厳はどこにもなし。


 尻尾を七、八度ふりふりしてから、ジャネットは平静を取り戻し凄い速さで上体を起こした。

「い、今のなんだ貴様。俺の体に何をした」

 と言って、ゴブオの両手と顔を交代に見た。

「流石に驚いたご様子ですね。これは僕の能力なんです」

 得意になって両掌を彼女に向ける。

「うっ」

 ジャネットは今しがたの感触が思い出されるのが嫌なのでゴブオの掌から視線を逸らし、ベッドシーツを見た。シーツは全体がしわくちゃになっている。


「つい先ほどまでは、しわ一つなかったのですが、ジャネットさんが余りに可愛らしく乱れるので、もうぐちゃぐちゃですね」

 ゴブオは彼女がシーツに視線を向けているのに気づいて、如何にも意地悪になる。

「は? 可愛いだと」

 あっという間にジャネット怒りの表情、おっぱいぶるり揺らして、ゴブオの首根っこ掴み、彼を押し倒す。「貴様、調子に乗るんじゃない。俺は格好良いんだ、軍人なんだ」


 「可愛い」は彼女に禁句であったかと、苦しみながらゴブオは思う。それにしたって彼女、どうやってショウたちの一行に加わったのであろうか。軍人の癖して、謎である。


「ごべんなさい」

 息も絶え絶えゴブオは謝る、すでに視界は薄くなり、失神しそう。

「ふんっ」

 ジャネットの大きな手が、ゴブオの首から離れる。

「かひーっ、かひーっ」

 急いで肺に空気を入れる。


 ジャネットを犬にするには、時間を費やす必要がある。


「もう満足しただろう、俺はこの部屋から出る」

 ジャネットはお尻をずりずり動かして、ベッドから降りようとした。

「まだ出れません。僕は満足してません」

「はあ!? あんなにしておいて……殺されたいのか」


 ゴブオは首を大きく横に振る。「恐らくですが、あなた様のお尻を揉めば満足出来ると考えられます」

「殺されたいのかと、俺は尋ねたんだ」

「殺されたくありません。お尻が揉みたいのです」


 ゴブオのお尻に鞭の痕が、三発分増えた。


 確か犬や猫のお尻には神経が集っていて、彼らにとっては敏感な部分らしい。つまり刺激されたら気持ちいいのである。このことはジャネットに首根っこ掴まれて意識遠のきつつある時に記憶から引き出された。


「絶対に、あの扉が開いたら貴様を殺してやる。これが結局夢だとしても、目覚めたら真先に貴様を殺しに行く」

 ジャネットはゴブオを戦慄させながら、ショート・パンツを脱ぎ捨てた。


 ブラジャーは着けていなかったけれども、ショート・パンツの下には真っ白なTバック。「T」の横線部分にはひらひらあって、女性らしい。軍服姿と下着姿との印象の乖離に面食らう。垣間見える女らしさに、抱き着きたい衝動に駆られる。


 ゴブオがうつ伏せに寝転がるようジャネットに言うと、彼女は渋々従った。顔のみ横向いて、他の正面は全てベッドとごっつんこしている。

 そうだ! 弱点解析がまだであった。発動、なになに。「犬扱いされること」と文字列が表示された。犬扱いだと? てことは彼女、嗜虐するのではなく、される方が潜在的には好みだってことか!?。もしかするとそんな自分の無意識に気付いていて、普段は露出のない服を着て、きつい態度振りまいているのかもしれない。自分を騙すために。思い返せばなんだかんだ悪態つきながらも僕の言うことに従ってくれる。ジャネットさんが真に嗜虐で構成されていたら、もっともっと抵抗するのが自然である。

 「可愛い」は禁句だが、もう少し強気に接した方がよいな。だって、この部屋を出たら僕、殺されるらしいから。どうにか堕として、犬にしないと。


「失礼いたします」

 ゴブオはジャネットのつやつやする太腿に乗っかった。温かな丸太のようにしっかりした太腿である。けれども男のそれよりはやはりしなやかである。

 引き締まった腰から、お尻は丸みに満ちた線を描いている。腰と尻の境目とふくらみの境界は下着に隠され、残念。

「くだらない」

 とジャネットは吐き捨てた。

 その言葉を了解の返事と受け取り、ゴブオはお尻をむずり掴む。掴むと乳房のように肉と皮がひとところに集まる。しかし弾力は乳房以上で、揉みごたえがある。初めは”感度倍増”のスキルは発動させない。常に発動させていたら、あるいはその感覚に慣れてしまうかもしれない。


 掌を大きく動かし、お尻のむぎむにした感触を味わう。体を弄られているジャネットは、特に反応を示さない。


 うーん、確か映像で見た犬は、お尻馬鹿みたいに振ってたんだけどなあ。思わしい反応が得られない。諦めるな、強気だ強気。爪を立てて、お尻の上部に食い込ませた。瞬間、声はないけれども、お尻が左右に心持揺れて、尻尾がぴん、彼女の耳のように立った。なるほど、ここが弱いらしい。


 ”感度倍増”を発動させ、もう一度食い込ませる。

「ひいっ」

 とジャネットは驚き悲鳴上げて、お尻揺らして尻尾をフリフリ。ふさふさの柔かな毛が、ゴブオの手の甲に触れる。














 











 

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